7月に歩いた夏の谷川岳。やっぱり高山からの絶景はたまらないもので、多くの人を虜にするのが肌で実感できます。それに続く夏の山旅第2弾として、北アルプスは唐松岳(からまつだけ)を訪ねました。
唐松岳は単体で登っても素晴らしい山ですが、隣合う五竜岳(ごりゅうだけ)とセットで紹介されることもしばしば。あるガイドブックでこの二座を“美女と野獣”と表現していましたが、見事というほかありません。
気品あふれる緑と白の道、その先は絶景。
どうも、スラ男です。
今回は、北アルプス・後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)にある唐松岳を歩いた時のお話です。
初めてのアルプス登山にもおすすめとされる唐松岳は、どのシーンを切り取っても魅力にあふれています。麓から仰ぎ見た雄大さ、中腹には白馬三山を映す八方池、高山植物、そして山頂付近から望む天上の絶景。
そんな山のフルコースを、乗り物利用で登れるというのだから驚きです。ぼく自身、2度目となる北アルプス。最高に楽しみです。
■唐松岳(2021年9月12日) 目次
美しい朝焼け、八方尾根の夜明け
いつもの友人とともに、深夜に東京を発ち信州を目指します。同じ北アルプスといえど、目的地は去年訪れた燕岳(つばくろだけ)よりもさらに北。移動だけでもかなり大変です。
加えて気になるのが、駐車場の混雑。唐松岳登山口となる黒菱駐車場は約200台駐車可能ですが、去年の燕岳では満車によるハプニングがありました。それも踏まえ早めに出たのが功を奏したのか、まずは無事に駐車場に辿り着けました。
準備を整え、今にも降ってきそうな星空を眺めながら、今回もナイトハイクで登山スタート!
遠方登山の場合は、日帰りの時間も考慮すると早朝から行動開始が望ましいですが、体力的なリスクも看過できません。そのことを念頭に置きつつ、できれば展望台から朝日を拝みたいというプラン。
運転前なのでリフトは使わず、山頂まで直登になるのですが…これがキツい!駐車場からリフト中継地点の黒菱平までのえげつない急登!!
谷川岳の西黒尾根よりキツかった…
ここで根こそぎ体力を奪われましたが、その後はゆったりと回復しながら歩きます。暗闇の湿原、八方池、特徴的なケルンなど序盤の見どころたちを見送って、さらに上へ。
樹林帯を黙々と歩いていると、日の出の瞬間が迫ってきました。八方池での日の出を見送ったからには、まさか樹林帯でというわけにはいきません。少しペースアップして樹林帯を抜けました。するとガレ場に出て、奥にある丸山ケルンまではあともう少し!
5時40分。丸山ケルンから感動の日の出を迎えました。すごすぎる…!
この絶景を目の当たりにした相棒もこの表情。
大変貴重なたろうのびっくり顔です。
丸山ケルンからぐるり見渡すと、白馬岳(しろうまだけ)方面が朝日に染まっていました。朝日を受けてより一層際立つ山の陰影、見る者を圧倒する存在感、そのどれからも百名山の風格を感じ取れます。
反対側には、唐松岳から縦走路が続く五竜岳。そしてその後ろにチラッと見えるのが、ネコミミの鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)。個々の存在感がすごすぎる、さすが北アルプス…!
しばし絶景を堪能していると、丸山ケルンで休憩していた方が「下にライチョウいるよ!」と教えてくれました。「え!燕岳に続き、また!?」と自分のビギナーズラックに震えあがります。(笑)ただ、カメラの望遠ないから遠いのよね…
白馬のモルゲンロートが見たかったという友人の望みも叶い、おまけにライチョウも見られるなんて。ここまで頑張った甲斐がありました。休憩後、山頂を目指してのんびり進みましょう。
北アルプスの名峰を見渡す爽快な稜線
丸山ケルンからしばらくは、北アルプスの壮大な景色を眺めながらの登山です。そびえる山々に目を奪われがちですが、足元を注視するとチングルマが群生していました。
ポピュラーな高山植物であるチングルマですが、ぼくは見るのは初めて。夏の早い時期では白く可愛らしい花が咲きます。え?じゃあこの状態は何?
花が散った後は、写真のような綿毛のついた種子の状態になります。なるほど。アルプスビギナーのぼくには全てが新鮮。ちなみに、調べるとチングルマは草ではなく「木」なんだそうで。えぇ?ますます何なのチングルマ…?
開放的な稜線をよいペースで歩いていきます。疲れたら足を止めて、北アルプスの山々を眺めれば最高です。むしろもっと見たかったり。
特に釘付けになったのは、この五竜岳。まさに“山岳”というようなゴツゴツした見た目で、格好いい!三角形の端正な山も良いですが、こういう無骨な山のほうが好きかも。
朝焼けに染まっていた白馬岳もずいぶん印象が変わりました。ディティールがはっきりしたことでわかる険しさ、今のぼくではちょっと歩けそうにありませんね…
山荘手前の分岐では、尾根ルートと迂回ルートに分かれます。迂回ルートは崩落のために通行禁止で、今回は険しい登りとなる尾根ルートから。
ここは道幅も狭く、午後過ぎになると渋滞が発生するポイントのよう。
振り返ると、まるで天国のよう…とんでもねえとこに来ちまった感がすごいです。
右奥に目的地の唐松岳が見えた!となれば、俄然やる気が出てきました。左のピークまで行けば山荘なので、ラストスパートです!
