10月も半ばを過ぎると関東圏1,500m級の山々が紅葉の見頃を迎えます。ぼくはこの時期の山梨県が好きで、豊富な自然林が錦に染まるその美しさの虜になってしまいました。
紅葉と合わせて見たいのが、白く雪を纏い始めた富士山!とくれば、やはり山梨県。紅葉×富士山=絶景が約束されます。そこにちょっとスパイスのきいた縦走をば…
秀麗富嶽と名山をつなぐ紅葉の縦走路!
どうも、スラ男です。
今回は、山梨県大月市の本社ヶ丸(ほんじゃがまる)、清八山(せいはちやま)から三ツ峠山(みつとうげやま)まで縦走してきた時のお話です。
このルートは、とある登山ブロガーさんの記事で見た時からずっと歩いてみたかったところ。紅葉真っ盛りというのもぼくにとって追い風。全山が暖色に彩られ、歩いていて全く飽きが来ない(秋なのに)トレイルです。
しかし距離も長いうえに標高差もけっこうあるタフなルート。スタミナが心配でしたが、何とか歩き通せて感無量でした。
■本社ヶ丸~三ツ峠山(2022年10月29日)
- 秀麗富嶽の最難関!?迫りくる急登の連続
- 紅葉の稜線と、ふたつの秀麗富嶽12番山頂
- 目指す三ツ峠と、気になる河口湖アルプス
- パワースポットだらけの修験の道を辿りながら下山
- 本社ヶ丸~三ツ峠山の山旅、終わりに
秀麗富嶽の最難関!?迫りくる急登の連続
さあ、今回はJR中央線を利用して笹子駅までやってきました。ここは大月市が定める「秀麗富嶽十二景」という山々をめぐる際に起点となることが多い駅。当然、ハイカーもたくさん降りていきました。
本日は長丁場、駅前のスペースで念入りに準備体操を。そういえば駅近くで購入できるという笹子餅、これめっちゃ気になっているのでいつか買いたい。
準備が整ったら、まずは線路脇の薄暗い道を歩いていきます。北側に見えるのは滝子山(たきごやま)など南大菩薩の山々。あそこも良かったなぁ。
しばらく歩いていくと、左手側に地味な登山口が現れました。ここからスタート!と意気込んだのはいいのですが…
おぎゃあ!とんでもねえ急登!
序盤からものすごい傾斜の坂道でぶん殴られ、目が回る勢いです。
実は今回登る山は駅からの標高差がなんと1,000mを超えています。同じ秀麗富嶽というカテゴリなのに、扇山や百蔵山などとは雰囲気がガラリと変わるガッツリ登山。秀麗富嶽十二景の中でも最難関?と噂されるだけありますね…!
ゼェ…ゼェ…!もぅマヂ無理。スタミナきれた。
広場で休憩していたおじさんたちに「ここも山頂だよ!ほら頑張って!」と言われて見てみると、庭洞山(にわほらやま)に着いていました。「俺たちは歳だから、ガッツリ登ってガッツリ休むんだ」というおじさんですが、この後で先に出たぼくをあっさりと追い越していきました。体力ェ…
束の間の平坦地で足を休めながら、上がる標高につられて段々と樹々が色づいてきましたよ。
登りも大詰めか!?というところで、出たのは林道でした。林道を挟んで向かい側から登山再開。
ところで、秀麗富嶽十二景をめぐっていると、この大月市の道標にも愛着がわいてきませんか?
20分ほど登っていくと、一面が伐採されたピークに出ました。名前もないところですが、すっきりと展望が開けた場所です。
伐採地からさらに30分ほど登って、ようやっと尾根上の山頂、角研山(つのとぎやま)に辿り着きました。
ここまでしんどかったけど、頑張った!ここから先は景色も紅葉も格別の味わい、待ちきれません!
紅葉の稜線と、ふたつの秀麗富嶽12番山頂
角研山から先は明るい広葉樹林の尾根道が続きます。ということは、ぼくの大好きな紅葉トレイル!さっきまでの疲れはどこへやら。
上を見ても横を見ても、鮮やかな紅葉が疲れを吹き飛ばしてくれます。これですこれ!この風景を待っていました。
角研山からここまで歩いた時間は5分強なんですけど、こんなに贅沢な5分ってなかなかありません。紅葉の力ってすげー!!▼
樹林帯から出ると、最高に気持ちがいい風景が飛び込んできました。紅葉の山の左奥に待っているのが、本日最後に訪れる三ツ峠山。遠いな…
先ほどの展望地から次のピーク、本社ヶ丸までは後1時間強。嘘だ!!と思いますが、紅葉パワーのおかげかフットワークは軽め。もうひと踏ん張りです。
樹林帯の先に待ち構える岩場、ということは…!!
