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なまけたろうと登山ブログ

【秩父】蓑山 花の名山、アジサイ咲く美の山

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いつも以上に天気予報とにらめっこが多くなる梅雨。夏山シーズンに突入するとともに、各地の低山ではアジサイが咲き乱れ、深まる緑を鮮やかに彩ります。

秩父皆野町にある標高586mの蓑山(みのやま)は、桜の花見や雲海鑑賞、そして山の斜面一帯を埋め尽くす、約4,500株ものアジサイを楽しめるとのこと。

久しぶりの再開登山なので、ゆっくりペースでハイキング。一応縦走プランも用意していますが果たして…?

 

 

どうも、スラ男です。

 

 

今回は、埼玉県皆野町にある蓑山へ、見頃を迎えたアジサイを楽しみながら歴史旅をしてきた時のお話です。

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蓑山皆野町の裏山といわれるほど、老若男女問わず里人に親しまれている山です。四季問わず花に恵まれる“花の山”であり、それでいて山頂からの展望も抜群。今や秩父の名物ともいえる秩父雲海も、ここ蓑山の山頂から見渡すことができます。

 

 

蓑山(2020年6月27日) 目次

 

親鼻駅ジオサイト、紅簾石片岩とは?

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6月の登山というと、どうしても心配なのが雨。梅雨の晴れ間を狙いたいところだけど、週末しか休みが取れないぼくとしては、天気の神様に祈るほかありません。2代目てる坊を引っさげて、目指すはおなじみの西武秩父駅

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晴れてはいますが、西武秩父駅からいつも見える武甲山が見えません。秩父のシンボルともいえるその姿は、毎度「秩父に来たぞ」という気持ちをいっそう強めてくれるので、こう見えないと残念ですね。

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目的地である蓑山秩父鉄道沿線にあるので、西武秩父駅から御花畑駅まで移動。武甲山は見えませんでしたが、看板娘の桜沢みなのちゃんが迎えてくれました。

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さて、蓑山へアプローチするには、和銅黒谷駅皆野駅、もしくはここ親鼻駅が降車駅となります。今回親鼻駅を選んだのは、近くにジオサイトがあるから。

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ジオサイトというのは、日本各地にあるジオパークにおける見どころのことです。

親鼻駅付近には「栗谷瀬橋の蛇紋岩」と「紅簾石片岩とポットホール」の2箇所があるので、登山開始前に近い方に立ち寄りましょう。

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聞き慣れない名前の紅簾石片岩(こうれんせきへんがん)とは、マンガンを含むチャートなどからできたと考えられている暗紫色、深紅色の岩石とのことで、産出すること自体が稀だそう。案内板に従い、民家の脇から川辺に下っていきます。

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すると、長瀞岩畳のような景観が飛びこんできました。この大きな岩塊が紅簾石片岩の巨大露頭であり、ここから下流が天然記念物「長瀞」となるそうです。

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露頭には、これまた巨大なポットホールが空いていました。この岩塊が荒川の川底だった頃に削られてできた痕跡ですが、これほど巨大な穴は初めて見ました。

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このあたりは地質学において非常に貴重な地とされており、お隣の長瀞には「日本地質学発祥の地」の石碑が建てられています。また、博物館もあるのでジオパーク秩父について詳しく調べてみるのも面白いかもしれません。

考えてみれば、山登りは大地を歩いているわけだから、興味が惹かれるのは自然な成り行きなのかも。

 

関東ふれあいの道と、蓑山のオオカミ

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紅簾石片岩から来た道を戻り、本来の目的地である蓑山へ。山頂へ至る登山道は、神社経由の表参道や古道のほか、関東ふれあいの道が設定されています。

山頂までは3kmとショートコースなので、子どもを連れての山登りも考えていましたが、この時季の登山道の泥濘み具合だと子ども連れでは厳しかったか。行くなら春ですかね。

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途中、万福寺の駐車場付近でさっそくアジサイがきれいに咲いていました。ヒラヒラと浮かぶように咲くガクアジサイのほか、普通のアジサイも色とりどり。

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目的地は山なのに、すぐ寄り道してしまうのがぼくの悪い癖(笑)

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ふれあいの道へ入っていくと、木々は初夏の淡い緑色から少し深まりをみせています。しかし、道は泥濘み、重くのしかかる湿度。極めつけはすでに滝のように止まらない汗。風景の爽やかさと相反する汗かきハイカーのぼく。重ねていいますが、子ども連れてこなくて良かった〜(;´∀`)

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ところで、「関東ふれあいの道」と聞くと、なんだか歩きやすそうでほんわかした道を想像しませんか?

