ようこそ スラ男村

なまけたろうと登山ブログ

【秩父】官ノ倉山~虎山の千本桜 花盛りの東秩父をめぐる

4月に入ると、山歩きに花の彩りが加わり、単調な道路を歩いているだけでも楽めるようになりました。この季節、外せないのはやはりでしょう。

低山で咲く桜は、上旬なら麓で、中旬なら中腹あたりで見頃を迎えるので、タイミングを合わせれば短い花期で何度か楽しむことができます。今回ぼくは、以前より行きたかった東秩父村に山旅を合わせました。

見渡す限りの桜に包まれる、春の東秩父へ。

 

どうも、スラ男です。

 

今回は、東秩父の桜を見るために、いつもより少し長めの山旅をしてきた時のお話です。

春の東秩父は、桜よりも早くに花桃が見頃を迎え、村全体が鮮やかな桃色に彩られます。まさに桃源郷というに相応しい景色だそうで、もしかしたら花桃と桜の共演!?と淡い期待を抱いていましたが、しっかり一週間のずれで花桃は見ごろを終えていました。

東秩父の桜を目指して、まずは小川町からスタートです。

 

■官ノ倉山~虎山の千本桜(2021年4月3日) 目次

 

短くも冒険感のある低山、官ノ倉山

f:id:ta2ni:20210824104646j:plain

東武東上線に乗ってやってきたのはこちら、東武竹沢駅。単純に東秩父を目指すなら、一つ手前の小川町駅で降りてバスを利用するのが便利。しかし、目的地である桜の名所の開園時間まで時間があるので、ひと山越えていこうという魂胆です。

f:id:ta2ni:20210824104737j:plain

向かう官ノ倉山(かんのくらやま)までは、30分ほど舗装路を歩いていきます。道中、春の花が賑わいを見せてくれていますが、いまいち空模様がパッとせず…

f:id:ta2ni:20210824104804j:plain

長閑な風景を見守るように現れたのは、官ノ倉山と石尊山(せきそんさん)。この二山はセットで登る方も多いとのこと。まずは右側の官ノ倉山を目指していきます。

それにしても、高さも同じくらいだし、まるでネコミミのようです…

f:id:ta2ni:20210824104844j:plain

途中、雰囲気ある神社があったので、ここで登山前の安全をお祈り。境内には社殿を覆うほど大きな杉が。なんでもここ三光神社は、もともとは妙見神社と呼ばれていたらしく、あの秩父神社の妙見様とは姉妹なんだそう。

f:id:ta2ni:20210824104947j:plain

神社を過ぎて10分ほどで大きな池が見えてきました。ここは灌漑用に貯められた天王池。その奥から官ノ倉山が顔を覗かせています。

f:id:ta2ni:20210824104959j:plain

散った桜がぽつぽつと浮かぶ池を覗いてみると、数匹の鯉がゆらりゆらりと泳いでいました。もっと天気が良ければきれいな緑色が映るのに。

f:id:ta2ni:20210824105027j:plain

池の脇から登山道へ入ると、ここはいつもの奥武蔵・秩父エリア。針葉樹と乾いた土が薫る、馴染みの登山道です。さあ登るぞ!と意気込んでも、正味15分で山頂に着いてしまうのが官ノ倉山。お手軽ハイキングといわざるをえません。

f:id:ta2ni:20210824105042j:plain

官ノ倉峠は小川町と東秩父村の境目にあたります。ここから山頂までは5分ほど。

f:id:ta2ni:20210824105055j:plain

山頂直下には、子どもも楽しそうに登れるくらいのアスレチック的な岩場が。ここをよいしょと登れば、いよいよ山頂です。

f:id:ta2ni:20210824105108j:plain

駅から歩き始めて1時間ほどで、標高344.7mの官ノ倉山へ辿り着きました。山頂からはこれから向かう笠山、堂平山のほか、天気が良ければ赤城山や日光の山々も望めるとか。曇天なのが悔やまれます…せっかく桜を見に来たのに。

ところで、官ノ倉山。少し変わった名前が気になりませんか?古くは「神ノ倉山」と呼ばれ、信仰の山なんだそう。山頂付近には神様が座る磐座(いわくら)があって、それを「神の蔵(かみのくら)」と呼び、かんのくらと変わっていったという説があるとか。

そうそう、信仰の山といえばお隣の石尊山もまさにそれ。ここまで来たらぜひ縦走をおすすめします。

 

大山詣の影響がここにも!?関東に数ある石尊山

f:id:ta2ni:20210824105256j:plain

官ノ倉山では親子ハイカーさんが休憩をしていたので、お邪魔にならないようそそくさと移動します。縦走といってもお隣の石尊山へは山頂から5分ほどの距離。

そうだ、山頂標でたろうの写真を撮った時に、「あ、カワイイ」といったそこの少年。君はいい目をしているな…!

f:id:ta2ni:20210824105138j:plain

山頂には石尊信仰の祠が建てられています。石尊信仰は、伊勢原市大山(おおやま)を中心とした山岳信仰のことで、山頂の大岩に神様が降りてくる言い伝えに由来します。大山の別名「雨降山(あふりやま)」からもわかるように、石尊信仰の神様は農耕、雨乞いの神様です。

江戸時代に、関東全域から大山を目指してお参りする大山詣が流行ったこともあり、関東各地には「石尊山」が10数か所あるといいます。そのほとんどが低山という共通点があるのが面白いところ。これは里人が通いやすいようにと、雨乞いのための信仰の色を消さないためでは?と推測する方もいるそうです。

