栃木県北部の那須エリアは、豊かな高原に広がる牧場やテーマパーク、多くの宿泊地や別荘地に加え、皇室の方が利用する御用邸もあることから「ロイヤルリゾート那須」として親しまれています。
そんなリゾート地帯にそびえる那須連山の主峰、茶臼岳(ちゃうすだけ)は約3万年前に火山活動を始め、今なお噴煙を上げながら堂々とその存在感を示しています。
暴風雨により撤退を余儀なくされた去年の山行から1年。大迫力の火山と紅葉、そして明け方の空一面に広がる雲海の那須岳へ、再び。
どうも、スラ男です。
今回は、栃木県那須エリアにある那須連山のうち、茶臼岳と朝日岳に友人と一緒に歩いてきた時のお話です。燕岳からひと月半、またまた山のお誘い嬉しい限りです。
那須連山は主峰の茶臼岳と、朝日岳、三本槍岳、南月山、黒尾谷岳の五山からなり、そのうち茶臼岳、朝日岳、三本槍岳を総称して那須岳(なすだけ)と呼びます。
秋には朝日岳の山肌を紅葉が彩り、駐車場からたった1時間程度で絶景が堪能できます。
■那須岳(2020年10月18日) 目次
振り返る去年の那須岳と、茶臼岳の夜明け
夏の燕岳に続き、10月の紅葉期もまた友人から山のお誘いがありました。場所は那須岳、実は去年も同じ時季に二人で訪れているのですが、その時は尋常じゃないほどの暴風雨により撤退を経験しました。
去年の10月といえば、猛烈な台風「ハギビス」が関東、東北地方に壊滅的な被害を出したことが記憶に新しいですが、この山行は台風の上陸よりも少し前になります。
セオリー通り夜間に駐車場に到着したものの、日本海側からやってきた猛烈な暴風雨のせいで車から出ることができません。日の出前になってようやく雨が収まり山頂を目指して歩きましたが、猛烈な風でこれ以上は危険と判断し、撤退しました。
そのため、今年こそは那須岳の紅葉が見たい!という強い気持ちがぼくたちの中にはありました。ということで、夜中に都内を出発し、那須岳を目指します。
ちなみに、後で目の当たりにしますが、峰の茶屋駐車場は混雑必至の激戦区。紅葉期においてはそれこそ夜中のうちに満車になってしまいます。なので、早いうちに那須岳登山口のある峰の茶屋駐車場に車を停め、仮眠をとります。この時点で駐車場は満点の星空、風も全くなし。去年が嘘のよう。
夜明け前に駐車場を発ち、峰の茶屋跡避難小屋に辿り着きます。ここまで全くといっていいほど風もなく、ナイトハイクではありますが快適そのもの。去年の無念を晴らすべく、山頂で日の出を拝むべく、茶臼岳へ。
荒々しい火山岩に覆われた黒塗りの登山道を歩き、鳥居と神社のある山頂へ。薄明の空には一面を覆う大雲海が広がっており、目の前の鳥居はまるで海に立っているよう。
まずはここまで辿り着けた感謝と、これからの山行の安全をお祈りします。何せぼくと友人にとっては試練の山、気は抜けません。
さて、日の出まで30分ほど待機なのですが、山頂付近は肌を切り裂くような冷たい風が、これでもかとばかりに吹いています。しかし、山頂一帯にある大きな岩の陰に身を潜めれば、岩が風除けになってくれるので快適でした。
太陽が近づいてくるのがわかります。それと合わせて、二匹の龍のような雲まで現れました。これは縁起がよさそう。
友人と相談し、山頂ではなく隣の朝日岳の紅葉が見られる場所へ移動します。途中、火口周りを下っていくのですが、その絶景に度々足が止まります。
ところで、日本は“火山大国”と呼ばれていますが、国内の活火山の数を数えてみると、なんと108山もあります。これは世界の活火山の7%を占めるそうです。そしてそんな火山を観光地にしてしまうのだからすごいことです。
そんなことを考えていると、日の出が現れました。感動の瞬間です。去年成し遂げられなかったことが、今こうして報われるということが何より感動を倍以上にしているのだと思います。
鮮やかな紅葉と岩稜の朝日岳
日の出を浴びた朝日岳の山肌は、紅葉が鮮烈な色彩を帯びています。友人はちょっと進んではカメラを構え、圧巻の風景を切り取っていました。
眼前のダイナミックな山容、鮮やかな紅葉、日の出、そして背後の雲海と、山で見られる絶景のフルコースです。
日の出後となると、峰の茶屋跡避難小屋付近では続々と登山者がやってきます。去年はあの小屋に辿り着くまでのたった1時間が、どれほど大変だったことか。この日はほとんど無風で、本当に恵まれていました。
避難小屋付近で休憩もできますが、まだ時刻は7時前。混雑しないうちに朝日岳へ歩いていきます。
避難小屋から朝日岳へ向かうには、眼前のピークをトラバースします。狭いですが、秋にはススキと紅葉が美しい風景を作り出しています。
トラバースを終えた先で振り返ると、何やらネコのような巨岩が。道標には恵比寿大国とあり、もともとは三つの巨岩だったそうな。
岩稜となる朝日岳への登山道は、階段や鎖場、そして滑りやすい足元と茶臼岳に比べると難易度がググっと上がります。
特にこの鎖場のトラバースは、一歩間違えれば谷底へ真っ逆さま。友人と一緒に安全箇所を確認しながら進みます。
朝日岳山頂まであとひと息というところで、友人が「いいもの持ってきた」といい、おもむろにちくわを取り出してきました。
そういえば、最近Twitterでも行動食としてちくわが話題になりましたが、友人のフットワークの軽さには脱帽ものです。美味しいです、ちくわ。
朝日岳の肩という鞍部からひと登りで朝日岳の山頂に到達しました。広さはありませんが、360度見渡せる展望台のような山頂です。
眼下には、思わずため息のでるような紅葉風景が広がっています。すごい、すごい!と視線を流していくと、満車になった駐車場から延々と続いている自動車の列に、この日一番の「すっげえ!」が飛び出しました。
朝日岳から真正面には茶臼岳の山容が見事。今度は明るいうちに歩いてみたいところです。
山頂の端のほうには、可愛らしいミニ鳥居が。いつまでもこの山頂で絶景を堪能していたいところですが、そろそろお次の三本槍岳を目指します。
目指す三本槍岳は、紅葉と相談?
