展望の利く冬の間に、どうしても行きたかった里山があります。それが、東京都青梅市にある「赤ぼっこ」という変わった名前の山です。
3月の青梅市というとちょうど梅まつりの時季ですので、ぜひとも山旅に絡めていきたいところ。赤ぼっこの周回コースタイムも短めなので、息子スラ坊を連れての親子ハイキングにぴったりです。
今回は、青梅の梅まつりと予想以上の大展望、そして意外な山の案内人と出会う赤ぼっこをハイキングしてきた時のお話です。
どうも、スラ男です。
Twitterやヤマレコなど、ネットを通して山の情報を仕入れる方は多いと思います。今回訪れた赤ぼっこは、昭文社の「山と高原地図」では目立たない山でしたが、「大展望の素晴らしい山」としてTwitterで教えていただいた場所でした。
さらに、赤ぼっこには展望以外にもある面白いものがあるそうなので、これは子どもと一緒に行けば喜ぶのでは?ということで下調べを始めました。
ということで、冬の時季ならではの展望と山頂でのサプライズ、下山後には季節の梅と温泉で締めくくる山旅が始まるわけです。
■赤ぼっこ(2019年3月2日) 目次
中央線から青梅線、オレンジの電車に乗って青梅市へ
JR中央線というと、東京から山梨を経て長野まで続いてる路線なので、多くの登山者が利用する電車…というイメージがあります。ぼくはあまり遠出をしないので長野までは行ったことがなく、中央線の利用も多くはありません。行きたいのはやまやまなのですが。
スラ坊は以前から中央線に乗りたがっていたので、こうやって機会が訪れたことに感謝ですね。すっかり乗り鉄親子です(笑)
奥多摩方面へ向かう電車で休日の新宿発となれば「ホリデー快速」が便利です。しかし、今回は発時間に間に合いそうもなかったので、快速を見送って立川駅で青梅線に乗り換えます。※写真は青梅駅です。
この青梅線も中央線と同じオレンジのカラーリングのため、「ちゅうおうせん!」と息子は叫んでいました。ちなみにこの青梅線、青梅駅から奥多摩駅の区間に「東京アドベンチャーライン」という愛称がつけられたそう。
さて、今回の山旅はここ、宮ノ平駅から始まります。奥多摩方面に行く際にいつも見送る駅でしたが、今回初めて降り立ちました。
北へ下りれば青梅丘陵にも繋がりますが、反対方向の国道411号沿いに出ます。駅前にある円柱型のポストがレトロ感があっていいですねえ。
もともと赤ぼっこは1月あたりに行こうと考えていたのですが、3月までずらして良かったなと思います。青空に可憐な梅の花がよく映えますね。
駅から登山口までは徒歩30分ほどの距離がありますが、路線バスが登山口近くまで出ているようです。ぼくは息子とじゃれ合いながら徒歩で向かいました。
橋の途中から山を見上げると、中央にポツンと一本、木が孤立しているのがわかります。おそらくあれが赤ぼっこの山頂ではないでしょうか?
和田橋を渡って左折し、住宅地を抜けた先の交差点の向こうに登山口が見えました。この辺りもクマ出没の情報があるようですので、熊鈴のご用意を。
しかし、熊が出るから!と神経質になると子どもが怖がってしまいますので、やんわりと説明してあげました。
登山口からしばらくはしっとりした林道歩きが続きます。しーんとした針葉樹林の中を歩くのは息子にとっては怖かったらしく、これは反省です。
もちろん無言で歩いているわけではないのですが、高尾山のように賑やかな山と比べると、確かにひと気がなくて怖いか(; ・`ω・´)
「おかあさんにあいたい…(´・ω・`)」としょんぼりするスラ坊。ケルンを積ませたりしてごまかしますが、依然ひと気ない赤ぼっこ。頑張ってくれスラ坊!一発逆転のアイテムがこの先にあるんだぁぁ!!
