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なまけたろうと登山ブログ

【静岡】沼津アルプス 桜と海、春らんまんの低山縦走

低山に足繁く通うようになって痛感しているのが、「低山は思ったよりお手軽じゃない」ということ。標高の低さ、町との近さから低山=ラクと思いがちですが、そうじゃない場合が多くて。

“沼津アルプス”といえば低山ハイカーにとってがっつり系の縦走路として知られます。単なるご当地アルプスだなんてとんでもない!その標高差を聞いたら驚きますよ。

桜満開の沼津アルプス、全山を歩く。

 

どうも、スラ男です。

 

今回は、静岡県沼津市に横たわる低山帯、沼津アルプスを縦走してきた時のお話です。

沼津アルプスはいつか歩きたいと思っていたところで、眺望のきく冬か桜の春かで迷っていました。ある日、好きな山ラジオを聞いていると、沼津アルプスの奥の方にある山の桜がとても美しいという話を聞いたので、ようやく決心がつきました。

桜と海と富士山を期待して、春らんまんの沼津へ。

 

■沼津アルプス(2023年4月1日)

 

山頂は桃源郷、地元愛あふれる日守山

麗らかな陽気に誘われてやってきたのは、静岡県伊豆の国市にある原木駅

一般的に沼津アルプスを歩く際は三島駅から沼津方面へ向かうのですが、今回は伊豆箱根鉄道駿豆線(通称:いずっぱこ)に乗り換えました。

長閑な風景に突如現れたド派手なラッピング電車は、沼津を舞台にしたアニメ『ラブライブ!サンシャイン‼』仕様。いわゆる聖地なのか。

沼津ではなくこちら側に来たのは、沼津アルプスを“奥”から登るから。

実はこの先の日守山から大平山までの区間「奥沼津アルプス(沼津奥アルプスとも)」と呼ばれ、地元ボランティアの方々が整備されているバリエーションルート。地図では破線扱いですので、気を引き締めなければ!

狩野川を渡る手前からは富士山の雄姿がドドンと。静岡側からは宝永山の火口が見事ですよね。川を境に、伊豆の国市から函南町へ移ります。

県道129号線沿いに奥沼津アルプス登山口がありました。今日は長丁場ですからね、しっかりと準備運動をしていざ。

どことなく箱根の山を感じさせるササに覆われた道。それもそのはず、函南町函南かんなみ)は、函根(はこね=箱根)の南側という意味なんですって。

最初のピーク、茶臼山に出ました。かわいい山頂標とベンチがあり、麓の風景が開けています。

茶臼山からは暗く細い登山道をがっつり下って、がっつり登り返すことになります。ロープの出番早くなーい?

急登に加えて暖かな気温。額ににじんだ汗をぬぐいながら見上げると、きれいな満開の桜が出迎えてくれました。

桜が咲き乱れる広場の先に、展望台と山頂標が見えます。日守山(ひもりやま)、またの名を大嵐山(おおぞれやま)です。

なぜ優しい印象を受ける日守という言葉と災害の名前が同居するのかは不明ですが、山頂一帯が温かい春に包まれているのは間違いありません。

見事な桜と、その下でランチを食べてねといわんばかりのナイスベンチ。散歩によく来るという地元の方々の憩いの場所だということがよくわかります。

「こないだまではもっと咲いてたんだよ」というおじいちゃん。いえいえ十分すぎる絶景ですよ。すぐに好きになっちゃいました。

山頂につくとまるで桃源郷みたい、そんな風に言われて気になっていた日守山。満開の桜、富士山、そして温かな地元の方々の笑顔があふれる素晴らしい山でした。

 

天然のアスレチックエリア、奥沼津アルプス

行程が行程なので足早に次へ行きたいところですが、日守山が居心地良すぎて踏ん切りがつきません。

景色をニヤニヤ眺めていると、奥の方からビブスを来た方々がやってきました。「今日はどこまでいくの?」というので、沼津へと伝えると「この先の柵の間から行けるよ!長いから気をつけてね!」と笑顔で見送ってくれました。

もしかして、地元ボランティアの方々だったのでしょうか?というか、あの稜線を歩くんだよな…え、待って標高差エグくない?