やっと着きました!真っ赤な建物が唐松岳頂上山荘です。背景には五竜岳の雄姿が。うわぁ、ここで宿泊できたら最高じゃないですか。
そして、何といっても唐松岳!きれいな三角形の山肌はハイマツの緑に覆われ、そこからヴェールのように白い砂礫の道が伸びています。山頂に結婚式場があってもいいくらい素敵な風景です。
そんな唐松岳に見惚れていると、つい先日富山県の立山(たてやま)に行ったという友人が、「あれが立山、剱岳」と教えてくれました。
剱岳(つるぎだけ)といえば、超難所の険しい山だということは知っています。山容からもわかるように、まるで岩が牙のようにも見えるほど急峻です。険しい岩山といえば、秩父の両神山や群馬の妙義山などが関東では知られます。こちらは手が届きそうな山ですが、剱岳は…ちょっと遠すぎる存在ですね。
さあ、休憩後はいよいよ唐松岳の山頂へ!
全方位絶景!唐松岳山頂
山頂へ早く着きたいという思いと、まだ着きたくないという思いが入り乱れる、今そんな気持ちです。いつまでもこの風景の中を歩いていたい。いや贅沢です。
7時20分、唐松岳の山頂に辿り着きました!まだだ…まだ感動するな…!!
それにしても、雲が空を二分している不思議な景色です。
山頂からは先ほどの立山方面もバッチリ。友人はここから立山を見たかったらしく、熱心に撮影していました。
ぼくは相変わらず五竜岳の虜になっています。スゴイぞーカッコいいぞー!!たろうは可愛いぞー!
たろうと白馬方面も激写!フハハ、白馬に乗ったたろう様だぞー!
あまりの絶景に、たろう本日二度目のびっくり顔。きっとぼくも同じ顔してます…
山頂の絶景を堪能し、再び山荘へ戻ります。すると、友人が他の登山者に声をかけられました。どうやら、カメラマン友達がここでテント泊をしていたようです。友人はカメラつながりで全国に知り合いがいるので、こういう現地での出会いもしばしば。羨ましいぞーー!!!
ということで、ヤバイ『カメラ友達』がパーティIN!
天上の水鏡、八方池を経て下山へ
ひょんなことからパーティが増えました。(笑)ぼくはそういうの大歓迎なので、3人でワイワイしながら下山となりました。往路と違って、遥か彼方の地上を見下ろしながらの下山。これはこれで最高ですね。
登りの時は、まだ暗闇で見られなかった扇雪渓。近くまで行けるみたいですが、今回は見送りました。
なにせ、下山ルート一番のお楽しみは八方池(はっぽういけ)です。この池は、背景の白馬三山を水鏡に映し出す神秘の池として人気を集めています。条件さえ整えば、ですが。
唐松岳への登山道から八方池へ入れば、ここまでは遊歩道が整備されているため一般観光客も入り混じる風景となります。ぼくたちも八方池へさあ!さあ!
おお!これが!!!…?
……なんか思ってたのと違う?
カメラマンズによると、今は風があるから厳しいねとのこと。そして追い打ちをかけるように、声を揃えて「前に来た時に見たけどww」と。
ウゾダドンドコドーン‼
とはいえ、これまでに数えきれないほどの絶景を堪能してきました。八方池もガスなく見られたし、白馬岳の圧倒的雄姿も目に焼き付けた。これ以上ないくらいです。
また次、訪れた時のお楽しみにしておきましょう。
八方池から先は、快適な木道をトントンと歩く音が気持ち良い。後はリフトまで優雅に楽しみながら下山です。
ところで、同行のカメラマン友達のザックが尋常じゃないくらデカいのが気になります。なんでもトレーニングのためらしく、今後歩くルートを聞いたら泡吹くかと思いました。恐るべしカメラマンのスタミナ。
グラートクワッド山頂駅に辿り着けば、後はリフトを乗り継いで黒菱駐車場へ帰るだけ。このリフト、下山利用だけでも素晴らしいですね。楽しい。
黒菱第3リフトに乗って最後の空中散歩。何だか寂しい。もっと歩きたい。そう思っていたところに、ふと往路で登った急登の道が目に入りました。いやあれヤバいって…
駐車場に戻った後は、カメラマン友達も一緒に下山後温泉へ。旅は道連れ、なんでもござれ。こちら八方の湯で登山の疲れをい癒やします。泉質はトロトロ、景色にメロメロ、もはやいうことなしの最高の温泉でした。
ここで現地解散し、友人と帰途につきました。ありがとう、カメラマン友達!またどこかで。
唐松岳の山旅、終わりに
憧れの北アルプス第2弾として訪ねた唐松岳。さすが初心者におすすめというだけあって、ほどよい行動時間で絶景を堪能できました。ただ、ぼくたちは早朝発だったため混雑とは無縁でしたが、出発時間によっては大渋滞となることもあるそうです。
もちろん唐松岳は手放しで素晴らしかったのですが、ぼくの印象に強く残ったのは五竜岳のほうでした。冒頭でお話した隣り合う“美女と野獣”よろしく、まさに野獣のような雄々しい見た目。迫力ある山でした。ここはいつか歩いてみたい…!
次はどの山に行こうかな。