10月も下旬頃になると標高の高い山では紅葉が一気に進みます。気持ち良い青空の下、鮮やかな紅葉の山を歩けたらどんなに最高だろうか。
毎年そんなことを思いながら、以前より温めていた山行計画をついに実行する機会に恵まれました。今回訪ねたのは、奥多摩のさらに奥に隠れた牛ノ寝通り(うしのねどおり)という尾根。
めくるめく紅葉をめぐるべく、幸せのワンデイハイクへ。
どうも、スラ男です。
今回は、山梨県甲州市から小菅村につながる牛ノ寝通りを歩いてきた時のお話です。
牛ノ寝通りは、山梨の名山・大菩薩嶺(だいぼさつれい)から奥多摩方面小菅村につながる尾根のことです。隠れた紅葉スポットということなので興奮を隠せずにいられません。
なお、スタート間もない大菩薩嶺付近の稜線で、いきなり絶景が飛び込んできます。高まる心拍数は急登によるものか、それとも紅葉への期待からか。
■牛ノ寝通り(2021年11月3日) 目次
小屋平から石丸峠、まずは爽快な稜線歩き
夜明けとともにやってきたのは、JR中央線の甲斐大和駅(かいやまとえき)。公共交通機関で大菩薩嶺を歩く場合にお世話になる駅です。
バスはもちろん始発なのですが、紅葉の見頃ドンピシャで、しかも祝日とくればすでに列ができていました。人気の大菩薩嶺×紅葉見頃ですから、それはもうコーラにピザポテトくらいマストな組み合わせ。見る見るうちに長蛇の列となりました。
ちなみに、運転手さんの話では、先週の土曜ではおよそ1,000人もバスで運んだとか。
ですがご心配なく、大菩薩嶺登山口へ直行するバスの他にも、臨時便のバスが出ていました。先週の大混雑の煽りを受けたのか、予定より早く到着した臨時便に乗り終点の手前、小屋平バス停が牛ノ寝通りへの最寄り登山口です。
甲斐大和駅でバス会社の方が「小屋平(こやだいら)へ向かう人はこっちでーす!」と案内してくれるのでありがたい。
この小屋平で降りたハイカーさん全員が牛ノ寝通りを目指すのでしょうか…?小屋平を起点とした登山としては、小金沢連嶺やその先の南大菩薩も考えられます。
ぼくも5年前にその縦走路を歩きました。その時の爽快な記憶がよみがえって……ハァ…ハァ…ここ、こんなに急登でしたっけ…?
ひとしきり登ると林道に出ます。林道の曲がり角付近が石丸峠登山口なのですが、そのまま登らずに少し進むことをおすすめします。
進んだ先、目の前に富士山の雄姿が!11月ともなると冠雪した姿を拝むことができ、急登の疲れも吹き飛びます。ありがたや~。
富士山を背にし、樹林帯をゆるり登っていきます。疲れた時は振り向いた先の富士山で体力回復!5年前もこんなこと言っていた気がします…
展望がきけば眼下には大菩薩湖が見えました。その奥には雲海も。湖×紅葉×雲海のスペシャルステージです。
樹林帯を抜けると、ここから石丸峠まで素晴らしい稜線歩きとなります。先ほどの大菩薩湖と、雲海の奥にはなんと南アルプスの山々が!眼福が過ぎる…この先どうなってしまうのでしょう?
進む右手側には秀麗富嶽十二景の一つ、小金沢山(こがねざわやま)も見えています。こんな天気のいい日は、絶景の稜線歩きを心ゆくまで堪能したい。そんな気持ちをグッと抑えて、紅葉の道へ。
もの静かな紅葉天国、牛ノ寝通り
さて、石丸峠から5分ほどで牛ノ寝通りへの分岐点が見えました。初めて小金沢山へ向かっていった時、気になる名前だなぁと思ってから5年。ついに!
序盤は笹の生い茂る静かな道となります。今回のルートの面白いところが、行程のほとんどが“下り”ということ。バスと石丸峠までの登りでほとんど標高を稼いでしまっているので、この先はずっと下りが続きます。
ところでこの牛ノ寝通り、石丸峠の稜線から一転して人の気配が全くありません。人気のルートなのかと思ってましたけど、意外と穴場なのかも?
歩き進むと、次第に紅葉した木々が多くなってきました。きれいなオレンジ色、まさに今が見頃といった具合です。
足元はフカフカの落ち葉が敷き詰められ、もはや歩いているだけで楽しくなってきます。きっと誰もが笑顔になるような場所、ここってもしかしてラフテル…?
それにしても、こんな楽しいトレイルなのにほとんど誰もいないなんて…!
気兼ねなくたろうの写真が撮れるな。
どうみても不審者です。本当にありがry
牛ノ寝通りの樹々は背が高いので、紅葉は見上げる構図がほとんど。さすがに首が疲れてきました(笑)。
美しい紅葉のトレイルは、この先もまだまだ続きます。
秋色に染まる牛ノ寝の山々を訪ねる
紅葉の森の散策を楽しんでいると、突然視界が開け、別空間のような場所に出ました。何だろうと思い辺りを見回すと、山頂標を見つけます。
見慣れない漢字です。読みは榧ノ尾山(かやのおやま)だそうで。いわれても全く山頂感がありませんが、ここも山のてっぺんなんですね…
ここで数名のパーティーとすれ違いました。ほっ、やっぱりハイカーさんいるじゃないですか。
榧ノ尾山から再び紅葉の森へ入ると、まるで視界全てが絵画作品のような錯覚…は言い過ぎですが、本当に素晴らしい景色です。山全体が美術館ですねこれは。
どこを切り取っても眩しく鮮やか、オレンジ色は人を元気にさせる色なんだなぁと改めて認識します。下り一辺倒なのにテンションは急登、なんですかここは天国ですか。
牛ノ寝通りはいいところだ!みんな早く登ってこーーーい!!
