栃木県は物語をいだく低山の宝庫。といったら大げさでしょうか。
都心からアクセスも良いため、南栃木への観光の回数を重ねるごとに、新しい発見や面白い低山との出会いに驚かされます。
11月下旬、紅葉狩りを狙って訪れたのは、栃木県佐野市にある唐沢山(からさわやま)。花や紅葉の名所であるほかにも、戦国時代には激戦が繰り広げられた地で、関東最大規模の山城としての名残がそこここに見られます。
東北自動車道を使ってお手軽に家族ハイキング、もしくは千年の古城跡を巡るディープな旅も楽しめる唐沢山へ。
どうも、スラ男です。
今回は、栃木県佐野市にある唐沢山に家族でハイキングしてきた時のお話です。
車を利用すればアプローチが簡単なので、小さな子ども連れでも安心して楽しむことができます。
秋の唐沢山は、なんといっても歴史ある唐沢山城跡と紅葉のセットが見どころです。1000年も前に藤原秀郷が築いたとされる山城を見学し、往時に思いを馳せるもよし、軽いハイキングで自然を満喫するもよし。下山後にはもちろん、名物の佐野ラーメンは欠かせません。
■唐沢山(2020年11月29日) 目次
秋の唐沢山へ、城跡ハイキング
東京方面から東北自動車道を走っていると、栃木県に入って最初に見えてくる山が佐野市の三毳山(みかもやま)。三毳山は山腹に大きな公園が整備され、山麓には観光農園や道の駅などが充実する、山一帯からなる都市公園です。
そこから北西すぐ近くに唐沢山はあります。華やかなみかも山公園と比べるとやや渋めの山ですが、実は映画やドラマのロケ地としても知られています。大ヒットした実写映画『るろうに剣心』シリーズの撮影も行われたそう。
唐沢山西側の駐車場からスタートすると、すぐに直角に曲がった入口に入ります。これはくい違い虎口といい、攻めてくる敵が直進できないようにした、防御の役割があるといいます。
さらに、階段をひと登りすれば「大険山」と例えられる天狗岩もあります。唐沢山随一の眺望を誇る箇所だそうで、ここはぜひとも登っておきたいところ。
階段の先は大きな岩の足場になっていて、ここから眼下はもちろん、広く周囲を見渡すことができました。戦国時代、この展望台の真下を通る侵入者に対しても十分に「見張り」の役目を果たせそうです。
天狗岩から先ほどの虎口に戻り、お次に見えてきたのは大きな池。大炊井戸(おおいのいど)、もしくは大井とも呼ばれる井戸で、戦時には重要なライフラインでした。
案内板に「現在まで涸れずに豊かな水をたたえている」と書かれていることからも、堅固な山城の防衛機能の一角を担っていたことがわかります。
そんな井戸も、現代では観賞用のコイが優雅に泳いでいました。井戸を覗くと、すいすいと隊列を乱さずに近づいてきます。残念ながらエサはないし、与えていいかもわかりませんが。
井戸の先にかかる神橋を渡れば、城へと続く大手道です。神橋はかつては曳橋で、敵襲に合わせて深い堀切となり、侵入者を阻む役割を担っていました。
そういった戦国期の防衛機構が張り巡らされた山城を、こんなにのんきに歩いているのがなんとも不思議な気持ちです。
ネコ好きにはたまらない?ネコだらけの山
本丸に続く大手道の階段で、こんな足跡を見つけました。
山中で動物の痕跡を追って生態などを調査することをアニマルトラッキングといいますが、ここ唐沢山ではこの足跡の犯人を捜すのは容易です。
そう、ネコです。駐車場から大手道までの道中、いたるところでネコがくつろいでいるのです。唐沢山はネコ好きの間ではよく知られている場所だそうで、ネコカフェよりもネコ感を味わえるとか。
それにしても、どうして唐沢山にはこんなにネコが集まっているのでしょうか?
