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なまけたろうと登山ブログ

【日光】鳴虫山 日光の展望を楽しむ初夏のツツジめぐり

5月、多くの登山者が一年のうち最もざわつく季節。ゴールデンウィークを利用して遠方の山へ行ったり、何日かかけて高山縦走したり、いいなぁ。

それはそれとして、この時期になると関東の低山圏では新緑と色鮮やかな花々に彩られた山旅が楽しみです。奥多摩秩父丹沢山地、行きたいところは文字通り「山ほど」ありますが、今回は日光・鳴虫山(なきむしやま)に決まり。

鳴く虫に呼ばれて、風薫る日光へ再び。

 

どうも、スラ男です。

 

今回は、栃木県日光市にある鳴虫山を歩いてきた時のお話です。

日光というと、まずは日光白根山男体山、女峰山といった名山から、戦場ヶ原や華厳の滝といった名所が挙げられます。しかし、その陰に隠れた花咲く低名山がけっこうあるんです!(鼻息荒め)

鳴虫山だけだとショートハイクなので、今回はちょっと欲張って一つ前の駅からハイキングでも…

 

■鳴虫山(2022年5月4日) 目次

 

日光が世界に誇る杉並木街道を歩く

東武日光線の車窓から望む快晴の日光。早く山に登りたい!という気持ちはありますが、目的地の鳴虫山は単体で登るなら割と短めのコース。なので、よく下山後の温泉や観光と組み合わせて紹介されています。

それなら登山前の準備運動も兼ねて、最寄り駅のひとつ前、上今市駅から杉並木街道を歩いてハイキングスタートじゃい!

以前からこの日光杉並木街道は歩いてみたかったんですよねえ。世界一長い並木道!徳川家ゆかりの歴史道!何より歩いて気持ちよさそうな道!とくれば、上今市駅で体が勝手に下車しちゃいます。

街道に隣接する杉並木公園はきれいに整備されており、散歩をする人がたくさん。まぶしいほどの新緑を胸いっぱいに吸い込めば、思わず光合成できそう(笑)。

巨大な水車と春の花。いいですねえ、遠くに見える日光連山は冠雪しているというのに、目の前は春真っ盛り。登山していると、冬と春って同時に存在するんですよね。

公園を出るといったん住宅地を通り、再び杉並木道へ。先ほどまでの温かな散歩道から一変。つーんと空気が引き締まり、歴史の道へ様変わりしました。

辺り一面を巨大な杉に囲まれていますが、中には名前のついている木も。砲弾打込杉という物騒な名前の杉は、歴史を語る重要参考人のようです。

かつての戊辰戦争の折、この地で前哨戦を行いますが、日光の社寺を戦火にさらすのを防ぐべく板垣退助(いたがきたいすけ)が幕府軍を説得したとか。それが今日の美しい日光につながっているのだから、板垣さまさまですね。

杉並木道の後半は、車道多めですが並木太郎や銀杏杉など見どころもまだまだ。まあ、ぼくは全部見逃してしまいましたが、ガハハ(笑)。だって車に気をつけてたから…

最後の杉並木道を抜けると、見慣れた風景が。1時間20分ほど余計に時間をかけてここまで歩いてきました。いい景色を見ながらウォーミングアップできるなんて、グレートですよこいつはァ!

 

新緑とヤマツツジに彩られた鳴虫山へ

さて、いよいよ目的の鳴虫山へとりつくわけですが。駅からバスを使わずに歩いて登山口まで行けるのがこの山の手軽なところ。体はすでに仕上がっているので、雄大な日光連山を眺めながら東照宮方面へ。

途中、日光消防署のある交差点を左折し志渡淵川に沿って歩いて行くと道標が見えました。山肌は深緑の針葉樹と若草色の広葉樹のパッチワークが見事。これは歩くのが楽しみだぞ~!