実際、歩きやすいところもあるにはありますが、ここ蓑山のは、ふれあいの道というより修験者の道です。どこまでも鬱蒼とした森が続きます。ぼくは大好きな道ですが。

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皆野町観光協会からダウンロードした地図によれば、「お犬のくぼ」という場所が分岐路の近くにあるようです。狼信仰を追いかけるぼくにとっては、ぜひ見ておきたい場所…なのですが!そのことを忘れて見晴台まで。来た道を戻ります(´;ω;`)

細い道の途中、小さなほら穴と案内板がありました。ここがお犬のくぼのようです。オオカミの巣穴だったのでしょうか、近くにある神社の祭礼の場でもあるようです。

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再び見晴台まで。一度登っているので、二度目は感覚的にはすぐ登れてしまいます。朝は晴れていたのですが、どうもぐずってイマイチです。

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見晴台の分岐を蓑山神社方面へ。草原を抜けると神域へ入ったからか、雰囲気が一変。なんだかオオカミでも出てきそうな感じがしますね。

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一対の狛狼が番犬ならぬ番狼か、蓑山神社(蓑神社)へと到着です。

こちらの狛狼は、オオカミ像を追って旅された写真家、青柳健二さん著の『オオカミは大神』の表紙にもなっているので、ぜひこの目で見たかったところでした。

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ギョロリとした眼光に鋭い牙。まさしくオオカミそのものです。

ところで、秩父の狼信仰といえば必ずと言っていいほど日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が絡んできますが、ここ蓑山神社も例外ではないようです。 

蓑山神社の由来について調べてみると、ヤマトタケルの東征の折、この地で蓑を置いて休んだという伝説から“蓑山”と呼ばれるようになったとか。しかし、蓑を置いたのは知知夫彦命(チチブヒコノミコト)だとか、巨人伝説のダイダラボッチとも言われます。

いずれにせよ、蓑山がロマンあふれる里山であることには変わりませんね。

 

山上の花園、美の山公園

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蓑山神社から山頂方面へと登っていく途中、いい雰囲気の展望台がありました。あんなところで読書なんて、最高の贅沢です。

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山頂のあじさい園地が近づいてくると、今の今まで静寂と湿気に包まれていた登山道の雰囲気から一転、賑やかな声が聞こえてきました。

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山頂一帯は「美の山公園」として整備されており、実は直下まで車で来ることもできてしまいます。子どもと一緒の場合は、むしろ車でアプローチし、山頂広場でたっぷり時間を使ってあげるのも一つかもしれませんね。

しかし、もともとの蓑山という名前をもじって“美の山”とは上手いこと考えますね。確かに、春から桜、ツツジアジサイと咲き乱れ、紅葉と雲海、冬にはロウバイと澄んだ空気からの大展望が楽しめるというから、まさに美しいが詰まった山です。

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蓑山の山頂標は、展望台の裏手にひっそりと佇んでいるので、見逃している方も多いかもしれません。

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美の山公園広場に戻り、斜面一帯を埋め尽くすあじさい園地へ。見渡す限りアジサイに彩られた園内は、散策するだけでも非日常を味わうことができるので、ここはぜひ家族と一緒に訪れたいところですね。

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青系のアジサイが多めですが、大人っぽい紫色も素敵です。おや、ぼくの手元にもピンクの可愛らしいたろうちゃんが…

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いや素晴らしい!散策中に太陽が差し込んできた時は、思わず「おおっ!」と近くにいたシニアご夫婦と喜び合いました。来て良かったと思えた瞬間です。

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再び広場に戻り、駐車場側の展望台から望むあじさい園地は圧巻の一言。まるでアジサイの天の川…は言い過ぎかもしれませんが、息を呑むきれいさですよ。

Twitterでこのアジサイの夜景写真を見かけましたが、それこそ本当に天の川そのものでした。

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6月下旬〜7月上旬頃まで見頃が続く、蓑山アジサイ。これは汗をかいてでも見るに値する景色でした。車で来ればもっと楽なのですが、桜やこの時季だと、満車で駐車ができないということも考えられるので注意したいところです。

ぼくは下山後の温泉を楽しみに、再び汗をかきながら和銅黒谷駅へ向かいます。

 

和同開珎、“日本最古の通貨”は秩父にあった

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親鼻駅から和銅黒谷駅へと下るショートコースで歩いていますが、この湿度の高まる6月の低山においては十分といえる内容でした。

逆に、当初予定していた大霧山まで続くロングコースだとバテていた可能性が高いです。山頂で判断を下しましたが、終わってみればこれで良かったなという感想です。

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和銅黒谷駅までの下山路は、淡々と山道を下っていくコースなので、泥濘みによる転倒だけ気をつけて進みます。近くを歩いていた他の方が3度もたて続けに転倒していたので、足元を見ると普通のスニーカー。登山靴でさえ滑るので、あれでは非常に厳しい下山だったと想像できます。

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さて、下山口からは舗装路歩き、途中の立ち寄りどころである和銅採掘露天掘跡へ向かいます。歴史の教科書で必ず出てくる、あの「和同開珎(わどうかいちん)」がある場所です。

