標高の高い山が全くないにもかかわらず、多くの個性的な低い山を有する“低山王国”千葉県。中でも最も特異といえるのは、鋸南町のシンボルである鋸山(のこぎりやま)ではないでしょうか?
ギザギザに連なる岩稜帯が鋸歯に見える鋸山は、その山名が表す通り石の山です。そんな鋸山が醸し出す圧倒的な非日常感が、子どもたちの冒険心をくすぐります。
ようこそ千葉低山、石のワンダーランドへ。
どうも、スラ男です。
今回は、千葉県鋸南町と富津市にまたがる鋸山へ親子ハイキングしてきた時のお話です。
鋸山といえば、ロープウェーや中腹までの観光道路が通る観光色の強い山です。一方で、麓からの登山道は自然豊かで、歴史を感じさせる多くの風景に出会えます。
親子ハイキングの際は乗り物利用が便利です。しかし、鋸山の石切りの歴史に触れるコースを歩けば、非日常感にアドベンチャー感も足したワンデイハイクが楽しめます。
■鋸山(2022年1月4日) 目次
海を渡って、いざ南房総へ!
南房総にある山へアクセスするには、都心からではマイカーでアクアライン利用が便利です。公共交通機関で行くとなるとJR線を乗り継いでいくのですが、これが結構遠いうえに時間もかかります。
そこで今回は、久里浜から東京湾フェリーを利用するルートにしました。山に向かうのに海を渡る、いきなりのアトラクションにワクワクするのは子どもだけではありません。
フェリーに乗って、鋸山の麓にある浜金谷(はまかなや)までは約40分の船旅が楽しめます。初めて船に乗る子どもたち。落ち着いてなんかいられません。
ひとつ、船旅をするうえでの心配事は船酔いでした。ぼく自身はたいてい何に乗っても酔うことはないのですが、この子たちはどうだろう。
「ふじさんー!」とはしゃぐ子どもたち。船の甲板からは富士山がはっきりと望めました。外にいるからか、酔うこともなく終始楽しんでくれました。よかった。
浜金谷港に到着するころには、もっと乗っていたい…と言いたげでした。
そういえば、御船印(ごせんいん)なるものがあり驚きました。社寺でいただける御朱印の船バージョンでしょうか。面白そうなプロジェクトです。
浜金谷港はお土産屋さんや食事処が充実しており、ここに滞在するとお金がいくらあっても足りません(笑)。見波亭のバウムクーヘンに後ろ髪を引かれつつ、鋸山を目指します。お土産は帰りに買おうね!
鋸山の石の歴史に触れる、車力道コース
道路には随所に道標が設置されているので安心です。ぼくたちはこの先の分岐を車力道コースへ進みます。
途中にはヒカリモの発生地がありました。ヒカリモは暗所で光を反射させ、黄金色に輝く藻類だそうで、ぜひその姿を拝みたいところ。しかし、残念ながら黄金色に輝くのは3月~5月頃とのこと。
車力道(しゃりきみち)へ入っていくと、石の線路のような登山道が面白い。
実はこれ、その昔、鋸山から切り出された「房州石(ぼうしゅういし)」を運び出すのに使われた道なのだそう。石を荷車に積み、それを運んでいた人を車力と呼びました。なんと車力を務めたのは主に女性だったというから驚きです。
いつも歩いている登山道とは趣の異なる道に、スラ坊もきょろきょろ。
そういえば、登山用のリュックを新調しました。セールで安くなっていたので、憧れのマムートに…おいスラ坊ずるいぞぼくを差し置いて!(笑)
登山道を進んでいくと、徐々に石切りの山としての姿が顕著に現れてきました。
壁面に現れている縞模様は、石を切り出した跡だそう。そんな岩壁の間を歩いていく様子は、まるで巨大迷路のよう。娘スラりんと比較するとその様子がよくわかります。
観光パンフレットなどでしばしば目にするこちらは、切り通しと呼ばれる岩壁を切り抜いて作った道。鋸山にはこの切り通しが随所で見られ、大規模な石切り作業が行われていたことがわかります。
房州石は東京や横浜の主要施設、整備などに利用され、日本の近代化に貢献しました。明治から大正にかけての最盛期には、年間約56万本もの房州石が産出されていたそうです。
しかし、栃木県の銘石「大谷石(おおやいし)」の台頭やコンクリートの普及によって、次第にその姿を消していきました。1985年を最後に採石作業も終了となりましたが、今ではその採石場跡と独特な景観が貴重な観光資源となっています。
山中に点在する案内板には「ネイチャーミュージアム鋸山」としてスポットの詳細が書かれています。歴史を学び実物を見ることで、鋸山は今もこうして訪れた人をあっと驚かせてくれます。
絶壁、絶景、絶叫の地獄のぞき
岩壁の上部にツノのような部分が見えます。実はあの場所に立つことができ、そこはあまりの高度感と恐怖から「地獄のぞき」と呼ばれていますが、人気のスポットです。
「高いなー!」なんてのん気に思っていましたが、ここは観光コースではなく登山道なので、あそこまで自力で登らなくてはなりません。ワイルドな石の階段、柵のついた狭い道など、頑張れ子どもたち!
