花盛りの東秩父は、まるで桃源郷のよう。そんな風景に恋焦がれ、ずっと訪れる機会を伺っていました。3月下旬から花桃が、4月に入れば千本桜が咲き乱れ、冬の間眠っていたモノトーンの山々を鮮やかに彩ります。
虎山の千本桜を観賞した後は、そのまま小川町に戻ってショートハイクにするもよければ、余力があれば白石地区へ向かうのも一つ。
大展望とあたたかな春の花々に迎えられる比企の山々へ。
どうも、スラ男です。
前回、官ノ倉山から虎山の千本桜へ歩いた時の続きです。
東秩父村の南端は外秩父山地と呼ばれ、槻川を囲むよう馬蹄型に稜線が連なっています。その麓にある白石地区は、春にはまるで桃源郷のような景色を作り出すといいます。
春爛漫の山村風景を楽しみながら、外秩父の山並みを歩き大展望を得る。この山域の魅力が存分に味わえる山旅の始まりです。
■笠山~堂平山(2021年4月3日) 目次
■前編記事はこちら
春の花々が咲き乱れる笠山へ
虎山の千本桜を見た後は、落合橋の分岐まで戻り、そこからバスを使うのが便利です。この地域を走るイーグルバスは、近年の台風や大雨の影響で路線を縮小していましたが、この春にようやく復帰しました。
皆谷バス停で降り、これから向かう笠山(かさやま)の登山口へ。この笠山とお隣の堂平山(どうだいらさん)、その先の大霧山(おおぎりやま)は、比企郡を代表する山として比企三山と呼ばれています。
大霧山といえば、初夏の秩父高原牧場を真っ赤に彩る「天空のポピー」の観光と合わせて登る方も多いようです。ぼくも毎年狙っていますが、タイミングが全然合わず…
さて、まずは笠山を目指して山村の間を縫いながら歩いてきます。白やピンクの花々に迎えられ、美しい山村風景にいきなり足が止まります(笑)
民家脇にもたくさんの花が賑わいを見せています。特にハナダイコンは群生しており、見事でした。
もう一週間早く訪れれば、満開の花桃ロードだったかも。今回は桜に合わせたので花桃はまたの機会。
スイセン、レンギョウ、ユキヤナギなどなど、春の花々が次々と現れる本当に賑やかな笠山までの道のり。東屋のある分岐点は、見晴らしもよく特にオススメのスポットでした。
山上集落を抜けて、いよいよ本格的な登山道へ入ります。すると、登山道手前でハイカーさんたちが、「カタクリ咲いてるよ」と教えてくれました。おお!こんなにたくさん!
カタクリはスプリング・エフェメラルと呼ばれる春を告げる花の仲間。栃木県の三毳山(みかもやま)が大群生地で知られますが、こうしてひっそりと咲いているのもいいですねえ。
とくれば、お決まりの…たろうは小さい花がよく似合います。
序盤はカタクリに心躍りましたが、だんだんと登山道は乾いた景色に。
皆谷バス停付近の登山口から歩いて1時間半ほどで、最初のピーク笠山に辿り着きました。
展望はありますが、この日はあいにくの曇り空。しかし、春の花々が温かな山村風景を歩いてきたぼくの心は晴れ模様です。
笠山山頂から5分程度歩くと立派な神社が見えました。ここは笠山神社。調べてみると、ネコの御朱印や猫札等の頒布情報がありました。単に猫を飼っているからとかではなく、ネコが御眷属とのこと。それって、養蚕の守り神である「お猫様」だ!
