早春の花を追いかけながら3月も半ばを過ぎてくると、いよいよ気になるのが桜(ソメイヨシノ)の開花。今年はどこの低山で花見をしようかなと調べていると、ミツマタの開花情報が目に入りました。
同じタイミングで見られる桜とミツマタですが、山梨県都留市(つるし)のミツマタは開花が少し早め。これをチャンスとし、以前から気になっていた都留アルプスを目指します。
ミツマタ群生と親しみあふれるご当地アルプス。
どうも、スラ男です。
今回は、山梨県都留市のご当地アルプス、都留アルプスを歩いてきた時のお話です。
都留アルプスは都留市に連なる低山帯で、比較的最近に整備されたコースです。本コースの魅力は、山の谷間に箱庭のように形成された都留市内の展望と、終盤にあるミツマタ群生地。
雨の翌日ではありますが、ミツマタは満開のタイミング。いざ!
■都留アルプス(2023年3月19日)
駅から歩ける新たなご当地アルプス
雨上がりの日曜日。JR中央線大月駅から富士急行線に乗り換えて目的地を目指します。
富士急行線といえば派手なラッピング電車。今日はリサとガスパールみたい。なごみます。
都留市駅で初下車。特徴的な駅舎が非常に目立ちますが、早朝7時では周囲にハイカーは見当たらず。
本日歩く都留アルプスですが、町なかの随所に道標が設置されており大変親切。それもそのはず、地元の登山愛好会「クレイン山の会」が市と協力し3年かけて整備されたそうで、完成したのは平成29年とつい最近。ありがたいですねえ。
それにしても、都留=鶴(クレイン)とはおしゃれです。
都留市駅の近くには「より道の湯」という新しめの温泉施設がありました。2018年にできたようで、これ逆コースにすれば汗流して帰れるじゃないですか。
登山口となる発電所を目指す途中、ゴウゴウと音を立てて流れる水路がありました。都留市は富士山の雪解け水があちこちから湧き出ているそうで、これは下山後の散策も楽しめそうです。
発電所からは舗装された急坂を登ることになるのですが、ここの斜度が容赦ありません。
坂を登り詰めると、発電所の上部には大きな水溜が。市内の水路を利用した水力発電で、その歴史は長く、かつて都留市で盛んだった絹織物産業で培われた水路システムがルーツだそう。
実は都留アルプスはこの先も水路と一緒に歩いていくことになるので、これはひとつのキーワードになりそうですね。
発電所からハイキングコースへ入る反対側、わずか50mほど先に富士山展望台があるのでお忘れなく。ガサゴソと木々をかき分けていくと、残念!富士山は雲でちょっとしか見えず。
それにしても何といいますか…グッとくる眺めですねえ。
歴史あり、見どころありの縦走路を進む
ハイキングコースに戻り、フラットな登山道を歩いていきます。この朝一番の静かな道がたまらなく好き。
ゴツゴツした岩が見え始めてきたら最初のピークは間近。
都留アルプスの先鋒、蟻山(ありやま)に到着です。特徴的な山名ですが由来は判らず。しかし、戦国時代には見張り台だったと推測されており、狼煙台跡(烽火台跡とも)の案内がありました。
蟻山からは一度大きく下り、再びフラットな登山道へ。最初に言ってしまいますと、都留アルプスはこれの繰り返しです。(笑)
咲き始めのサンシュユがわずかに彩る白木山。山頂というより通り道ですが。
山梨県で多々見られるこの黒い階段。恐らくハイカーよりも送電線巡視作業員のためのものだと思いますが、けっこうありがたいんですよね。たまに滑りますが。
3番目のピークは長安寺山。先の白木山と酷似した風景ですが、ループしているわけではありません。
長安寺山の先にもパノラマ展望台があるので、お立ち寄りください。山座同定ができる案内板もありますよ。
こうして俯瞰して見ると、山と山の間に形成された町並みが見事ですね。その町の間を湧水が駆け巡り、山と川と町が一体になっている。そういうのを感じとれるのが低山の面白さではないでしょうか。
展望台から大きく下ると、トンネル?のような建造物が見えました。これは鍛冶屋坂水路橋というそうで、発電所に水を送るための水路なんですって。
案内板によると、「地元では通称“ピーヤ”と呼ばれて…」
え、ピーヤ???