また、伊勢原の大山しかり、麓から見た時にシンボリックな山のほうが信仰の対象としてわかりやすいこともあります。ネコミミ型の石尊山、官ノ倉山ペアも、その条件を満たしているように思えます。

f:id:ta2ni:20210824105337j:plain

石尊山を堪能したら、再び官ノ倉山を経て峠まで戻ります。山伝いに進むことも可能ですが、先は長いのでいったん麓まで下りることに。

f:id:ta2ni:20210824105404j:plain

下りている道中、「石尊」の文字が彫られた石碑を発見。これも石尊信仰によるものかな?と思いましたが、どうやら「小御嶽」が付く場合はその限りではないらしく、富士山が絡んでくるそうです。つまり富士山の天狗か。なにそれ興味ある。

f:id:ta2ni:20210824105417j:plain

意外にも長く感じた下山道。赤土に枯れ葉がまぶさり、かなり滑りやすく、そのせいかロープの柵が取り付けられています。正直、この日一番の緊張した場所でした…

下山先の安戸地区で満開の桜に迎えられました。このまま春景色を楽しみながら、次なる目的地へ。

 

和紙の里・東秩父と虎山の千本桜

f:id:ta2ni:20210824105535j:plain

安戸地区から次に目指すのは、「虎山の千本桜」という桜の名所。車道を歩いて一時間ほどのところにあるので、バスを使ってショートカットも可能ですが、春の里山風景を楽しみながらのんびり歩いていきます。

途中、重なり合う山の奥から、独特な山容が顔を覗かせます。おそらくあれは笠山(かさやま)…地元で“おっぱい山”と呼ばれている山でしょう。見ての通り、おっぱい山です。

行程の中間ほどで、和紙の里の看板が見えました。休憩がてら立ち寄ります。

f:id:ta2ni:20210824105601j:plain

f:id:ta2ni:20210824105614j:plain

「道の駅 和紙の里ひがしちちぶでは、手すき和紙の体験やワークショップ、和紙製品の販売などが楽しめるほか、地元のそば・うどん、イワナの塩焼きなども魅力的です。平成28年にオープンしたため、外観もとてもきれい。

さらには、復元された紙すき家屋のある日本庭園は見事で、桜と合わせてぜひオススメの立ち寄りスポット。東秩父村細川紙は、ユネスコ無形文化遺産に登録された歴史ある名産品なので、いつか勉強しに再訪したいものです。

f:id:ta2ni:20210824105744j:plain

道の駅から落合橋の分岐を寄居方面へ進み、しばらくするとピンク色に染まる山肌がにわかに見えてきました。ここまで長かった…

さて、本日のメインイベント、虎山の千本桜に到着です。…ん?“弐千本桜”ですね。

というのも、ここは元々採石場跡でしたが、地域住民のボランティア活動によって桜の名所に生まれ変わらせたとのこと。駐車場のおじいちゃんに話を聞くと、今では1700本を超える本数が植栽されているので弐千本桜に格上げしたのだそうです。

東秩父村公式観光サイトでは「虎山の千本桜」表記です。

f:id:ta2ni:20210824105757j:plain

おじいちゃんいわく、花見客の他にもコスプレイヤーさんたちも大勢押し寄せるそうです。確かに、山の千本桜なんて和風の舞台としてはこれ以上ないくらいですもんね。

しかしながら、虎山の千本桜は一般の観光名所ではなく、全域が私有地です。ボランティアの方々のご厚意で解放されていることを念頭に置かなくてはなりません。マナー違反やルール無視はご法度です。

f:id:ta2ni:20210824105901j:plain

虎山だからか、入口付近には木彫りのトラが設置されています。ここで協力金を払って、さあ花見だ!と思ったらいきなりの急坂。これが結構キツい…

坂道にズラリと並ぶ桜は圧巻のひと言。よく見ると白い桜もあったり。

坂の下を見てみると、続々とコスプレイヤーさんたちが登ってきました。人気作品鬼滅の刃のキャラクターが多かった印象です。和風作品ですから、桜にぴったり。

山の上部まで登り切れば、桜並木と比企の山並みが一望できます。さっきまで青空が出ていたのに、どうしてここでまた曇るかな…

山をぐるりと散策するだけでも結構な体力を消費しますが、それを補ってあまりある春爛漫の風景。いや虎山の弐千本桜、素晴らしいところでした。前々から訪れたかった場所でもあるので、感無量です。

f:id:ta2ni:20210824105811j:plain

山から下りてまた見上げる弐千本桜。ソメイヨシノ河津桜、しだれ桜など数種類の桜が植えられていますが、まだまだ若木のところもたくさんありました。これから年を重ねる毎に美しさを増していくことでしょう。再訪は必至です。

 

さて、この後ですが…実はまだ山旅が続きます。

 

官ノ倉山~虎山の千本桜の山旅、終わりに

f:id:ta2ni:20210824105310j:plain

小川町から東秩父村は初めて訪れた山域でしたが、密度の濃い山旅となりました。小粒ながら非常に冒険感のある官ノ倉山と石尊山。伝統文化と里山風景が楽しい和紙の里。そして圧巻の虎山の千本桜。

今回は山旅の一部として訪ねましたが、朝イチで虎山の千本桜を楽しみ、和紙の里で体験学習やグルメにたっぷりと時間を使うなんてプランも非常に満足度が高そうです。

 

次の山旅はどこに行こうかなぁ。

 

■後半は笠山へ

surao.hatenablog.com