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なまけたろうと登山ブログ

【奥多摩】大岳山~日の出山 大展望と狼信仰を辿る冬の低山

12月最後の山旅は、毎年どこに行こうか悩んでしまいます。澄んだ空気と晴れ続きが多いことから富士山や展望の良い山が候補に挙がるので、そこに自分の好きなテーマをひとさじ加えて一年を締めくくりましょう。

ぼくが今回訪ねたのは、奥多摩にある大岳山(おおだけさん)。隣にある御岳山(みたけさん)と並んで関東ハイカーに人気の山ですが、この山域に息づくオオカミの足跡を辿る人も少なくありません。

奥多摩が魅せる浪漫の旅、大岳・御岳オオカミトレイル。

 

どうも、スラ男です。

 

今回は、奥多摩山域の盟主・大岳山に表参道ルートから登り、御岳山、日の出山と縦走してきた時のお話です。

いずれの山も素晴らしい展望を有しており、中でも大岳山山頂からの展望は筆舌に尽くしがたいものがあります。目の前に富士山、立派で品のある山頂標、そして見渡す限りの山脈風景。

御岳山から観光気分で訪ねるにはちょっと骨が折れますが、しっかりと登山装備と体力・知識を整えていけば、極上の山上風景が待っているのです。

 

■大岳山~日の出山(2022年12月29日)

 

東京名瀑と里宮のオオカミを訪ねて

今年2度目の武蔵五日市駅からおはようございます。この時期、朝イチのバスを待っている時間が一番寒くて辛いですよね…!

通常、大岳山に向かうのであれば青梅線からが便利ですが、今回は武蔵五日市側からアプローチとなります。

始発のバスで向かったのは、檜原村にある「ちとせ屋」さん。こちらの店舗裏から続く遊歩道の先には、東京が誇る名瀑「払沢の滝(ほっさわのたき)」があるので立ち寄りましょう。

ちなみにちとせ屋さんはおからドーナツが有名ですが、未だぼくは出会えておらず。

滝までは片道10分程度ですが、道中にも忠助淵など思わず吸い込まれそうなスポットが。冬枯れの時期でも水は澄んでおりとてもきれいです。

遊歩道の最深部に、まるでダンジョンのボスとでもいうかのような迫力で払沢の滝がお出迎えしてくれました。

季節柄、水量こそ少ないですが、その落差と滝壺付近まで近づいて見られるため圧倒されます。もっとドバドバ流れる滝が見たい!というなら、やはり夏あたりでしょうか。

そうそう、もっと寒い時期になれば、冬の観光イベントである「払沢の滝冬まつり」が始まります。以前訪ねた時は、見事結氷率98%という驚愕の風景を堪能することができました。

早朝、激寒なためほとんど人もおらず…たろうも並べて記念撮影を。完全に不審者です。

名瀑観賞のあとは、そのまま歩いて大岳山の登山口まで向かいますよ。実はその道中にも滝などの見どころがあるので見落としなく。

そういう君はひのじゃがくん。檜原村はじゃがいもが名産なので、ゆるキャラもじゃがいもモチーフ。待って、ポテくまくんといい、じゃがいもキャラ可愛いの多くない?

ところで顔の部分に何か貼り換えたあとが見えますが…?

しばらく歩いていくと、歩道の奥に茅倉の滝(かやくらのたき)が見えました。岩盤の奥で細々と流れ落ちる静の滝で、ダイナミックな払沢の滝とはまた違った趣がありますね。

ここ檜原村は、名のある滝が10前後もある滝めぐりスポットなので、滝がお好きな方はは全箇所めぐってみるのも面白いかもしれません。

さて、ぼくの本命はこちら、大嶽神社です。同名の神社が大岳山の山頂直下にありますが、あちらが奥宮でここは里宮にあたります。

大嶽神社は大国主命オオクニヌシノミコト)をはじめとした様々な祭神をお祀りしています。その中のひとり、日本武尊ヤマトタケルノミコト)とオオカミにまつわるエピソードがこの地域に残っています。

東征の折、山の中で窮地に陥ったヤマトタケルを導いたとされるのがオオカミで、後にそのオオカミは山の守護神となります。オオカミは災いを払う魔除けの象徴とされ、やがて狼信仰(おいぬ様信仰)として広く伝わっていきました。

今でもこの里宮には狼信仰が息づいており、神社の奥へ進んでみると、小さなお社の前に小さなオオカミ像が鎮座しています。また、魔除け札であるオオカミの護符も発行しており、最近では2021年に中央大学との共同で狼信仰をプッシュするプロジェクトもありました。

※護符と御朱印は購入したものです。

その成果として、可愛いおいぬ様がデザインされた御朱印帳や御朱印ができあがりました。形こそ変われど、若い世代にも狼信仰が語り継がれていくのはとても嬉しく思います。

motion-gallery.net

 

急登のち展望、大岳山表参道ルート

お目当ての狼信仰に触れた後は、大岳山の表参道ルートを目指していくだけです!大嶽神社横の車道脇から登山道が続いているので、いざ。ここまでの歩きで準備運動はばっちりです!