さて、朝日岳の肩から三本槍岳への途中、1900m峰というピークで昼食休憩しながら、那須岳のうち茶臼岳と朝日岳を歩いてきたので、三本槍岳も歩きたいというのが心情ですが…?
正面にある三本槍岳までは、現在地から往復2時間程度。時間的には問題なさそうでしたが、友人と相談した結果、あそこはまた次の機会ということになりました。
去年の目標は達成できたし、何よりありとあらゆる絶景でもうお腹いっぱい。帰りの渋滞のこともあるし、無理は禁物ということです。
その代わりといいますか、それなら茶臼岳を下ったところにある紅葉の名所として知られる姥ヶ平(うばがだいら)を見に行くことに。タイミング的には少し遅いかなぁというところですが、果たしてどうか。
茶臼岳を目指して、まずは朝日岳の肩から岩稜を下っていきます。この日一番の難所はこの下りでした。太陽が上がってきたため、霜が解け足元の状態が悪化しています。加えて、登山者の行き来により泥濘みとなり、終始気が抜けない箇所でした。
トラバースのところまで来てしまえば、少し肩の力が抜けました。ただ、この時間になると登山者も増えるため、狭さがネックとなりプチ渋滞が。
避難小屋まで無事に戻ってこれました。朝には見られなかった紅葉風景が眼下に広がっています。こういった、時間とともに風景が変わっていく登山も面白いですね。
これから向かう姥ヶ平も、茶臼岳の山頂からすぐに見に行くこともできたのですが、早朝だと茶臼岳の影で真っ暗だったので後回しにしました。
ガスに包まれることもなく、晴れ空での登山ができる嬉しさたるや。てる坊に感謝しきりです。そういえば、この日はたろうを家に忘れました…
茶臼岳の紅葉、そしてどこまでも続く道路渋滞
避難小屋から茶臼岳山頂への分岐を牛ヶ首方面へ進むと、再び火山の荒涼とした風景が。道は概ね平坦なため、ペット連れや小さな子ども連れの観光者が目立ちます。
茶臼岳はロープウェイで中腹まで来ることができるため、初心者向けの名山としても知られます。ですが、朝日岳まで縦走する場合は、それなりの装備と準備をしたほうがいいように思われます。
道中、活火山を象徴する噴気が見られる場所が。ほのかに硫黄が香り、下山後の硫黄温泉で頭がいっぱいになってしまいます。
お目当ての姥ヶ平の紅葉は、ほとんど終わりかけでした。牛ヶ首の分岐から下っていくと、ちょうど池に反射した茶臼岳が見られるとのこと。それなら紅葉最盛期のほうがいいねということで、この日はここで引き返します。
姥ヶ平より右側は紅葉の見ごろが続いていました。これはすごい!見事です。
お昼前になると空は分厚い雲に覆われてしまい、太陽も隠れてしまいました。できればもう少しだけ紅葉に光を当てていてほしかったのですが…
それでも見応えは最高ですが。紅葉の那須岳、ありがとうー!!
そういえば、登りの時点では真っ暗だったので気が付かなかったのですが、序盤の樹林帯は紅葉が見ごろでした。これは嬉しいサプライズ!
最後の最後に美しい紅葉風景を目に焼き付けて、駐車場へ戻りました。
しかし、目の当たりにしたのは、これから峰の茶屋駐車場に入るであろう自動車の、どこまでも延々と続く渋滞の列!那須岳は麓から駐車場までの道がほぼ一本道でUターンができないため、駐車場に入ってからでないと戻ることができません。
渋滞は殺生石(せっしょうせき)付近まで続いており、Twitterによれば3時間以上も待ったとのこと。恐るべし紅葉期の那須岳…!やはり早めの出発が望ましいですね。
当初、ぼくたちもこの付近にある鹿の湯へドボンと思っていましたが、さすがにこの超渋滞を見ては諦めざるを得ません。高速道路のこともありますし、帰りの渋滞にはまる前に帰途へ着きました。
那須岳の山旅、終わりに
今年こそ登りたい!という強い願いが通じたのか、天気も良く爆風とも無縁の最高の那須岳登山が実現しました。また、紅葉も素晴らしく、誘ってくれた友人には感謝しきりです。
しかし、姥ヶ平の紅葉も三本槍岳も、まだまだ那須岳でやりたいこと見たいことは山ほどあります。またいずれ、この絶景を思い出しに訪れたいですね。
次の山旅はどこに行こうかなぁ。