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なまけたろうと登山ブログ

【山梨】大菩薩嶺 旬のモモを探して、苔生す大菩薩の森

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夏山シーズンがやってくると、もっぱら低山歩きのぼくもちょっと標高を上げて、突き抜けるような青空、果てしなく続く稜線、高山でしか見られないような特別な風景に思いを馳せます。

実は、この夏どうしても行きたかった山がありまして、それが山梨県にある日本百名山大菩薩嶺(だいぼさつれい)。初心者向けガイドブックでもしばしば目にし、日本百名山、2,000m超え、迫力のある稜線、そしてアクセスも簡単とその魅力は枚挙に暇がありません。

今回は、そんな人気の百名山に歴史とフルーツと青々とした森歩きを加えて、夏山を満喫してきた時のお話です。

 

 

どうも、スラ男です。

 

初めてこの「大菩薩嶺」という山の名前を知った時、あまりにも格好いい山の名前に痺れました。いよいよ登れる時がきた!と思うと、計画中は楽しみで仕方ありません。

その山名由来の一つに、平安後期の武将・源義光が軍神の加護に感謝し「おお八幡大菩薩」と唱えたというエピソードがあります。そのほかにもいくつかの由来があるようですが、ぼくはこの戦国ロマンが香る説が素敵だなぁと思います。

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しかし、そんな格好いい名前の山頂標が立つ場所は、展望のない樹林帯の中。そのせいか、山頂より少し下にある大菩薩峠のほうが展望にも優れ、山小屋もあることから人気のようです。

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そして、山登りのほかにももう一つ楽しみが。フルーツ王国・山梨の旬の果物、モモを見逃すわけにはいきません。

山梨県はモモの生産量日本一で、大月市には桃太郎伝説が残っております。また、笛吹市ハナモモの郷として一面がピンクに染まる風景が美しく、まさに山梨はモモ王国と言っても過言ではないでしょう。

ということで、初めての大菩薩嶺を舞台に今が旬のモモを求めて、下山後の楽しみである桃の生ジュースが待ちきれない山旅が始まるわけです。

 

大菩薩嶺(2019年8月11日) 目次

 

苔生す美しい森、丸川峠コース

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大菩薩嶺の魅力の一つに、アクセスのしやすさというものが挙げられます。都心から中央線で一本、登山口は甲斐大和駅もしくは塩山駅から出ているバスで、これもまた一本。途中乗り換えや乗り継ぎはありません。

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初心者向けの日帰り登山”ということであれば、大菩薩嶺へのアプローチはここ塩山駅ではなく、甲斐大和駅が一般的です。

というのも、甲斐大和駅から出ている栄和交通のバスに乗れば、一気に標高1,585mの上日川峠(かみにっかわとうげ)まで連れて行ってくれるのです。上日川峠を起点とした大菩薩嶺の登山なら標高差は500mほどとなり、またコース上に山小屋が点在しているので安心感もあります。

一方、塩山駅から向かう先の大菩薩峠登山口は標高約900m。展望の利かない樹林帯で、標高差1,100mを3時間強かけて登り続けるこちらのコースは明らかに初心者向けではありませんので注意が必要です。

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ぼくが今回こちらのルートを選んだのには、大菩薩嶺の南北で分かれる森の違いを楽しむためと、ルート上にあるお茶屋さんへどうしても行きたかったから。そして、上日川峠へのバス運賃よりもこちらのバスのほうが遥かに安いというのも魅力的でした。その分、時間と体力を消費しますが…

バスに30分ほど揺られた先には、登山後の休憩に最適な番屋茶屋さんがあります。こちらのよもぎだんごが美味しいとのことで、またの機会に立ち寄りたいですね。

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登山口からしばらくは車道歩きです。左手にあるお寺に吸い込まれそうになりますが、がまんがまん。坂道をゆっくりと登っていきます。

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今度は右手側に「もも」ののぼりが現れます。バスの車窓からもモモが実っている畑を見かけました。これも下山後のお楽しみなのでがまんです。

