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なまけたろうと登山ブログ

【奥多摩】勝峰山 歴史と伝説、アジサイが彩る名低山

蒸し暑さが続く6月下旬。市街地でのアジサイから若干遅れて、山のアジサイが見頃を迎えます。ぼくは今年こそあきる野市南沢あじさい山へ行きたく、計画を立てていました。

武蔵五日市駅周辺はお気に入りのエリアで、興味深いスポットが盛りだくさん。そこにアジサイを加えて、ひと気少ない縦走ルートが完成しました。

歴史と地質と展望を抱く、隠れた名低山。

 

どうも、スラ男です。

 

今回は、東京都日の出町にある勝峰山(かつぼやま※)を歩いてきた時のお話です。※(かつぼうやま)とも

勝峰山。あまり聞いたことがない山ですが、東京百名山に数えられる地元密着型の名山のよう。実際に歩いてみると、山に眠る歴史と地質、自然と人の営みをひしひしと感じる非常に奥深い山でした。

え?このクレヨンのようなモニュメントですか?それは後のお楽しみで…

 

■勝峰山(2023年6月25日)

 

古刹に里山、日本の原風景を訪ねる

武蔵五日市線を利用していて思うのは、奥多摩に行くのに比べて「着くのが早いなぁ」ということ。それもあってか、手軽に行ける武蔵五日市エリアはお気に入りの山域です。

今回が初降車の武蔵増戸駅。終点まで行かずここで降りたのは、いきなり勝峰山に行くのではなく雑誌『散歩の達人』に載っていた場所に寄り道するため。

線路脇をしばらく歩いていくと、道標が見えました。こちら二つが本日の立ち寄り地です。

あきる野市大悲願寺(だいひがんじ)は開山800年余りの歴史あるお寺で、重厚感たっぷりの仁王門に圧倒されます。

緑の山の中に鮮やかな観音堂が良く映えます。登山前に寺社にお参りするのって気が引き締まって良いですよね。

大悲願寺は秋ごろに咲き乱れる白萩(シラハギ)が有名で、かの仙台藩主・伊達政宗(だてまさむね)がこの地を訪ねた際に見惚れたほど。後日「分けてほしい」という旨の手紙『白萩文書』を送ってきた逸話もあります。

白萩こそ見られませんでしたが、境内にはアジサイがちらほらと咲いていました。

大悲願寺にお参りした後は、来た道を少し戻り保育園を左折してその奥へ。途中でも色とりどりのアジサイが楽しめますよ。

突然、東京都とは思えない癒やしの景色が飛び込んできました。

「え、ぼくのなつやすみ?」とも思えるここは、横沢入(よこさわいり)という里山保全地域。なんでも都で第一号に指定された奇跡のような里山なんですって!

田んぼにはアカガエル、小川には小魚やトンボが。日本昔話で見たままの景色が広がっています。

里山の生態系を観察できるイベントなどもあるようなので、機会があれば参加してみたいですねえ。なお、生きものの無断採集や田んぼあぜ道への立ち入りは厳禁です。

横沢入を直進していくと、天竺山(てんじくやま)への登山口につながります。ここから雑木林の尾根道へ。うわ…すっげえクモの巣…

里山の観察路としても使われているのか、明るく良く整備されています。ただこの時期に歩いている人はほぼいないので、虫が好き放題してるじゃねえか。

ほう「石山の池」ですか。大したものですね。じゃなくて、歴史の香りが漂ってきましたよ。

どうやらここはかつて伊奈石という石材の採掘場だったようです。大きな石がごろごろと転がっており、往時の採掘の様子が偲ばれます。

わずかに水が染み出ている、こちらが石山の池。よく見てみると擂り鉢状に深く掘られている地形です。採掘の遺構もあり、地元有志の方々が保存活動をされているそう。

池から天竺山までは、軽快にクモの巣をからめとりながら10分弱。わたあめ作る時の割りばしの気持ちになれますよ~。

山頂にもアジサイが咲いており、季節感のある山歩きが楽しめます。

ところで、天竺山という山名が気になったので由来を調べていると、城跡マニアの間では天竺山は阿伎留城(あきるじょう)との言い伝えがあるみたい!ただ、城跡の遺構と思えるものが少なく案内板も一切ないことから、あくまで推測の域だそうで。

 

歴史と伝説の森、勝峰山へ

天竺山の表参道は長~い石段が組まれており、上り下りは怖そう。ぼくは北へ向かうのでこちらへは行きませんが。

天竺山から、日の出町方面へ進んでいきます。

もちろんすれ違うハイカーなどおらず、ひたすら無心でクモの巣をかき分けながら進みます。無視できないんですよ、虫だけは。

山道を抜けると、幸神(さじかみ)という交差点に出ました。そこから5分ほどの場所にある幸神神社には大変珍しい古木があるというので、立ち寄りましょう。

幸神神社のシダレアカシデ、伝承によれば樹齢およそ800余年といわれる古木です。日本ではここにある1本しか現存しないという大変貴重なもの。

幸神神社は導きの神様としてご利益があるとのことなので、きっとぼくがここに来たのもお導きあってのこと。

幸神神社の北側の交差点に出ると、勝峰山登山口への道標が見えました。例にもれずここも人通りがないため、引き続きスパイダーマンです。

導きの神よ、信じていいんだよな…!?