 

ハァ…ハァ……ッ!?(錯乱)

 

じ、地味目な坂道が延々と続く系の登山道、いや、修験道?思ったよりも急登でキツい…!しかし難所という難所はないので、ペースを整えながら地味に登っていきましょう。

大嶽神社の表参道ですから、道中にある丁目石が信仰の道というものを感じさせます。全部数えていきたいところですが、何個か見逃していたり。

途中、好展望のスポットがあったのでここで小休止。たまりませんね。

頭だけですが、富士山も見えるじゃないですか!奥多摩は意外と富士山の展望スポットが多いですよね。

さらに登り詰めていくと、落葉した木々が目立ってきました。ということは、新緑の時季に登ればこの辺りは明るい森になるんでしょうねぇ。

大嶽神社のある白倉集落から登り始めて一時間強、馬頭刈尾根(まずかりおね)に合流しました。大岳山は左ですが、反対の馬頭刈山方面も、富士見台やつづら岩を経て瀬音の湯に下山という魅力満載のコースです。

これまでが急登続きだったので、馬頭刈尾根合流地点からの足取りの軽さたるや。軽快に進んでいくと、最高のロケーションを誇るベンチがありました。

目の前にこの絶景!これまでの疲れが吹き飛ぶ最高の景色です。先ほど反対側に富士見台の案内がありましたが、ここも間違いなく富士見台といえますね。いや、富士見ベンチか。(笑)

なんて気持ちがいいトレイル。ネットで馬頭刈尾根を歩いているレポートをよく見かけますが、今納得しました。

間もなく山頂というところで、いやらしい分岐が出てきました。大岳山へ繋がるルートが多いので、山頂直下は分岐の数もなかなか多いです。

上のところは左側に登るのが正解で、右へ行くと大岳山荘方面へ遠回りしてしまうので注意です。

分岐からひと登りすると、ついに大岳山山頂へ辿り着きました。うわ凄い景色!富士山を目の前にして丹沢山地三ツ峠山、秀麗富嶽十二景の山々も!

そしてお隣にあるピークは御前山、その奥に三頭山と大菩薩嶺、右端には雲取山も。関東の名だたる山々が一望できます。

以前訪れた時は濃霧で真っ白だったんだよなぁ。感慨深いです。今度は富士山も含めたパーフェクトビューでたろうたちもこの表情。どうだ!

…大満足なようなので、ぼくも休憩したら次の目的地へ。

 

大岳山と御岳山のオオカミをめぐる

大岳山山頂からお次は御岳山へ。この縦走路はメジャールートではありますが、道中は鎖場や露岩がもりもりのアクティブな道です。

今年の夏ごろでしたか、大岳山~御岳山で無念の遭難死亡事故が起きております。目的地が御岳山だからといって観光気分に浸らないよう気を引き締めていきましょう。

山頂から10分弱で大嶽神社の奥宮が見えてきました。狼信仰に興味があってもなくても、この奥宮の狛犬は一見の価値ありですよ。

 

ワン!

 

という声が聴こえてきそうな大胆にデフォルメされた一対の像は、これでもオオカミを象った立派な狛狼なのです。あまりの丸っこさにファンも少なくないとか…(笑)

そういえば、戸倉三山のひとつ臼杵山(うすきやま)のオオカミも激しくデフォルメされていました。同じ方の作品なのでしょうか?

社殿には、ぼくが里宮で入手したオオカミの護符が丁寧に貼られていました。これぞ狼信仰、今もしっかりとここに生きているのです!

神社からさらに下っていくと、大岳山荘が時を止めたように佇んでいます。付近にあるヘリポート側へ回ってみると、何やら工事しているようでしたが…?

すでに廃業されているはずですが、もしや再開!?…とうまくはいかないようで、詳細は青梅・西多摩エリアの情報サイト「おめ通」の記事に書かれていました。この先どうなるのでしょうか。

大岳山荘から先の道で鎖場が出てきます。この辺りになると御岳山側から来るハイカーさんと道を譲り譲られという場面も出てきました。

表参道は人っ子ひとりいなかったのに…

芥場峠の分岐を御岳山方面へ歩いていくと、ロックガーデンの最奥部、綾広の滝の出ました。武蔵御嶽神社の禊にも使われる神聖な場所ですので、厳かに厳かに…

夏には苔の絨毯と樹々の緑が美しいロックガーデンも、さすがに冬は寒々しい様相です。そのぶん岩の厳めしさが際立ちますが。

天を衝く天狗岩の分岐をいつもは左に行くのですが、久しぶりに七代の滝へ行きたくなりました。難点としては取りつきのエグい急下降階段と、宿坊へ上がる際の急上昇階段ですかね。今日一番の難所。

空間としては小規模な印象の七代の滝ですが、その全貌は落差50m、大小8段にもなる非常に大規模な滝なのです。

とても素敵なスポットですが、この後の階段地獄が疲れた体にクリティカルヒットオデノカラダハボドボドダ!