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20分ほど歩くと、丸川峠入口にたどり着きます。そのまま車道方面へ歩いていくと上日川峠に合流しますが、そちらは帰り道に使う予定です。

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駐車場から先は、一気に緑に抱かれた山の中。どこか涼しさを感じるなと思ったら、近くに沢が見えました。

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つづら折りに坂を登っていき、沢の涼しさを感じなくなってきたところで道は一転しハードモードに。序盤はよかった。序盤は。

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ケタケタ笑う顔に見える木は、これから始まるミストサウナ登山をあざ笑っているかのよう。なにとぞご加護を八幡大菩薩

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基本登りっぱなしの丸川峠への道。ほしい、平坦な道がほしい…

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両手を大きく広げたブナの大木が迎えてくれますが、蒸し暑さに体力を奪われたぼくは喜ぶ元気もなく…通常の3倍くらい汗が流れ出ています。

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丸川峠登山口から1時間ほど登ってきたところで、とうとう霧の中へ。

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全行程の半分もいっていない段階でこの疲れ。しばし緑のパワーを注入…

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草原の広がる道に出たということは、これは丸川峠はもうすぐですね。木々のアーチをくぐり抜けたその先で見たものは…!?

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おお八幡大菩薩!!

 

 

先ほどまで濃霧に覆われていた森の中から一転、信じられない青空です。源義光じゃありませんが、ぼくにもご加護があって良かった。

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丸川峠には一軒の山小屋、丸川荘があります。美味しいコーヒーとランプの明かりが素敵な山小屋とのことなので、こういう静かなところで一泊するのも憧れます。

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丸川峠から先は、苔が目立つ森歩きとなります。ようやっと平坦な道が続くようになり、ぼくの調子も戻ってきました。ここでたろうをひとつまみ。

以前、山の中でたろうを撮っていたら「森の妖精みたい」と誰かに言われたことがあります。確かに妖精感ありますよね、たろう。

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いい感じに霧も発生し、苔の森の雰囲気が出てきました。しかし、頂上まではもうしばらくつづら折りの登りが続き、全身ズブ濡れと言っていいほどの汗が。

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大菩薩嶺北面の森は、やまなしの森林100選に「大菩薩稜線のコメツガ林」として選ばれております。また、下山コースである南面の森もまた「大菩薩のブナ林」として100選に名を連ねています。

この森歩きを楽しみにしていたのですが、この蒸し暑さはなかなかに厳しい。紅葉シーズンに来ればもっと爽やかに森歩きができると思います。

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コメツガ林を抜けた先、2つの山頂標が立つ大菩薩嶺、その山頂にたどり着きました。ここで休憩しているグループも数組おりましたが、ほとんどが記念撮影だけして引き返すという感じです。

ぼくもここでひと息入れた後、いよいよ大菩薩嶺のハイライトでもある稜線へ。

 

日本百名山大菩薩嶺の魅力的な稜線

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山頂から少し下ったところに好展望の雷岩という場所があるので、やはりみなさん休憩するならこちらでしょう。あいにく雲に覆われてはいますが、2,000mの空気感というのはしっかりと味わえます。

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遠望は利きませんが、柵で保護された高山植物が見えました。コウリンカというオレンジの花が群生しており見応えは抜群!

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登山道の脇では野生のシカがもそもそと草を食べています。Twitterで「大菩薩嶺でシカを見た」というのを見て、密かに期待していましたが…

こんなにあっさり会えるなんて。丹沢では未だに会えないのに(´;ω;`)

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雷岩で休憩していると、虫たちも賑やかです。アキアカネヒオドシチョウ。その場では種類がわからないので、写真を撮って後から調べます。ブレてたりすると、特徴が捉えられずわからないことも多くて…(^_^;)

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雷岩で体力を回復した後は、いよいよ稜線歩きです。雲の衣をまといながらどっしりと佇む稜線、この迫力をコース次第では手軽に味わえるというのだから、日本百名山大菩薩嶺の人気も納得です。

