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なまけたろうと登山ブログ

【高尾】高尾山~陣馬山 富士山と白馬、冬の奥高尾縦走

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世界一登山客の多い山」として知られる、東京・高尾山(たかおさん)。都心から一時間弱のアクセス、四季折々の自然が楽しめる様々なコース、さらには豊富な施設と歴史ある社寺仏閣など、その魅力は枚挙に暇がありません。

そんな高尾山への年間登山者数は、なんと250万人を超えるといわれます。それ故に、誰もが訪れやすい“観光地化”した山である感も否めませんが、高尾山から陣馬山(じんばさん)まで足を伸ばせば、キリッとした山の空気がお出迎え。観光登山から一転、歩き応え抜群のロングトレイルの始まりです。

 

 

どうも、スラ男です。

 

 

今回は、山頂に佇む白馬のモニュメントが人気の陣馬山を、高尾山スタートで縦走してきた時のお話です。

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高尾山から陣馬山までの縦走では、道中の各ピークから富士山の展望が楽しめます。加えて、お茶屋さんやエスケープルートも豊富にあるので、体力や時間と相談しながら幅のある山旅を組むことができるのも魅力です。

また、美味しいなめこ汁の食べ比べなんていうのも…アリです。

 

■高尾山~陣馬山(2020年1月13日) 目次

 

早朝の高尾山口駅、日の出を拝みに1号路へ

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時刻は6時30分、まだ鳥の鳴き声すら聞こえない、薄暗い高尾山口駅。 公共交通機関を駆使しているぼくにとっては、冬の高尾山は山行中に日の出が拝める貴重な山の一つです。

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いつもは賑わいの駅前も、真冬の早朝とあってはご覧の通り。この時間から登り始める物好きはそうはいまいと予想していましたが、思ったよりも人出がありました。

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日の出を拝むというと山頂からというイメージがありますが、高尾山は道中にも展望スポットがあるので、頑張って山頂まで行かなくても日の出を見ることができます。

それが1号路の途中にある、金毘羅台(こんぴらだい)という展望台。ここからは都心方面の景色が広がり、晴れていれば遠く筑波山まで望めます。また、舗装された単調な坂道が続く1号路において、この展望は気分転換やご褒美にもなりますので、おすすめの場所です。

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やはり数名の日の出待ちの方が待機していました。防寒着を着込み、その時を待ちます。すると…あ!

 

 

日の出だー!(*´∀`*)

 

 

日の出を迎えての山登りはやはり良いですね。生命力がみなぎるといいますか、これから頑張るぞ!という気力が満ち溢れてきます。

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日の出を拝んだ後は、金毘羅台から再び1号路へ。朝日が差し込む登山道を歩ける贅沢、たまりません。

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いつだったか、Twitterで見た「翼竜プテラノドンに見える木」をずっと探していましたが、とうとう出会えました。朝日を受けて赤らんだ木は、より一層プテラノドン感を醸し出している?

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舗装された急勾配の1号路に息が上がります。ふうっとひと息、いつもは観光客でごった返す高尾山スミカ付近も静まり返っています。

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振り返ると、太陽はもうあんな高さに。年末年始のケーブルカーやリフトは7時から営業(※特定日のみ)していますので、もう少ししたら登山者が増えてくるのでしょうか。

日の出をもう一度拝んで、先へ進みます。

 

高尾山と天狗、その伝説を追う

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高尾山の1号路は、乗り物やグルメ、社寺仏閣が魅力のコースですが、高尾山の顔ともいえる、“天狗”の存在を忘れてはいけません。

随所に天狗スポットがありますので、高尾山の天狗伝説を追いながら散策してみると、新たな魅力の発見に繋がるかもしれませんよ。

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例えば、1号路の道中に佇む巨木・たこ杉には、こんな逸話があります。

その昔、高尾山に住む天狗たちが薬王院へ続く道を工事しようとしたところ、四方に根を広げ、道の真ん中に居座る大きな杉が現れました。天狗たちの神通力も敵わないので、切り倒そうとしたところ、それは困ると根を引っ込めて道の脇にタコのように移動し、無事参道が完成しました。

道を開いたことから開運の象徴として、多くの観光客がそのご利益をと、隣にあるたこの像を撫で回していきます。

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薬王院の手前まで歩いていくと、左手側に注連縄が張られた天狗の腰掛杉が見えてきます。高尾山に住む天狗は、山の精霊ともいえる存在で、この木から登山参詣の人々を見守っているとか。

一方で、「天狗の木伐り」という伝説では、山仕事にきた木こりたちが突然大木が折れるような音や、斧で木を伐る音を耳にしたものの、木が地面に倒れる音は全く聞こえず、夜が明けてから見てみると何事もなかったように山は元のまま。これは天狗の仕業である…とあります。