登山口には、真っ赤なヤマツツジがこれでもかといわんばかりに主張しています。これがまた新緑に映えるんですよね。キラークイーンと猫草くらい相性最高です。

そうそう、いきなりのヤマツツジで驚くなかれ、この鳴虫山は実に4種類のツツジが咲き乱れる花の山。アカヤシオからミツバツツジシロヤシオ、そしてヤマツツジと花期をずらしながら楽しむことができるのです。欲をいえば全部見たいよなぁ~。

このヤマツツジの見頃は5月上旬から5月中旬。アカヤシオは4月中旬で、ほか2種は4月下旬から5月上旬が見頃なので、まさに今がベストシーズン!

とはいえ、山肌から分析した通りヒノキ林の部分も多め。ヒノキ林なのは南側なので、日光連山の展望を遮ることはなさそうです。

根っこの手綱をつかみながら、ぐいぐい標高を稼いでいきます。なかなかの急登、奥多摩秩父を歩いている方なら親しみある風景ではないでしょうか?

登り詰めると、本日最初のピークである神主山(こうのすやま)に辿り着きました。標高は842mもあるから、なかなかの低山です。日光はそもそも高い位置にありますからね。

薄っすらと雪を纏った女峰山(にょほうさん)もばっちり。以前はもっと展望が広がっていたようですが、木々の成長により今は小規模展望に。そういう時の経過による変化を楽しむのもいいよね。

神主山から先は、再び広葉樹林の中に飛び込んでいきます。これの気持ちよさといったら。このために春の山を歩いているといってもいいくらい。

トウゴクミツバツツジも出てきました!ピンク色の可愛いらしい花ですよね。4~5月の低山といったらこの花の印象です。もう少し早ければ、この辺りでカタクリも見頃なんだそう。

しかしゆっくりお花見~というわけにはいかない、手強い鳴虫山。根っこ!根っこ!怒涛の根っこ!なあに、階段が続くよりもずっといいさ。

ふと北側の視界が開けると、おお!女峰山のパノラマ!どんなに急登でも疲れていても、こういう景色が飛び込んでくるから元気が出ますよねえ。

鳴虫山のちょうど半分地点くらいのところでブナの大木に出会いました。瑞々しいブナですねえ。ブナの巨木やブナ林好きのぼくにはたまらないサプライズ。

喜びも束の間、またしても根っこロードですが、ここまでくればもはや根っこも友達、怖くない!それよりも北側と南側で分かれた植生が見事すぎる。

 

あ!?これは!!

 

シロヤシオじゃないですか!?うわあ良かった咲いてた~~!!

…実は、序盤に見たヤマツツジ、そして中盤のミツバツツジもぽつぽつと咲いているだけで、割とあっさりしていたんですよね。見頃がずれたのか…もしやこのままシロヤシオは見られないんじゃないか?という不安があったけど、良かった~。

 

わ、わ!!これはアカヤシオ!?

 

全体的に終わりかけですが、一応全部のツツジを見ることができたみたい。

実は前にツツジ目当てで日光の半月山・社山を歩いた時、見頃ドストライクだったのに全然咲いていなかった経験があって…今回はなんとか見られました。

 

鳴く虫の妖怪?不思議な山名と絶景の展望台

見頃過ぎでも頑張って残っててくれたアカヤシオに感謝しながら、鳴虫山山頂に到着です。標高は1103m!

山頂はたくさんのハイカーさんで賑わっていました。それもそのはず、駅チカでお花見に最高の低山ですし、なんと目の前には…?

ドーンと女峰山が!!まさに鳴虫山は女峰山の展望台といえます。かつては山頂に展望テラスが整備されていたようですが、今はなくなっていました。

ところで、この鳴虫山。不思議な山名が気になりませんか?春から夏にかけてたくさんの虫が鳴く山…?それがしっくりきますが、この「虫」というのは実は妖怪のことなんです。

妖怪「祢々(ねね)」は、山中で「ねーねー」と鳴き村の人々に危害を加えていましたが、日光二荒山神社に安置されていた大太刀がひとりでに飛び出し、祢々を退治したという伝説があるそうです。なるほど…祢々(虫)が鳴く山だから、鳴虫山…

ちょっとゾっとする言い伝えですが、なあに山に怪異はつきもの!下山して観光しようっと。どちらかといえば、この急な階段のほうがゾっとするかも…?