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丸川峠コースにはほとんど人がいなかったのに、雷岩からはずいぶんと賑やかになりました。中には軽装の外国人なども目立ちましたが、上日川峠からの周回コースの人気が伺えます。

また、この稜線は大菩薩峠のその先も続いており、小金沢大蔵高丸などの秀麗富嶽十二景に数えられる山々の縦走も可能です。ぼくも以前に小金沢山からハマイバ丸までの区間を歩きましたが、開放感溢れる最高の縦走でした。

 

小金沢山からハマイバ丸まで縦走

surao.hatenablog.com

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石が積み上げられた独特の景観の賽の河原を過ぎると、雲が少し取れて大菩薩湖がはっきりと見えるようになりました。

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この調子で晴れてくれるかな?という期待はさっそく消滅し、再び不穏な雲に覆われてしまいました。眼下に見えるところが大菩薩峠です。

ところで、大菩薩峠は長編時代小説『大菩薩峠』の舞台として描かれたことで一躍有名になったと言います。さすがに全部を読むことは難しく、序盤だけ読んでみましたがぐいぐいと物語に惹き込まれてしまいました。

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小説の主人公である剣士・机竜之助は、物語の冒頭、この峠で出会った老人を理由もなく斬り殺してしまいます。あまりにも呆気なく、また独善的な理由で人斬りを行う机竜之介の人物像は、後の作品のニヒルな剣士の原型となったと言われているそうです。

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小説の著者、中里介山(なかざと かいざん)さんの名を冠する介山荘売店では小さなお子さんが親切丁寧な対応をされていて驚きました。このホスピタリティに加え、目の前には絶景が広がっているというのですから一度来たら虜になってしまいますよね。今度は快晴で。

 

美しいブナ林と、お待ちかねの桃の生ジュース

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さて、大菩薩峠からは山小屋の点在するコースで下山していきます。平坦な坂道を歩き続けることの嬉しさ半分、物足りなさも半分。

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途中にある勝縁荘と富士見山荘は現在休業中のようでしたが、福ちゃん荘はバリバリに営業中です。表にある囲炉裏で焼くというイワナの塩焼きに思わずよだれが。しかしどれも美味しそうだぞ…

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店頭でモモが冷えていました!しかも安い!お店のお父さんが「これが美味しいよ」と選んでくださり、それを一つ購入します。

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山梨のモモというだけで美味しそうなのに、さらに下山後という調味料を加えたモモのお味やいかに…?

 

 

ぞぶ…ショム…ショプ…

 

 

染みる~~~!美味しい!丸かじりというのがまた良い!

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休憩を終えた後は、上日川峠を目指して登山道へ。すぐ隣の車道を歩いてもほとんど同じ時間だそうですが、ぼくはなるべく土を踏んでいたい。

ブナやミズナラの森を歩いていくと、赤い屋根のロッヂ長兵衛が見えました。こちらもまた人気の山小屋のようで、いつか宿泊してみたいところです。

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ほとんどの人がロッヂ長兵衛のある上日川峠からバスに乗っています。このままバスに乗って、途中にある名湯・やまと天目山温泉に浸かるのも一つですが、ぼくはここから丸川峠の登山口まで戻るのです。

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ロッヂ長兵衛の奥に続く車道脇の登山道へ入っていくと、心地よい森歩きが始まりました。今日はこればかりですが、これが目的ですから。

さっそく現れたのは、ミズナラの巨木。まるでこの森の主のよう。

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そしてミズナラに混じり、次々とまだら模様が特徴のブナが出てきました。ここがやまなしの森林100選の一つ、大菩薩の…ん???

 

 

大菩薩のフナ林??