お猫様といえば、同じく秩父地域の城峯山でも見たことがあります。養蚕にスポットを当てて、この辺りを歩いてみるのも面白いかもしれませんね。
ところで、笠山神社のすぐそばにも笠山の山頂標が。どうやらこの笠山は双耳峰のようで、こちらのほうが西峰よりも5mほど高いですね。
ですが、ネットに掲載されている情報の多くは笠山の標高は837mとあることから、笠山といったら西峰のことのよう。笠山神社の養蚕信仰に興味があるので、ぜひこちらの笠山東峰も盛り上がってほしいところですが。
そうそう、笠山は山頂に近づくと登山やけにゴツゴツとした岩が露出してきます。この時季、そんな岩場の斜面にひっそりと咲くイワウチワを忘れてはいけません。
一見するとサクラソウのようにも見えますが、特徴的なウチワのような葉っぱと、可愛らしいピンクの花は一度見たら虜になってしまいます。
そのイワウチワがこの笠山に群生していました。事前調べになかったので、これは嬉しい。ただ、咲いている斜面の足場が悪く、観賞する際は注意が必要です。
天文台と大パノラマの広がる堂平山
笠山で春の花々を堪能した後は、次なる目的地の堂平山を目指します。コースの随所に設置された「外秩父七峰縦走ハイキングコース」の看板を辿っていくのですが、一体それは何?というところですよね。
このハイキングコースは、小川町駅をスタート地点とし、馬蹄型に連なる外秩父山地を次々に踏破していき、寄居駅にゴールする大会のコースです。その距離はなんと約42㎞!毎年4月下旬頃に行われ、当日は大勢の登山者で賑わうとか。
その大会を意識してなのか、何組かのトレイルランナーさんたちとすれ違いました。ちなみに、ここ2年はコロナウイルスや台風被害の影響で大会の開催は中止されています。
堂平山の山頂に近づいてくると、にわかに草原地帯が目の前に広がります。ここは堂平山のパラグライダー飛行場なので、中に入らないようにロープに沿って歩いていきます。
いったん車道をはさんで、堂平山のシンボルである天文台に辿り着けば山頂です。ここまで長い旅路でしたが、実はこの堂平山、麓から車でアプローチが可能なのです。すごい!
堂平山の山頂からは、360度の特大パノラマが広がっています。麓の白石地区や大霧山などの外秩父山地もバッチリ。
堂平天文台では、天文観察や宿泊、バーベキューなどが楽しめるそうですが、コロナ禍の2021年時点では最新情報を確認したほうがよさそうです。訪れた時は、トイレや自動販売機は利用できましたが、売店は一部制限が設けられていました。
居心地の良い堂平山を後に、いよいよ白石地区を目指していきます。
まるで桃源郷のような白石地区
堂平山から白石地区を目指すには、引き続き馬蹄型に連なる外秩父山地を歩いていき、白石峠から下山となります。まずは森林学習道に沿って次のピークへ。
すぐ隣に車道があるため、この区間では山深さをなかなか感じられません。しかし、大きな電波塔の設置されたピーク・剣ヶ峰が標高876mと、このコース最高地点なのです。堂平山が標高875.8m(約876m)のため、ほんのわずかの差なんですけどね。
電波塔裏にひっそりと石碑が建つだけの、いってしまえば通過点のようなピークだからか、「あれ?剣ヶ峰は?」なんて方もしばしばいるとか。
剣ヶ峰からは明るい尾根をひたすら下っていきます。白石峠に辿り着くと、奥武蔵グリーンラインを攻めるライダーさんたちでしょうか。数名が集まっており賑やかでした。
白石峠からは関東ふれあいの道に沿って歩き、いかにも奥武蔵・秩父エリアといった針葉樹林帯の道が続きます。
この区間も台風被害で通行止めとなっておりましたが、こうして歩けるようになったこと、関係者様方には感謝しきりです。
白石地区まで下りてくると、ここからバス停まで舗装路歩きとなります。しかし、沿道には春の花々が咲き乱れ、まるで宴のよう。「山笑う」とはまさにこのことですね。
白、黄色、桃色と、どこを見ても色鮮やか。おまけに桜の花吹雪まで。
いつまでも続いてほしい、桃源郷のような東秩父。春爛漫、秩父ロマン。
白石車庫バス停に辿り着けば、今回の旅路のゴールです。ここでようやく文句なしの青空が…惜しい!できればこの青空の下で白石地区を歩きたかった。
やってきたイーグルバスに乗って、帰りは小川町駅に。二つのエリアを変則的に繋げた今回の山旅でしたが、非常に満足のいく内容になりました。春は東秩父、間違いないかもしれませんね。
笠山~堂平山の山旅、終わりに
台風被害によりしばらくお預けとなっていた東秩父の山旅。それが叶って嬉しい限りです。念願の千本桜も見られたし、白石地区の山村風景、笠山のイワウチワ、そして堂平山では大展望も得られました。
何よりも、白石峠から白石車庫までの区間は、ぜひ春に歩いてほしい美しい景色が広がっていました。同じく東秩父村には、花桃の名所もあるということなので、いつかの春に再訪は必至ですね。
季節との組み合わせで様々な景色を得られる外秩父山地。今回歩かなかった大霧山をはじめとする西半分にも、まだ見ぬ魅力的な風景が待っています。
今後もその魅力に寄り添いながら楽しみたいところです。
次の山旅はどこに行こうかなあ。