日守山から奥沼津アルプスへ進んでいくと、石切り場のような場所が見えました。調べたら、伊豆石を切り出す採石場跡みたいです。

道中には大きなさざれ石もありましたし、石の山でもあるのでしょうか。見上げれば桜と若葉が登山道を明るく照らします。

木の根元には「なんでも帖」と書かれたセーブポイントのようなものが。中身は空けてからのお楽しみです。(笑)

犬の横顔のような巨石が目印の金山のコル。この辺りからだんだんと道の様相がワイルドさを増してきたように思えます。

開けた場所から振り返ると、これまで自分が歩いてきた稜線が望めます。左端の日守山があんなに小さい。

ハシゴ発見!本当だ!!というリアクションがぴったりなユニーク看板。でもこの長いハシゴは非常にスリリング。

ハシゴを下りた先も岩場が続き、もはやどこが登山道だか。

ロープが垂らされた岩も登場。奥沼津終盤に立ちはだかるボス的な立ち位置でしょうか。

岩場の先にある展望台からは、これから先の沼津アルプスと富士山の眺め。感動的ですが、自分の足で全部歩かねばならぬ。

急坂を登りきると、大平山に辿り着きました。いやぁ奥沼津アルプス、その名の通り奥深い縦走路でした。

 

海風に舞う桜、花盛りの沼津アルプスへ

さて、大平山(おおひらやま)からはいよいよ沼津アルプスのエリアとなります。山頂は広々とした休憩適地。シャガの花も咲いていました。

賑やかな山頂標に括り付けられたこのかわいい天狗人形。なんと別の山でも見たという方が!

シャガが足元を飾りつける春の登山道って良いですよね。しかし、多比口峠から先はウバメガシの岩尾根となり景色がガラリと変わります。

岩尾根にびっしりと立ち並ぶウバメガシの純林。これぞ“沼ア”のハイライト。圧巻です。

細かなアップダウンを刻みながら多比峠へ。次のピークまでまた急坂…

山頂に辿り着くと、この景色にまたまた疲れが吹き飛びました。海風に桜が舞う、こっちのほうがぼくにとってのハイライトかも。

鷲頭山(わしずやま)は沼津アルプスの最高峰ですが、その標高は392mとやや控えめ。にも関わらず、沼津アルプスの標高差は1000m以上もあるのだから、冒頭の通りがっつり系登山というわけです。

鷲頭山の桜が満開なので、時間をたっぷり使いたいところ。特に緑色の桜として知られる御衣黄(ぎょいこう)はお見逃しなく!

桜に御衣黄にちょっぴりの海も。ベンチもあるのでここでの休憩を強くおすすめします。こんな低山が地元にあるっていいなぁ。

日守山に続き、鷲頭山でもまた満開の桜に出会えました。春に来て良かった~!

 

カラフルな手作り道標を愛でる、沼津アルプス後半戦

鷲頭山で花見を楽しむのもほどほどに、現在地は本日の行程のちょうど半分くらい。まだまだ先は長いのです。

急登でせっかく得た標高をもったいないくらい落として小鷲頭山へ。なぜフラットに歩かせてくれないんだい?

小鷲頭山の山頂からは沼津港方面の展望が。

ちなみに、鷲頭山から小鷲頭山、そしてその先が沼ア最大の標高差となりますのでご注意を。本コースでは下りだからある程度いいものの、これが登りだったらと思うとゾッとします。

急下降した先に待っていたのは、あまりにも異質な存在感の大きな岩窟。

「中将さん」と呼ばれるこの岩窟には、源平合戦の折に敗走した平家中将が逃げ隠れていましたが、最後にはここで自害したという悲話が残っています。

さらに下っていくと、大きなぼたもち岩が目印の志下峠。先の中将岩と同様に凝灰角礫岩というツブツブした表面が特徴的です。

その先には板状節理というマグマが冷え固まった露頭もありました!沼津アルプス、ジオ的要素も満載か?

志下峠から先は、駿河湾を望む明るく開放的なトレイルが続きます。先ほどまでの薄暗い雰囲気との落差よ。(笑)

振り返ると、そびえ立つ鷲頭山に思わず笑ってしまいました。信じられないくらいの激下りだったんですね…

あ、これ逆コースだと絶望するやつだ。

トレイルの途中にぽつんとある志下山では、気持ちよさそうに休憩をしている方々が。海を望むなら間違いなくここですね。今なら満開の桜もサービス。

みのじろうも気持ち良さそう。

しかし気持ち良いトレイルも束の間、志下坂峠から先は再び急登です。そろそろ足に蓄積した疲労が牙をむいてきました。

唯一の救いは、たびたび現れる沼アの手作り道標がかわいいこと。劣化の激しい道標もありますが、手書き文字の温かみに癒やされます。がんばろ!