山を守るために木こりたちに不可思議な体験を見せたのか、あるいはイタズラ好きなだけか…奥深いですね。

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薬王院の山門をくぐると、いかめしい2体の天狗像が見えてきました。よく見てみると、片方は鼻が長い一般的なイメージの天狗ですが、もう片方はクチバシがついており、鳥のような外見をしています。

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一般的に鼻の長い天狗を大天狗と呼ぶのに対し、こちらを小天狗と呼びます。

天狗のルーツを辿っていくと、この小天狗のほうが元々のイメージに近い姿をしています。天狗といえば鼻が長いというイメージになったのは、室町時代に絵師によって描かれた姿や、江戸時代に祭りの先導役として登場した天狗が、道案内の神、猿田彦(サルタヒコ)のイメージと重なったからだとか。

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天狗は調べれば調べるほど興味深い存在です。遥か昔から多くの人々が、その姿を伝え残してきたことが何よりの証明ですね。

高尾山と天狗、この話は長くなるのでまた別の機会にでも…

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薬王院からひと登りで、標高599mの高尾山頂に到達です。いつもは人だかりで撮影が困難な山頂標も、この時間なら気軽にパシャ。

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付近の施設はどこも営業前なので、次の目的地へ。快晴であるならば、展望台から望める富士山も忘れずに。絶景です。

 

いざ奥高尾、シモバシラと小仏城山

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高尾山頂から5分ほど下った先で「これより奥高尾」の標識が見えてきます。

奥高尾は、高尾山から西側に伸びる山々のことで、小仏城山、景信山、陣馬山が主なピークです。麓から高尾山までなら、軽装でのハイキングも気軽に楽しめますが、奥高尾まで足を伸ばす場合はそれなりの準備と体力が必要になります。

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奥高尾入口にある茶屋、細田さんは美味しいなめこ汁が評判で、季節を問わず素晴らしい景色と一緒に楽しめます。冬の寒空の下、営業時間中であれば温かいなめこ汁という気分ですが、朝早くにここを訪れたのには別の理由があります。

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それがこのシモバシラという氷の花。踏むとバキバキ音のする霜柱とは違います。冬の高尾山はシモバシラの人気スポットでもあり、ぼくもこうして観察に訪れたわけですが…探し方が下手なのか、残念ながら一つも見つけることができず

この日は山頂直下の5号路と、もみじ平北側の巻道を散策しましたが、一つも見当たりませんでした

 

該当箇所には植生回復のためのロープが張られていたため、もしかしたら写真の説明文のようにシモバシラが生育しにくくなっていたのかもしれません。ぼくも花を撮影することがありますから、気をつけたいことです。

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氷の花・シモバシラの観賞はまたの機会となりましたが、富士山と丹沢山地の展望は期待を裏切りません。もやが小気味よさを演出した相模大山が美麗です。

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展望地の一丁平を過ぎると、ほどなくして小仏城山(こぼとけしろやま)に到着しました。こちらでなめこ汁をと思いましたが、従業員の方も今しがた到着したばかり。火を使うものはまだちょっと…とのことでした。

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小仏城山の山頂標の近くには、木彫りの天狗像があります。4年前に登った時に比べると、だいぶ損傷が激しく、ここ数年の自然災害の凄惨さを静かに物語っているようにも思えます。

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ちなみに、小仏城山には看板猫が数匹いるのですが、ぼく個人もこのにゃんこには思い入れがあります。10年ほど前に登った時に、人懐っこいにゃんこの背中にたろうを乗っけたら、なんと振り落とされたのです!たろォォォ!! 

当時のにゃんこではないでしょうが、たろうをそっと近づけてみると、ササッと逃げていってしまいました。にゃんこェ…(´・ω・`)

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次の山へ進む前に、小仏城山からも富士山の展望が見事です。各ピークで見比べてみるのも面白いかもしれませんね。

 

山頂の天ぷら、景信山と峠道

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小仏城山から次の景信山(かげのぶやま)にかけては、登山道に小さな岩が目立つようになってきます。安全第一、小仏峠のたぬきに今日もご挨拶。

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山頂直下の急登を越えれば、ご褒美とばかりに景信山の茶屋が見えてきます。ぼくはこちら景信茶屋青木さんのなめこそばが大好きで、楽しみしていました。

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提供する直前にガッガッと削る柚子が香り、大きななめこもまた嬉しい。疲労の溜まった体に、温かいつゆが染みます。ぺろりと平らげてしまいました。

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また、景信山の名物として、山頂で食べられる天ぷらがあります。密かに楽しみにしていましたが、残念ながらこの日はお休み…(´;ω;`)

ならばと、山頂にあるもう一軒の茶屋、かげ信小屋さんを訪ねてみると、油の準備が整っていないのでまだちょっと…とのこと。早朝登山のデメリットがここで響いてきました。無念。