か、階段をなんとかクリアした先には、朱色の社殿が美しい武蔵御嶽神社が待っていました。先の大嶽神社と同じく、狼信仰を現代に伝えるオオカミが棲む神社のひとつです。

境内のそこかしこに、オオカミを思わせる鋭い眼光の狛犬がいます。これらを狛狼といっていいのかは不明ですが、この奥にイメージ通りのオオカミという風貌の像がいるのでお見逃しなく。

神社の最奥、大口真神社(おおくちのまがみしゃ)の狛狼です。神話でヤマトタケルを助けたオオカミがこの地の守護神として祀られ、こうして現代でもその威光を放ち続けているというわけです。

あまりにもこわいかおなので、ぼくは素早さががくっと下がりました…▼

本殿を囲う柵の中にはスマートな狛狼もいたり。護符に描かれているオオカミとしては、こちらの一対が最もイメージに近いかも。

そうだ、境内の少し隠れた場所に古い狛狼がポツンと置かれているとか。見比べてみると、どのオオカミ像も個性があって魅入ってしまいますねえ。

しかし、やはり一番目を惹くのは大嶽神社奥宮の丸っとしたオオカミでしょう。今回のオオカミ探訪はこの辺で、ラストは最高の展望を求めてもうひと山!

 

狼信仰が広がった武蔵の展望台、日の出山へ

武蔵御嶽神社から乗り物利用で楽々下山!もありですが、今回はもう少し歩きたかったのと下山後温泉を決めたかったのでとなりの日の出山(ひのでやま)まで。

となれば、御岳山の参道にあるお蕎麦の名店「紅葉屋」さんでくるみそば~♪

 

くる…ぉ~ずど???

 

スラ男、年末なんだ諦めろ。

幸いにも、向かいのお店は営業していたのでこちらへ。山菜蕎麦が沁みる…おつゆも美味しい…!

御岳山の宿坊が連なる集落を抜けて、日の出山方面へ歩いていきます。日の出山までの歩きやすい平坦な道がありがてえ~。

武蔵御嶽神社から30分弱で本日最後のピーク、日の出山に到着しました。実は登山を始めた頃以来の登頂となるので、感慨もひとしお。

それで何がすごいってこの日の出山、振り返るとたまらない絶景が…

 

おおおおああああ!!!(感涙)

 

初めて見た時も感動しましたけど、何年か経って色んな山に登ってきた今でも感動しています。この山からオオカミの護符が武蔵一円に広がっていったんだなぁ、なんてことを思ってしまうと、心にグッとくるものがあるじゃないですか。

大満足の山頂を後に、いよいよ温泉へ向けて下山開始です!な、なんだこの階段はぁぁぁ!!?

なんと良い雰囲気の登山道でしょうか。気になる右奥のとんがりピークは、後で調べたら麻生山だそうです。あちら側に下りるまたは登るのも面白そうだなぁ。

おっと!こんなところにもヤマトタケルの伝説が!当時の関東平野はどんな景色だったのでしょうか、ヤマトタケルには何が見えていたのでしょうか?

ハイキングコースの入口には可愛いブリキアートが並んでいました。このカエルがめちゃ可愛い!

ここから10分弱歩いた先につるつる温泉があります。初めてなので楽しみ!

名前がインパクトある「生涯青春の湯 つるつる温泉」。温泉も楽しみなのですが、それ以上に期待していたのが名物の機関車バス!これに乗って駅までかえれば最後までテンションアゲで最高じゃないですかー!←フラグ

 

…ふつうのバスだ。

 

ちょうど運休だか修理だかで機関車バスには会えずじまいなうえに、後で知ったのですが、翌年2023年3月末で老朽化のため営業終了してしまったそうです。

機関車バス、一度でも乗りたかった…!!と嘆いていたら、5月に日の出町からバスを活用できる方へ譲渡する発表があったようです。これはまたどこかで出会えるチャンスということでしょうか!期待大です。

 

大岳山~日の出山の山旅、終わりに

ということで、大岳山から御岳山を経て日の出山までの年末ロングコースも無事に歩き通せました。ロングといっても、20km未満ですが。

個性豊かなオオカミ像、山頂からの大展望、どこを切り取っても大大大満足のフルコースでした。やはり奥多摩は最高か?最高です。

 

次はどの山に行こうかな。