登り詰めると平坦な広場にほっとひと息。しおみち広場というそうで、桜の花びらがついた案内板を読むとその経緯が書いてありました。この先もたくさんの案内板が設置してあり、読むついでに休憩を。

「沼津港グルメ街」、非常に魅力的な案内…!!だが登る。

感覚的には一番キツかったのが、この徳倉山への登りでした。山頂標の隣からは富士山が望めるそうですが今日は見えず。大丈夫、疲労でそれどころじゃありません。

徳倉山からも派手な登り返しが。界王拳4倍だぁー!!

横山峠を経て、その先の横山に辿り着きました。この区間の写真があまりないということは、ぼくが急登に苦戦していたということを物語っています。やっぱ辛えわ。

そしてまた下る。200m未満の低山で得られる標高差か?これが。

しゃ、車道に下りてきたー!!ここ八重坂峠まで来れば残す山はあとひとつのみ。

自転車に乗った爽やかな外国人に「香貫山はあっちだぜ(英語)」と教えてもらい、いざラストスパート!

 

桃源郷再び、桜咲き乱れる香貫山

車道の右手側に現れた香貫山登山口へ入ると、すぐに舗装された坂道に繋がりました。

このタイミングでの舗装路歩きはけっこう辛いものがありますね。道中の桜がなかったら、ここで干からびていたかもしれない。(迫真)

手書き道標にさらなる手書きが。沼ア界隈にも色々あるのでしょうか。

いよいよ山道に入り、階段を登っていくと…うおおお!!

新緑を背景に、満開のソメイヨシノや咲き始めの八重桜が辺りを彩ります。

やっぱり桜は良いですよね。さっきまで疲労でヘトヘトだったことをすっかり忘れています。

なんて素敵な雰囲気の場所なんでしょうか。香貫山公園として一帯が整備されているので、お花見している方がたくさん。登山装備の方のほうが少ないくらい。

公園内には立派な展望台があるので、人が集まるのはそちら。貫山(かぬきやま)の山頂はひっそりとしたところにありました。カラフルな手作り道標もこれで見納めです。

さあやってきましたよ展望台。愛鷹山の背後にいるはずの富士山は見えず。

代わりに、歩いてきた沼津アルプスの山並みが見事。“奥”までしっかり目に焼きつけて、今日一日を振り返ります。疲れたぁぁぁ~~~。

展望台を後にして、また登山道へ戻ります。急ぎめで下山していましたが、道端のシャガ群生に思わず足を止めました。こりゃすごい。

本日最後の桜名所、香貫山公園の北端にある香陵台(こうりょうだい)に辿り着きました。シンボリックな五重塔の手前には桜の海!見事、いいえ美事というほかありません。

1日の山旅の中でお腹いっぱいに桜を堪能しましたが、やっぱり良いですねぇ桜は。特に香貫山一帯はすさまじかった。行ってないエリアもあるので、ここは再訪ですね。

するするっと登山口まで下山して、ここからバスで沼津駅に向かうでもいいのですが…

駅前の町中華とかを探しながらぶらぶら歩くのもいいかなぁなんて。沼津港に立ち寄るのも魅力的ですが。

振り返れば香貫山公園の桜がよく分かります。感慨深いものがありますね!

さて、肝心の下山メシですが…これがどの店もアイドルタイム間近もしくは休憩中でした!(笑)

最後の手段、駅のホームの立ち食い蕎麦でいいや!と向かったらそれすら定休日!セオリー通り沼津港へ行ったほうが良かったか。

お腹を空かせながら鈍行列車で帰途につきました。

 

沼津アルプスの山旅、終わりに

自分の中で期待に期待を込めて臨んだ沼津アルプスでしたが、最高の山旅となりました。道中の手作り道標も良かったし、刺激的なアップダウンの縦走路、岩を見るのも楽しかった。

一等良かったのはやはり桜です。日守山の桃源郷に始まり、鷲頭山の御衣黄、志下山の桜と海、そして香貫山一帯に咲き乱れる桜。

しかし全山を歩き倒すのはなかなか骨が折れますので、コースを縮めたり目的を変えたりしてまた訪ねたいところです。

 

次はどの山に行こうかな。