思わず、『∀ガンダム』の主人公のようなセリフを叫んでしまいます。しかも、この幸せなトレイルの最後には温泉が待っているのですから、にくいね牛ノ寝!
ふと時計を見てみると、なんと小屋平から登り始めてまだ2時間も経っていません。こんな手軽にアプローチできる紅葉の山があっていいの…!?
どこまでも、紅葉。そんなキャッチコピーが似合いそうなトレイル。なんだか目がチカチカしてきました(笑)。
まさに金色の森。いくら褒めても、即座に倍ダメージのカウンターを決めてくる。そんな山です牛ノ寝通りは。もはや笑うしかありません。
ずっと一本道だった牛ノ寝通りも、終盤に差し掛かるといくつかの分岐が出てきます。温泉のある小菅村へ直接の下山や、鶴寝山(つるねやま)方面へ向かうことも可能です。
ぼくはこの日の最終ピークとして大マテイ山(おおまていやま)を目指します。久しぶりの登りに足も驚きを隠せません。
大マテイ山に辿り着きました。紅葉の天幕が張られた山頂は、ベンチもあり絶好の休憩適地。ここで休まないでどこで休むんだー!といわんばかり。
ところで気になる山名ですが、調べてみると「マテイ」は「惑う」が転訛したものだとか。「大惑い山」ということですかね。今では道標や地図、YAMAPなどのアプリがあるからアレですが、確かにこの付近は迷いそうな雰囲気がありますね…
大マテイ山からはいったん下ります。見上げるとまたしても素晴らしい紅葉が。
押し寄せる紅葉の波。ちょっと最高過ぎて何が何だか。
大マテイ山から先の分岐で、いよいよ小菅村に下山します。道標にはトチの巨樹とわさび田と書かれていますが、まだ見どころあるんですかウソでしょ…
巨樹の道と多摩源流の温泉で締めくくる
道中にトチの巨樹があるというルートで下山スタート。紅葉は見納めかと思いましたが、まだしばらくは終わらなさそう。
幅の狭いトラバース道を進むと、風格のある巨樹が見えてきました。
デカァァァァァいッ説明不要!!
間違いなくアレですね、トチの巨樹。根本付近には巨大なコブを抱えています。それにしてもデカすぎる。
なのに、ちょっと進んだ先に負けず劣らずの巨樹がもう一本ありました!角度もそっくりで、もしかして双子さんかしら?
先の分岐点から20分ほどで紅葉の森も終わりです。普通の山でしたら名残惜しいというところですが、牛ノ寝通りでは気軽にキャパを超えてきますので、むしろホッとしたというか(笑)。
どんどん標高を下げていくと、沢沿いの道に出ました。ちょっと道が荒れていたので慎重に進みます。
途中でわさび田も。清流が心地よさそうなワサビは、小菅村の名産の一つですよね。ゴールにある道の駅でお土産に買いたくなります。
最後は林道を歩いて山村へ出ます。ゴールまではもう少し!
「道の駅 こすげ」に辿り着きましたー!ここにはトロトロの温泉のほか、清流に育まれた絶品が勢ぞろいしています。先のワサビもそうですが、ぼくのイチ押しはやはり…
ヤマメですよね。ヤマメの塩焼き。これを食べないでこの道の駅を去ることはできません。
というのも、小菅村は民間で初めてヤマメの人工ふ化、養殖に成功したといわれており、ヤマメ焼き名人も多いことから「日本一のヤマメ」と謳われているそうです。
「炭火でじっくり焼いてるから…かな?」と屋台のお姉さんは謙遜しますが、とんでもなく美味しいですよこのヤマメは。ぜひ頭から尻尾まで食べて味わいつくしてほしいです。
お腹を幸せで満たしたら、最後はここまで歩いてきてくれた体を癒やしにドボン。小菅の湯は2回目の利用ですが、もう最高です…!前回は急いでいたのでしっかり浸かれなかったのですが、今回はもう言うことなし。幸せが過ぎます。
下山&温泉後のペプシをブチ込み、魂の咆哮。まさに気分はペプシマンです。シュワ―!!!
帰りの駅まで旅の余韻に浸りながらウトウトと…
小菅の湯からバス利用で駅へ向かう場合、奥多摩駅か山梨の大月駅かの二通り便があります。今回は奥多摩駅へ向かい、帰途へ。大満足の旅となりました。
牛ノ寝通りの山旅、終わりに
以前より気になっていた牛ノ寝通り。期待を果てしなく上回る素晴らしいトレイルでした。歩くなら絶対紅葉と決めていたので、天気や見頃がぴったりはまってくれて最高でした。
お手軽アプローチでこの圧倒的紅葉というのは、関東ではかなりのハイレベルではないでしょうか。また、健脚なら大菩薩嶺からつなげることも可能ですし、もちろんこの牛ノ寝だけでも百名山級の素晴らしさです。
久しぶりのソロ登山でしたが、無事に終わってなにより。たろう&じろうの良い写真も撮れたし、個人的2021年のベスト登山は牛ノ寝通りに決まりです。
次はどの山に行こうかな。