ピーヤ、小島よs…ではなく、桟橋を英語でそういうようです。ピーヤの名前に全部持っていかれそうになりますが、一番下に黄色で重要なことが書かれていました。
「鳴り龍」というと、日光のアレですよね。どれやってみましょう。
…おおお~~~!!
たろうの表情がそのすごさを物語っていますねえ。
未来に向けた千本桜と幻想的なミツマタ群生地
ピーヤから先へ進んでいくと、天神山なるピークが。フラットすぎて山頂感は皆無です。
また水路橋のある峠を越えて行くと、学校林の案内板が見えました。小学校の催しで歩かれているのでしょうか?
立派な東屋も!どうやら小学校の自然観察などに利用されているようです。ちょっと早いけど、ここで休憩。お昼用に持ってきたカップ麺ですが、今食べちゃおう。
東屋から進んでいくと大きな伐採地に出ました。しかし、何やら植樹されているようです。
調べてみると、ここは都留市が新たな桜名所にしようと2014年から進めてきた千本桜植栽地だそうです。2021年に植樹完了したそうなので、これから未来に向けてどんな風景になるのか楽しみですね。いつか「千本桜とミツマタの都留アルプス」なんてキャッチコピーになるのでしょうか!
またまた道中に突然道標が現れました。都留アルプス最高峰の山名はなんと都留アルプス山!ド直球のネーミングが逆に好き。
山頂っぽさですか?全くないです。(笑)
その後しばらく地味な樹林帯が続きますが、ミツマタ群生の道標とともに雰囲気ががらりと変わりました。
山の斜面の一部分だけ黄色い海のような景色が広がります。お目当てのミツマタ群生地、満開のタイミングで出会えました。圧巻です。
ここで近くにいたハイカーさんとお互いに低山好きということで意気投合し、素敵な景色を分かち合いました。
しばらくこの場所に佇んでいたいところですが、縦走はまだまだ途中。いや、都留アルプス楽しいですねえ!大好きになっちゃいました。
ミツマタ群生地を名残惜しく見上げながら、元の登山道に合流して先へ。
いよいよ都留アルプスも終盤となりますが、ここから先は今までとは一転してやや荒れたコースとなります。
都留アルプスはコース難易度が三段階に設定されており、ミツマタ群生地より先は一番行動時間が長い「がっつりコース」。あくまで健脚者向けということなので、ミツマタの花見目的でしたら楽山球場方面へ下りてしまうのもひとつ。
道標の示す尾崎山方面は破線ルートなうえに寄り道となるので、今回は見送ります。地元小学生作と思われるかわいい手作り道標に応援され、最後のピークに向かいます。
こ、これは装備アイテム!?
そういえば、ミツマタ群生地で出会った低山ハイカーさんが「この辺りはシカの角が落ちてるのをよく見るよ」と話していましたが、まさか最速でフラグ回収するとは思いませんでした。(笑)
ピークに達する前にがっつり下り、広場に出てしまいました。ここもクレイン山の会が整備した森のようで、都留ハイカーの憩いの場だそうです。
都留アルプスを歩いてみて、地元によく親しまれていることが非常によくわかります。素敵な山の会ですねえ。
住吉神社が鎮座する本日最後のピーク、古城山へ辿り着きました。雰囲気ある山名ですが、その昔、烽火台である古渡城(こわたじょう)があったそうです。
現れるたびにドキドキしてしまう電気柵をくぐり…ゴール!