 

 

ブの濁点だけ消えてしまったんですね。フナ林。

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まっすぐと伸びた姿勢の良いブナが多く目立ちますが、ずんぐりとした巨木もありました。こんなに見応えのある森なのに、ここですれ違ったのはたった一人だけ。おかげで静かな森歩きが楽しめました。

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45分歩いたところで、お目当てのお茶屋さんにたどり着きました。何がお目当てかというと、のぼりにもある桃の生ジュース

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ここは千石茶屋というお店で、土日祝限定で営業しています。ところどころにある手作りの可愛い看板や、きれいな外観も素敵なものですが、こちらのお店の魅力はそれだけではありません。

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まずは大本命の桃の生ジュースから。桃を2~3個まるごと使っているということで、飲んでみるとまろやかな口当たりとしつこくない甘み、そしてとろけるようなモモの美味しさが体に染み渡ります。

登山の後に飲む物としては、間違いなく最高レベルの美味しさだと思います。

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モモのジュースのほかにも、手作りのみたらし団子や軽食などが人気です。ぼくはみたらし団子を注文して、お店の目の前の渓流を眺めながら舌鼓。

そして何が一番驚くかというと、これらのメニューの価格の安さです。登山者応援価格ということですが、本当にありがたい限りです。

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旬のモモを堪能した後は、本日の山旅を締めくくる温泉が待っています。大菩薩嶺の下山後に最適な温泉は、甲斐大和駅方面ならやまと天目山温泉が、塩山駅方面なら大菩薩の湯があります。

ぼくは塩山駅前にある塩山温泉に行こうと考えていたのですが、バスの時間がうまく合わずに断念。序盤の蒸し暑さにやられて大幅にタイムロスしたのが痛手となりました。やはり体がなまっていたようです。

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大菩薩峠登山口のバス停からも歩いてほど近いこちら、大菩薩の湯へやってきました。(pH)10以上の高アルカリ温泉が魅力の日帰り温泉施設ですが、面白いのは内湯にある源泉風呂です。源泉の温度は28℃くらいだったと思いますが、これがぬる冷たくて気持ち良い~。

ただ、ぬるすべの源泉風呂と内湯は良かったのですが、ぼくは塩素臭が苦手なので、展望のある露店風呂の塩素臭がちょっとキツめでした。それだけ清潔に徹底しているということなので、素晴らしいことですが。

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帰りのバスを迎え撃って、今朝ぶりの塩山駅へ。今回行けなかった塩山温泉も気になるところだし、いつか乾徳山、そしてまた西沢渓谷へも行きたいので近いうちにまた塩山に来ることになるでしょう。

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特急スーパーあずさを見送って、鈍行の中央線を待ちます。公共交通機関を利用した山旅では、この塩山より先へは行ったことがありません。いつかアルプス、いやその前に八ヶ岳…来年の夏こそは。

 

大菩薩嶺の山旅、終わりに

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深田久弥さんは著書である『日本百名山』の中で次のように述べています。

 

大菩薩峠が大勢の人に親しまれるようになったのは、その名前の文学的魅力だけではない。初心者にとってまことに恰好な山だからである。東京から日帰りができるし、いろいろ変化のある安全なコースが開かれているし、展望はすばらしく雄大だし、それに二千米の高さの空気を吸うことができる。

引用:新潮文庫 日本百名山 深田久弥

 

まさにその通りで、雷岩から大菩薩峠にかけての稜線歩き、山小屋の充実度、そしてアプローチの簡単さと、大菩薩嶺の魅力が深田さんの文章にぎゅっと詰め込まれています。

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今回は北面と南面の森歩きを優先した結果、稜線からの展望は濃霧に包まれお預けとなりましたが、それを得なくても余りある充実さを感じています。次にまた森歩きをするなら、ぜひ紅葉期を狙いたいところですね。

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そして、丸川峠登山口から登る方は、千石茶屋さんの桃の生ジュースが絶品なのでぜひおすすめです。この記事を書いていたらまた飲みたくなってしまいました。

 

さあ、次はどこへ行こうかなぁ。

 

 

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■涼しい山旅なら日光も

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