途中にある展望台からは、通称「ラピュタの壁」が眼前に迫ります。ここも石切り場跡なわけですが、一体どうやって…??人間の凄さにただただ驚かされます。
また、富士山と海も望めました。これは爽快です!ここまでの石の迷路も雰囲気最高でしたが、解放感も大事ですよね。なんだかゴールしたみたい(笑)。
登山道を登り詰めたところで管理所が見えてきました。ここから先は山腹にある日本寺(にほんじ)の境内となるため、拝観料が必要になります。
今までの登山ムードから一変、観光客で賑わう高尾山のような風景になりました。
広場の岩壁には高さ30mにもなる百尺観音がドドンと現れます。観音様のいる広場から切り通しを進み、ぐるりと左手側に回れば地獄のぞきへ続く地獄階段のお出ましです。
Q:鋸山で一番キツい場所はどこか?
A:ここです。
階段を登り切った先には、ご褒美といわんばかりの絶景が目の前に。高所恐怖症の方は要注意ですが、ここからの眺めは鋸山が300m程度の低山だということを忘れるような景色です。
ぼくたちも地獄のぞきへの列に並び、その高度を体感…!ひょええ~~~!!
ここまでゆっくりペースだったため、だいぶ日が傾いてきました。子どもたちの疲労もあるし、帰りはロープウェーで楽しちゃいます。ただ、鋸山ロープウェーまでは少し歩くのでもうひと頑張り。
ちなみに、ロープウェー乗り場には山頂標があるため、ここを山頂と思ってしまいそうですが、実は山頂は別のところ。
海を眺めながらしばしの空中散歩。このロープウェーから仰ぎ見る鋸山は、確かにギザギザの山容をしています。見た目も中身も濃すぎるよ鋸山。最高でした。
さて、鋸山アドベンチャーの締めくくりにぜひとも立ち寄りたいのが温泉です。ここまで頑張ってきた子どもたちも温泉を楽しみにしていたので、こればかりは外せません。
ロープウェー駐車場から歩いて10分ほどの「かぢや旅館」さんへ。ここは日帰り温泉もやっているので、さっそく~……
休業日だ……
しまった~~!!年末年始だった~~!!でも大丈夫、もう一軒候補があります。それがこちら「金谷ステーション」さん!ここでも日帰り入浴が可能ですが、うわああああ営業時間がもうわずかぁぁぁ!!????
「大丈夫ですよ、ゆっくりしてってください」と、お店の方のご厚意に涙が出ました。温泉も沁みる気持ち良さ。ありがとうございました。
ハイキング、温泉と堪能した後は、浜金谷港へ戻りお土産屋さんへ。こちらにあるバウムクーヘンのお店「見波亭」がぼくのお目当てです。
鋸山に登ったならぜひ買いたいこちらのバウムクーヘンですが、魅力的な商品はこれだけではありません。
ジャジャン!これがぼくイチ押しのきりかぶクーヘンです!ハードタイプ好きなぼくにクリティカルヒットするバウムで、黒蜜きな粉との相性もこれまた…
え……完売……???
スラ坊「最初に買っておけばよかったね!(´・ω・)」
帰りもフェリーに乗ってプカプカと。海に沈む夕陽はあんなにも眩しいのに、バウムクーヘンを買えずに沈むぼくときたら。次回こそ必ず買うぞ、きりかぶクーヘン!
久里浜に着いたら、後はバス、電車と乗り継いで帰るだけ。毎回思うのですが、公共交通利用の親子ハイキングの辛いところですよね。
ここからが本当の戦いだ!!
鋸山の親子ハイキング、終わりに
手軽に観光ハイキングを楽しめる鋸山ですが、フェリーを使った船旅、房州石の歴史などを調べてフィールドワークなど、低山ながら楽しみ方はとても山深い。
また、今回は省きましたが、鋸山は下山後の海の幸も非常に魅力的です。海鮮丼、フライも良いな…山と海を一気に楽しむを素敵な山旅もおすすめです。
次はどの山に行こうかな。