秀麗富嶽十二景の12番山頂、本社ヶ丸に到着!!ここまで長かった~!!
山頂に着いたら秀麗富嶽シリーズですので、まずは富士山をね。まあ、微妙に頭しか見えてないんですけれども。全然オッケー!(笑)
標高1,631mからの眺めは、富士山を抜きにしても一級品。奥秩父や八ヶ岳、南アルプスの山々まで見渡せます。加えてこの紅葉、ここまで歩いた甲斐があるというものです。
本社ヶ丸の山頂はゴツゴツした岩場ですので、ぼくはこの先の清八山で休憩することにします。しかし、山頂から下ろうとしたらいきなり岩場の急下降。
本社ヶ丸から清八山の区間はアスレチック感があって冒険心をくすぐりますね。間違いなく初心者向けではありませんが。
岩場の途中で、この日一番の景色に出会いました。あそこで休憩している方いいなあ~~!!!
横を通り過ぎる時に挨拶して一枚。三ツ峠方面の紅葉も素晴らしいし、誰もいなかったらここだなぁ休憩は。
本社ヶ丸から30分ほどでふたつめの十二番山頂、清八山へ到着。面白いですよね秀麗富嶽って、何番山頂が複数あるの。
清八山からも当然富士山が望めるわけですが…が~~???
たろう見えた?どう?
ギリ見えたッッ!!
快晴なら松の木と合わせて和風な一枚が狙えそうですが、こればかりはどうも。
そういえば、この清八山で序盤に出会ったおじさんと再会しました。「お!来たな!お疲れ~!」という言葉に元気貰いましたよ。
自分たちは先に三ツ峠行くからとお別れしましたが、いや体力お化け…ぼくはヘトヘトです。
目指す三ツ峠と、気になる河口湖アルプス
さて、本日の縦走路もいよいよ後半戦へ。清八山からは三ツ峠を目指していくのですが、実はこの山域でもうひとつ気になる縦走路がありました。
それが河口湖アルプスと呼ばれるルート。いわゆる“ご当地アルプス”ですが、御坂山地の主稜線を歩くにはそれなりの体力を要するし、里山レベルは超えてると思うけど…
御坂山方面も同時期にものすごい紅葉トレイルとなるそうなので、もしかしたら本社ヶ丸・清八山から御坂方面へ切り替えもアリか!?とも思いました。しかしバスや温泉の都合、実際に歩いてみた疲労具合から、ここは別の機会で。
とくれば三ツ峠に気持ちを切り替えて集中!繰り返すアップダウンも紅葉があるから頑張れる。頑張れ!!
30分ほど歩くと、登り返しの先に巨大な山塊が見えました。三ツ峠までもう少し、頑張れスラ治郎頑張れ!
そういえばYAMAPの記録によるとこの辺りでクマが出たとか…頑張れえええ!!!
急勾配にロープ、激しい段差、オレの体はボドボドダァ!!
ハッ!!?
人工物が見えた!ということは!!三ツ峠の御巣鷹山(おすたかやま)に着きましたよ!
御巣鷹山の山頂は大部分が電波塔で、休憩スペースはほぼありません。ということで、向かいに見える次なる電波塔へ向かいましょう。
ところで電波塔の多い三ツ峠山ですが、これには電波を中継するのに丁度いい位置ということと、標高や電力の引込線、作業道なども好条件だからなんだとか。
人工物があまりにも多いことを嫌う方ももちろんいるのでしょうが、ぼくはそれも山の歴史と捉えています。ランドマークにもなりますし。
巨大な反射板がある広場をひと登りすると、三ツ峠山の最高峰、開運山(かいうんざん)です。
これまで歩いてきた秀麗富嶽の山々に比べるとすごい人で賑わっていますし、若い人からご年配まで登山者層も様々。秀麗富嶽はマニア向けなのか。
さてこの三ツ峠山、一番の魅力は富士山はもちろん北アルプスの山々まで捉えることができる好展望ではないでしょうか。かの旅人、大町桂月(おおまちけいげつ)もこの展望の良さを紹介しているとか。
そういえば、冒頭で紅葉×富士山の旅とか言っておきながら、ここまで富士山の全貌を捉えることができていないじゃないですか。果たして…!?