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かげ信小屋の脇にある山頂標付近は、日当たりが良好のため泥濘みがすごい。冬の低山は、空気が澄んでいて素晴らしい展望が期待できますが、その足元は寒暖差によりグチャグチャとなっていることが多いのです。

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景信山から一時間ほど歩き続けて、お次は明王峠(みょうおうとうげ)です。奥高尾縦走路において、この区間が一番長く、また適度にアップダウンも続くため頑張りどころといえます。

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明王峠にある茶屋は、特定日に営業しているそう。なかなか営業日に出会えませんが、トイレもあるので多くの人の休憩適地となっています。

この峠を越えれば、いよいよ陣馬山が近づいてきます。

 

青空と白馬、富士山と陣馬山

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明王峠から陣馬山までは、陽だまりも多く気持ちの良いトレイルが続きます。

 

ところで、奥高尾縦走路といえば、トレイルランニングのメッカでもあります。この日も多くのトレイルランナーが駆け抜けていきました。

同じ山でも、徒歩、ランニング、または自転車やバイクなど様々な手段で楽しむ人たちが集まります。そういう「楽しみ方って一つじゃないんだな」と考えさせられる一瞬が好きだったり。

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樹林帯を抜け、青空が近くなってきた途端に飛び込んでくる、白馬の像。いなないている馬を模したという、陣馬山のシンボルが立つ山頂に到達です。

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かながわの景勝50選」の一つである陣馬山からの景色、以前に訪れた時は辺り一面真っ白な雲に覆われていたので、感慨もひとしおです。

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陣馬山の山頂は、まるで高原のように広いことから陣馬高原と称されます。

今でこそ馬が象徴的な陣馬山ですが、元々は、滝山城の北条氏を攻める際に武田氏がこの高原で陣を張ったことから「陣場」だったといいます。確かに、360度見渡すことができるこの場所は、最高の陣場だったと想像できます。

しかし、後の観光地開発の際に、イメージアップのために場から馬へ漢字を変え、武田信玄の白馬をイメージした像がシンボルとして設置されたそう。

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その白馬像が望む先には、雄大な秀麗富嶽が今もなお。戦国時代、ここに陣を張ったという武田氏も、この富士山を望んで祈りを捧げたのでしょうか。

そう考えると、何かロマンを感じてしまいます。

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時刻は12時ちょうど。高尾山から歩き続けてさすがに疲れました。富士山の絶景と温かいなめこ汁、これ以上ない幸せの山頂がここにありました。

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陣馬山からの下山は、中央線藤野駅を目指して栃谷尾根を歩きます。

奥高尾縦走路は、陣馬山スタートで高尾山に下山すれば温泉や食事が手軽ですが、今回のコースでも下山後の温泉を楽しむことができます。少し歩きますが

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今までの縦走路から一変、静寂の世界が広がります。帰りはこれくらいが心地良いと思います。淡々と下山していきますが、頭の中は温泉のことでいっぱい。

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栃谷の集落に出ると、茶畑らしき風景がのどかです。この辺り、野生のサルがうろついていました。逃げる素振りすら見せないため、人馴れしているのか…

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途中にあった栃谷休憩所にはトイレのほか、靴洗い場が設けられているのがとても嬉しい。道中の泥濘みにやられた靴をゴシゴシ洗って気分も晴れやか。そして温泉でさらに晴れやか、もう言うことはありません(*´∀`*)

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やってきたのは、こちら陣谷温泉。内湯のみの渋い温泉ですが、開放感あふれる大きな窓の向こうには美しい自然が広がり、檜風呂の風情と合わせて最高です。宿の女将さんもすごく良くしてくれて、非常に満足度の高い温泉でした。

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藤野駅までは、陣馬山登山口からバスが出ていますが、このままぶらぶらと歩いていくことにします。歴史的建造物マップなるものが設置されており、これもまた面白そうですが…今回は見送ります。

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線路のフェンス近くでカメラマンが構えていたので、少し待つとスーパーあずさがやってきました。いつかこれに乗って山梨、長野界隈を旅したいな。藤野駅の観光案内所でお土産を買って、帰途に着きました。

 

高尾山~陣馬山の山旅、終わりに

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高尾山から陣馬山までの縦走は、多くの登山者やトレイルランナーから親しまれているロングトレイルです。

しかしながら、コースタイムは約7時間、距離にして約20kmと決してその道のりは気軽なものではありません。綿密な計画と準備をして臨むのがベストといえます。

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ただ、道中の魅力的な茶屋、富士山の展望、そして辿り着いた陣馬山山頂からの絶景は、これまで蓄積された疲労を吹き飛ばしてくれるでしょう。久しぶりの奥高尾縦走、歩き応えも見応えも十分過ぎるものでした。

最近は低山のショートトレイルが主ですが、たまにはこういうロングトレイルもいいなぁと再認識できました。

 

さあ、次はどこに行こうかなぁ。