実は、これらのネコのほとんどが飼いネコか地域に住んでいるネコだそうです。神社やボランティアら有志の手で適切に管理されており、今日癒やしのスポットとして賑わっているようです。
しかしながら、境内の張り紙にもありましたが、一部ではネコの連れ去りなども発生しているとのこと。その内容を理解した息子も悲しそうな顔をしていました。なんとか良い方向に収束してくれることを願います。
藤原秀郷と佐野氏の物語を訪ねる
唐沢山城跡めぐりも、いよいよ本丸に近づいてきました。現在では本丸のあった場所には、この大規模な山城を築いたとされる藤原秀郷(ふじわらのひでさと)をお祀りする、唐澤山神社のご本殿が建っています。
秀郷といえば、天慶の乱で平将門(たいらのまさかど)を成敗したエピソードが思い起こされます。
秩父の城峯山や奥多摩の雲取山近辺でも同様のエピソードが伝わっており、関東に広く知られた秀郷の英雄譚を感じることができます。
また、写真の奉納された絵の元となったムカデ退治の伝説も有名です。大矢でムカデを討ち、嵐を鎮めた御礼として龍神様から「避来矢(ひらいし)」という大鎧が授けられました。
神橋手前から左に折れた先にある避来矢山(ひらいしやま)は、そんな秀郷の伝説から名づけられたといいます。山頂に建てられた霊廟には、唐澤山神社に功績のあった人々をお祀りしているとのこと。
ちなみに、伝説にあった避来矢の鎧は、後にこの地を統治した佐野氏(秀郷の末裔である藤姓足利氏の一派)に伝えられています。
佐野氏はその後、鎌倉時代に源頼朝の御家人となり活躍し、戦国期には上杉や後北条氏らとも戦い、400年以上もこの地の領主であり続けました。その側面には、難攻不落の唐沢山城の存在が欠かせません。
山の地形を最大限に活かして城を整備し、さらには当時の最新技術を用いて高さ8mを超える高石垣を築きあげました。その築城技術は、西日本からもたらされたものです。これは、佐野氏が豊臣秀吉と密接な関係のあったためと考えられているとのこと。
それにしても、間近で見ると実に迫力のある石垣です。こうして秀郷が築き、佐野家が守ってきた歴史ある山城は、国指定史跡となり、さらには関東七名城にも名を連ねる名城として今日語り継がれているのです。
ところで、“御城印”なるものをご存じでしょうか?
唐澤山神社では御朱印ももちろんいただけますが、御城印もあるのでぜひいただきたいところです。ちなみに、御城印は城に登った記念スタンプのようなものなので、御朱印とは混同しないよう注意が必要です。
唐沢山城跡を丸ごと楽しむにはまだまだですが、今回はこの辺でひと区切り。来た道を駐車場まで戻るだけなのですが、子どもたちが途中のネコスポットから離れられず、下山は意外にも時間がかかりました(笑)
そういえば、息子スラ坊は相変わらずですが、今回から娘のスラりんがハイキングに参加できるようになり、非日常を全力で楽しんでくれました。「おやま、またこんどいこうねー!」と、なぜか野太い声で念を押されます(笑)
軽ハイキングの後は、佐野といったらの佐野ラーメンが食べたいですよね。唐沢山から車で10分ほどのところにあるこちら、麺や大山さん。
お腹が減っていたので、よくばりのチャーシュー麵!佐野ラーメンはなんといっても麺が美味しいのですが、チャーシューも美味。そしてモチモチの餃子も美味!つまり、全てが美味しい!!完璧です。
お手軽なハイキングと美味しいグルメがそろう南栃木。今後も家族ハイキングの計画を立てて訪れたいところです。
唐沢山の親子ハイキング、終わりに
唐澤山はずっと行きたかった山でもあるので、今回訪れることができて非常に満足度が高いものになりました。一人で城跡巡りもいいですが、ネコたちに癒やされながら、家族での紅葉狩りもまた味わい深いものですね。
佐野近辺の低山は、また季節ごとに趣旨を変えて訪れたいので、今後も目が離せません。まずは紅葉の唐沢山城跡めぐり、最高でした。
次の山旅はどこに行こうかなぁ。