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案内板に従い薄暗い土の道を歩いていくと、見えましたどでかいオブジェが!最近だとちちんぶいぶいのCMでよく見た、あの和同開珎です。

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その昔、この和銅採掘露天掘跡から和銅(ニギアカガネ)が見つかります。都へ献上すると、当時の天皇は大喜び。年号を見つかった和銅にちなみ「和同」と改め、発見地である秩父は歴史の表舞台に立ち、一躍脚光を浴びたそうです。

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見つかった当時の和銅は、近くにある聖神社(ひじりじんじゃ)の御神宝として祀られているようです。聖神社は金運にご利益のある神社としても人気ですので、ぜひ立ち寄りたいところです。

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ニャー(おっと、この道を通りたければ俺を倒してからにしな!)

 

思わぬところでイベント戦が発生しました。普通、ネコは近づくと警戒して逃げてしまうものですが、このどっしりネコちゃんはびくともしません。失礼して、脇を通らせてもらいました。やはり逃げない…こやつ何者だ?

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辿りついた聖神社拝殿の脇にも和同開珎のオブジェがありました。和銅の産地であり、和同開珎ゆかりの地であることから聖神社は「銭神様」とも呼ばれています。拝受できるお守りも、コイン型や金運関係のものがズラリ。

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そういえば、和同開珎の読み方。ぼくは和同開珎(わどうかいちん)で習いましたが、和銅保勝会のHPによれば開珎(かいちん・かいほう)の2つの説があるようです。

また、和同開珎は“日本最古の通貨”として有名ですが、それよりも古い時代の貨幣と思われる富本銭(ふほんせん)のことも忘れてはいけません。

では富本銭が日本最古の貨幣なのか?ということが考えられますが、「通貨」としては和同開珎が圧倒的に流通していた記録が続日本紀あります。ここ秩父から生まれた歴史的価値のあるものですから、この地位は揺るぎないものでいてほしいと思います。

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和同開珎と聖神社秩父の歴史トラベルを満喫したら、いよいよ最後のお楽しみは温泉です。和銅黒谷駅周辺にある和銅鉱泉 湯の宿 和どう」さんへ。炎天下の車道歩きはなかなかに汗が吹き出すので、早くドボンしたい限り。

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和どうの温泉は、歴史ある秩父七湯の一つに数えられます。※諸説あり

宿としての評価も非常に高いので、実は今回一番の楽しみにしていました。ほかにお客さんもいなかったので、思い切り「ハァ〜〜〜〜〜(*´ω`*)」最高ですこれ。

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温泉でさっぱり!と思いきや、駅まで結構距離があり、再び汗が体を蝕みます…レトロな趣の和銅黒谷駅につく頃には、温泉もう一回入る?とさえ思いましたよ。

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電車を待つ間、かわいい顔の貨物列車が。息子スラ坊が見たら喜びそうだ。

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秩父神社秩父グルメを楽しみたかったので秩父駅で降車します。物産館にはなんとコロナ禍で一躍有名人となった妖怪アマビエに扮したポテくまくんが!!ポテビエくんの姿を描かねば…

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ちょうどお昼すぎだったこともあり、予定していたお蕎麦屋さんは大行列!仕方ないので表参道の商店街をぶらり。御花畑駅に近づくころに、そういえばずっと行きたかったお店があったことを思い出しました。

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それがここ、珍達そばさん。秩父に詳しい方が美味しいと言っていた情報を見て、ずっと気になっていました。有名店なので混雑必至かと思いきや、時間がちょうど良かったのか、4〜5人ほどの列だったのですぐに並びます。

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カウンター席に案内され、普通の珍達そばを注文。出てきたのは、ネギとバラ肉がたっぷり入った醤油味のラーメン。丼になみなみと入ったスープは激アツで、最後食べきるまでアツアツが保たれています。美味い!美味い!最高です。

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山も温泉も、食欲も全てが満たされた頃にようやっと顔を出した武甲山秩父路の締めくくりに間に合い、今回も満足の行く山旅となりました。

 

蓑山の山旅、終わりに

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アジサイ目当てで訪れた蓑山は、実は登山初期からずっと行きたかった山でした。

秩父で唯一の独立峰のため、たっぷり歩きたいぼくはなかなかコースを決められず今回まで先延ばしになっていました。山頂での時間を存分に使え、下山後の観光もできたので、思い切ってショートコースにして良かったと思います。

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特にアジサイは素晴らしいの連続でした。山の斜面にびっしりと咲き乱れるため、見ごたえも抜群。これは桜の季節も行きたくなりましたね。

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また、蓑山への山旅でぜひ組み合わせたいのがこの和同開珎。歴史の勉強にはなりますが、遠い古代に思いを馳せ、現代まで続く秩父ロマンにどっぷり浸るにはおすすめのスポットといえます。

 

次の山旅はどこに行こうかなぁ。