不視山(ふじさん)ッッッ!!??
まあこればかりは本当に仕方ないです。富士山を抜きにしても十分すぎる縦走でしたから、まだまだ楽しみますけど。
パワースポットだらけの修験の道を辿りながら下山
開運山から下ったところにある四季楽園という山小屋。その先に木無山(けなしやま)があって、御巣鷹山、開運山と合わせて三ツ峠山と呼ぶそうです。諸説ありますが、三つの峰(トッケ)が転訛してミツトウゲとなったとか。
さあいよいよ下山となるわけですが、ぼくは三つ峠駅付近にある温泉を目指して表登山道へ。ここは三ツ峠山に刻まれたた霊山としての歴史に触れ合えるぼく好みのルートです。
まず視界に飛び込んできたのがこの巨大岩壁。屏風岩と呼ばれ、ロッククライミングのメッカなんだそうで。かつての修験者も登ったりしてたのかしら。
真下まで近づくと、高さ100mにもなる岩壁のド迫力たるや。ああ!!登ってる方いますね!すごすぎる……!
修験の道よろしく、なかなかワイルドな道が続きます。特別な装備が必要なわけではありませんが。
圧巻の並び地蔵、八十八大師。かつては修験者、現代では登山者を見守るその表情は全て違うそうです。その下には空胎上人の墓がありました。この三ツ峠山の信仰を広められたお方ですから、しっかりとお参りをば。
不二石の看板がありますが、近くにいたハイカーさんと「…どれ??」と首をかしげました。(笑)どうも看板下にあった岩っぽいぞ。
さらに下っていくと、愛染明王塔がぽつんと建っていました。その傍らに立つ松の木は、西桂町教育委員会によると元々は縁結びの松として二本あったそうです。
この辺りまで標高が下がってくると、紅葉も落ち着き緑色が増えてきました。いつも下山は淡々となりがちなのですが、見どころが多いと楽しいですね。
登山道が終わると、ここからは長い長~い林道歩き。なあに、大菩薩下の天目林道に比べたらこんなもの。
途中にある公園には、三ツ峠山を模したと思われる可愛いデザインのトイレが!こんな凝ったトイレなかなか見かけませんよ。
ちなみにここはさくら公園というらしいので、春に訪ねればお花見登山も楽しめそうです。
ぼくのお楽しみは温泉一択です。今は温泉のことしか考えていないッ!!と、荒ぶっていたら「登山パック」なる案内が。
お得やん……!
この素晴らしいセットを提供してくれるのは、下山口からすぐのところにある三ッ峠グリーンセンターさん。ありがてえありがてえ、すぐに参ります!
こちらのお風呂は温泉ではないものの、三ツ峠山の湧水を利用した「開運の湯」「神鈴の湯」と、小さいながら薬草風呂も楽しめます。ぼく、山の名前のお風呂、好き。
三つ峠の由来に戻りますが、湧水が豊富なことから「水峠(みずとうげ)」の転訛説もあるみたいです。それを知っていると、このお風呂との距離感がグッと縮まる…!
お風呂でさっぱりと汗を流した後は、これっきゃない!まさに登山後のゴールデンアワー、五臓六腑に沁みわたります!
さらに「登山パック」を利用しているので、おつまみ各種がドドン!ひょわわ…!たまりません…!!!
大満足してお風呂から出ても、まだサービスは終わりません。「登山パック」には駅までの送迎がセットですから、狭い道をブイブイと運んでくれました。けっこうワイルドやん?
何かと派手派手な富士急行線に乗って帰途へ。当初の不安要素も紅葉の明るさで全て吹き飛ばしてくれた良き山旅でした。
本社ヶ丸~三ツ峠山の山旅、終わりに
駅から歩いて臨める秀麗富嶽十二景ですが、12番山頂の本社ヶ丸、清八山は富士山に最も近いという立地もあってか、体力を要するタフな山でした。その分、展望は言うことなしで紅葉も素晴らしかった。え、富士山は見てないですけど。
そしてそのふた山と合わせて登った三ツ峠山も、名山に相応しい登り応えのある山でしたね。え、富士山は見てないですけど。
また、今回見送った御坂山地も、実際に眺めてみてとても惹かれるものを感じました。河口湖起点でルートを変え、歴史ある茶屋や新しくできた展望台などを交えて全く違う形の縦走を計画できたらと思います。もちろん、紅葉の最盛期に。
次はどの山に行こうかな。