おっと!下山地点にきれいな梅林がありました。調べてみると古渡の梅という梅林のようですが、梅まつりや一般公開はされていないみたいです。しかし、遠巻きに見ても見事です。
いや都留アルプス、ひとつのひとつの山は500~600mほどの低山ですが、つなげて非常に高い満足度と登り応えのある山々でした。
山から水の町へ、湧水群を訪ねて
さて、古渡地区へ下山した後は、帰りの最寄り駅は東桂駅なのですが…
冒頭で都留アルプスを歩く際のキーワードとして「水路」を挙げました。実はここ都留市は、「十日市場・夏狩湧水群」として平成の名水百選に名を連ねます。
せっかくなので、町なかを流れる水路に着目しながら散策してみたいと思います。
古渡地区にある桂川と鹿留側の分岐点に、さっそく湧水スポットである「おなん淵」が見えました。
滝壺周りの岩の形状が独特で、その奇観は川の下流にある渓谷に顕著に現れています。この地を訪ねた徳富蘇峰(とくとみそほう)がその景観の見事さを称え「蒼竜峡(そうりゅうきょう)」と名付けたそうです。
※蒼竜峡はこの先の団地と橋の上から見ることができますが、その全景を捉えることはできませんでした。
東桂駅を見送り、その先にある湧水スポットを目指します。え、太郎と次郎…?それなんて魅力的な滝なんですか!!?
この辺りの道はかつての富士講の道だったようです。考えてみれば先ほどの蒼竜峡も富士山の溶岩の影響を受けてできた場所。富士山とは切っても切れぬ縁があるのですね。
この身禄堂にある双体道祖神がかわいいとのことなので、ちょっとのぞいてみましょう。
あら~~(*´ω`*)
ぎゅっと熱く抱擁する道祖神になごみ、お目当ての滝へ。
整備された遊歩道の奥に、太郎・次郎滝のご登場です。確か都留市の民話で、この滝壺に落ちて亡くなった太郎さんと次郎さん由来だったと思います。
もしぼくのたろうが誤って落ちてしまったら……!!
夏狩地区の散策を続けましょう。今度は長慶寺へやってきました。立派なお寺ですが、ここの見どころである湧水スポットはなんといっても梅花藻(バイカモ)のある池!
花期は夏なので、今はただただ緑の絨毯のようですが…
え?さっきの滝も水量がイマイチ…?わかってます。わかってるんです。きっと今年の雪が少ないせいなんです!
菜の花畑に癒やされながら次の目的地、十日市場地区へ。それにしても町なかにきれいな湧水があるっていいなぁ。
水源山の山号が素敵なこちらは永寿院。きれいな池と水汲み場がありますが、飲料には適していません。冷たくて気持ち良いですけどね。
さあ!湧水めぐりのフィナーレとしてやってきたのは、こちら田原の滝(たはらのたき)。かの松尾芭蕉が訪れ一句読んだゆかりの地です。
溶岩と柱状節理が作り出した独特な景観に桂川が流れ込み、複数の滝となる様は圧巻の巻!これだけ盛ればその見応えも素晴らしいこと間違いなし!!!
頼む水量ォォーーーー!!!
少ねえええええ!!!(滝涙)
いや…ネットの写真で見たらすごいんですよ本当!
…雪がね!雪が少ないのが悪い!また季節を変えて都留アルプス来なよってことでしょう!ガハハ!
……と、自分に言い聞かせて十日市場駅へ。ソルティー、そんな煽るような顔でぼくを見ないでおくれよ。大丈夫、楽しい山旅でしたよ!ミツマタ最高ーー!!
都留アルプスの山旅、終わりに
以前、SNS上でミツマタがいい感じという情報を聞いてからずっと訪ねてみたかった都留アルプス。想像以上に雰囲気の良いご当地アルプスでした。
今回は麓の湧水めぐりは水量に振られましたが、また次回ド迫力の田原の滝を求めて再訪したいところです。
次はどの山に行こうかな。