山道か、林道か。そんなの山道に決まってるじゃん♪

 

あまりにも、惨道…ッッ!!

 

藪、藪、ヤブ!のワイルドコースだったので、安易におすすめできません(泣)。

山道のショートカットで林道につながりました。それなら最初から林道で良かったんじゃ…?導きの神、何故このような仕打ちを。

炎天下での林道(激坂)歩きはけっこう堪えます…!20分ほど歩いた先で、林道の終点である展望台に辿り着きました。ここまで長かった!

林道開通により手軽に来られるようになったおかげか、広場はテレビドラマのロケ地になったり、夜景スポットとしても推しているようですね。展望台に様々な案内板が設置してありました。

さて、ぼくは勝峰山山頂を目指して登山道へ進みます。ここで気になる分岐がありました。“カルストの小径”…!なんてそそられる響きなんだ…!?

調べると、ここ勝峰山は全山が石灰岩からなる地質の山だそう。だから麓にセメント工場があったんですね。その性質から、山肌にカレンフェルトと呼ばれるカルスト地形の代表的な景観が見られます。

まさか東京都でカレンフェルトが見られるなんて!横沢入の原風景といい、この辺りのポテンシャル凄すぎんか…?

カルストの小径を抜けた先は、アジサイの小径(仮)!天竺山に続き、嬉しい誤算です。まさかこんなにアジサイが見られるとは思っていませんでした。

ひと登りすると、ヤマザクラの大木が並ぶ勝峰山の山頂に到着です。

山頂には鎧塚があり、調べてみると出てきましたよ平将門(たいらのまさかど)の伝説が!

藤原秀郷(ふじわらのひでさと)に攻めに攻められ退却を余儀なくされた将門軍が、勝峰山に一夜城を築いたそうです。それで青梅まで逃げていき、地名の由来となったエピソードにつながるわけですね。

読み応えのある案内板もあるので、休憩のついでにぜひ。

将門伝説のほかにも幸せの鐘が設置されており、日の出町の山を愛する地元有志の心意気が汲み取れます。

いやぁ、展望・花・地質・伝説とマルチな属性を持っており、低山歩きの面白さフルコースのような山ですよ勝峰山は。

 

アジサイと妖精に導かれて、不思議な森の美術館

勝峰山からは、本日のメインイベント・南沢あじさい山のある深沢地区を目指して下山していきます。

え…!?

 

き、金玉水!?

 

おまけに小机方面には「ためぐそ山」という謎スポットまであるのだから、ネット上でも話題になっています。どうやら動物のフンが堆積したことに由来するとのことですが、今回は見送り深沢方面へ。この後には巨木が待っています!

 

デカァァァァァいッ説明不要!!

 

幹周り約7.8m!!樹高約45m!!千年の契り杉だ!!!

実はこの周辺、巨木の多い地域なんですよね。幸神神社のシダレアカガシも名木ですし、あじさい山に行く道中にも巨木があります。楽しみ!

千年の契り杉から続く遊歩道を進んでいくと、アジサイが咲き並んだ舗装路に出ます。

アジサイに見惚れていると、可愛らしいクレヨン?のようなモニュメントが。

深沢地区のあちこちで見かけるこのモニュメントを追いかけていくと、この先にある深沢小さな美術館に導かれます。

美術館の庭にはコイのほかチョウザメも!チョウザメすっげえ!!

森の奥にひっそりと佇む美術館。こちらには造形作家・友永詔三(ともなが あきみつ)さんの作品が展示されており、隣にはアトリエもあるそうです。

館内には無数の人形作品が立ち並び、メルヘンチックな世界観が広がります。なかでも、NHKで放送されたプリンプリン物語の人形たちが魅せる独特の雰囲気。

なんだか今にも動き出しそうな気配すらします。

美術館にはカフェコーナーも併設されているので、ここで一服。お洒落な葉っぱのコースターで配されたアイスコーヒーの美味しさときたら!セットのスイートポテトもめちゃうま!

可愛らしい森の妖精ですねえ。奥様のお話によれば、この妖精ZiZiは、ご主人が一体一体全て手掛けているそうです。さすがに古くなって修復できないものもあるけど、数えきれないくらいいるみたいですよ。

森の不思議な美術館でまったりと過ごしていると、ぼくはここに何をしに来たのか忘れてしまいそう。それほど居心地の良い空間でした。

後編では、念願の南沢あじさい山へ向かいます。

 

勝峰山の山旅、終わりに

横沢入から天竺山、幸神神社から勝峰山とつなげて深沢へ下りるという今回のルート。実に色んな景色と歴史、花と芸術に触れ合えた実りのある山旅になりました。

季節柄、クモの巣や虫、藪が凄まじかったですが、ぜひアジサイ観賞と合わせて深掘りするほど面白い山ですよ。

 

次はどの山に行こうかな。

 

■後半は南沢あじさい山へ

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