下山も花を愛でながら。タイミングが難しったけど、4種類のツツジを見られたことが何より嬉しい。次は絶対に満開を引き当てたいですね。

途中で合峰(がっぽう)というピークに。ここから銭沢不動まで、かつて修験道だったバリエーションルートで下山もできるみたいですが、この時は封鎖されていました。アカヤシオの尾根という情報もあり気にはなりますが…ゴクリ。

正規のハイキングコースを進み、違和感に気がつきます。あれ?下山しているのに登りがキツいぞ…???

そう、終盤になって謎の登り返しが多かったんですよね。最後のピーク、独標に着いて小休止。下山のほうがキツいとはこれいかに…?一緒に歩いていたシニアご夫婦も苦笑い。

やがて登山道も終わり、平坦な道に。ここからは思い切り観光ムーブいっちゃいますよー!

 

圧巻の並び地蔵、憾満ヶ淵に思いを馳せる

鳴虫山を下山して、車道を挟んで次なる目的地は憾満ヶ淵(かんまんがふち)。ここは松尾芭蕉の「おくのほそ道」の風景地に選ばれているところだから、気になってたんですよね。

ゴウゴウと急流の激しい音に導かれるまま、階段を下りていきます。

すると、下りた先には視界の果てまでずらりと並ぶお地蔵様が!!

これは「並び地蔵」といって、かの天海大僧正の弟子およそ100名によって寄進されたものだそう。明治35年の大洪水で何体か流されてしまい、その後は地蔵の数を数えるたびに違うことから“化け地蔵”と呼ばれるようになったとか。

化けたろう!?

圧巻の並び地蔵を眺めながら(数えてないですよ)歩いて行くと、いやあ渓流の見事さたるや。新緑に清冽な水が素晴らしいですね!これだと紅葉も最高だ。

滝なんかもあったりして、清涼感は抜群です。下山後に訪れて大正解!

そばだんご…美味しそう。芭蕉さんに倣って一句。

「美味しそう ああ美味しそう そばだんご」

日光連山から流れ出る大谷川、町って全部山と繋がってるんだなと思わせる風景です。

さて、憾満ヶ淵からは東照宮前まで出てバスに乗って帰るのもひとつですが、せっかくの日光、全部歩いちゃいましょう。

東武日光駅まで戻ってきたら、お土産を忘れて帰るなど許されません主にぼくが。ここ明治の館さんのチーズケーキは絶品。というか栃木ってチーズケーキ激戦区じゃありませんか?

最後に温泉ですが、鳴虫山登山でベターな温泉といえば下山口の西にあるやしおの湯が挙げられます。とても良い温泉なのですが、下山後に歩きたかったため今回は駅前にできたこちら、日光ステーションホテルクラシックさんの日帰り温泉を利用してから帰途へ。

時間も時間なだけに、広々とした温泉を独泉しちゃいました。もう言うことなしッ!これより最高なことがあるかァーーー!いやないッ!

 

鳴虫山の山旅、終わりに

4種のツツジを全部見たい!という欲張りな気持ちで訪ねた鳴虫山でしたが、なんとか全種類見られたことに加え、女峰山の大展望、不気味な妖怪伝説など、見どころのつきない面白い山でした。今度は満開のタイミングを狙って、あるいは紅葉のシーズンに!

序盤に歴史ある日光杉並木街道を歩き、終盤でこれまた歴史ある憾満ヶ淵を歩いたのも何かまとまりがあって良かったかも。何より緑眩しい渓流はいいぞ!ということです。

 

次はどの山に行こうかな。