赤ぼっこの案内人?まっくろくろすけ
急坂を登り終え、馬引沢峠にたどり着きました。ここからは登山道がフェンスに圧迫されますが、道も明るくなり湿気も影を潜めます。
スラ坊もそれがわかったのか、「かんばん!」と道標へ駆けていきました。
「あ…!(*´∀`*)」
気づいちゃった?お待ちかねのアイテムだよ。ここ赤ぼっこには、道標の近くに某有名映画のまっくろくろすけ風に描かれた石がいくつも置いてあるのです。
誰が何の目的で設置したのか、それはわからないままにしておきたいものです。おかげでスラ坊は笑顔になり、ぼくもほっこりしました。この先も赤ぼっこの楽しみとして残っていてほしいですね。
道標があれば、かなり離れた位置にも関わらず「まっくろくろすけいた!」と息子が教えてくれます。よく見えるなあ…もしかして日向一族?
山頂が近づいてきたのがわかると、早く行きたいのかすごい勢いで最初の数段を登り「…だっこ!(・o・)」と、見掛け倒しのスラ坊。歩け!(; ・`言・´)
そして見えてきたのが、大展望の赤ぼっこ山頂です。これには二人して「うわあ…!」と目を輝かせてしまいました。素晴らしい展望です。
特にこのポツンと佇む木が絵になります。どうして一本だけ?どうしてこんなに開けているの?そんな詮索すら野暮ったいほど、この展望は魅力的です。
赤ぼっこという変わった名前は、山頂にある案内板によれば、関東大震災の際にこの付近が崩落し、露出した赤土が由来だそうです。標高にすれば409.5mと低山に分類されますが、この眺めは非常に満足度の高いものでしょう。
親切丁寧に、山頂には山座同定のための看板もあります。筑波山や日光方面も見渡せますが、さすがに3月ではそこまでは見えず。
また、山頂標にはトトロのポストが設置されており、その根本にはまっくろくろすけたちがうじゃうじゃと集まっています。たくさんあって息子も嬉しそうです。ぼくと同じで並べるのが好きでな…(´・ω・`)
大展望の赤ぼっこ山頂には数名の先客がおりましたが、山頂は広く、ベンチも設置されているので休憩するにも最適です。ぼくらもここでお昼休憩です。今回はいつものカップ麺ではなく、おにぎり弁当を用意してきました。
…これです。まっくろくろすけ風のおにぎり。
スラ坊はフタを開けると、少しニヤリとして近くにいたシニアグループに報告しに行きます。や、やめてー!恥ずかしいから(;´Д`)
大展望の赤ぼっこから、梅まつりの吉野梅郷へ
お昼休憩を終えて、いよいよ梅の公園方面への下山です。すれ違ったおじいさんたちに「こっからが長いよ~!」と教えてもらいましたので、気を抜かずに歩いていきたいですね。
途中、天狗岩という見晴らし台への分岐があり、大きな登り返しが堪えますが立ち寄ってみましょう。
天狗岩では大人数のグループが休憩していたので、展望をちょろっと見た後来た道を引き返します。
木の間から覗いた一本の木は、先ほどまでいた赤ぼっこですね。
緩やかな坂道が連続する樹林帯をしばらく歩いていくと、大きく伐採された場所にたどり着きました。伐採のおかげで展望が~…というのではありません。
なお、赤ぼっこから続く要害山までは、しばらくの間まっくろくろすけはお休みでした。スラ坊も寂しそう。
道標のあるこの場所、分かりづらいですが足元にある赤い杭が要害山の山頂標になっています。さらに、手作りのプレートが取り付けられていました。
要害山から急坂を下り、15分ほど歩いた先でまっくろくろすけと再会。道標右の梅ヶ谷峠へは、「行止り」とありますが、手書きで15分と書き加えられています。これはこの先の愛宕山までの時間でしょう。他の方のレポートによれば、愛宕山ではソメイヨシノが見られるようです。
ぼくたちは梅の公園を目指して、急勾配の下り坂を設置されたロープを使いながら下っていきます。まっくろくろすけはいるのかな?と、道標を見つけては息子と一緒にワクワクしてしまいます。こんなに道標が楽しみな山旅は初めてです。
ところでこの分岐…一見すると右の尾根に進んでしまいそうですが、注視すると枝による通行止めの措置がとられています。倒木がありますが、道標の指し示す通り左側へ下るのが正解のルートです。
倒木のトンネルをくぐったり、藪の中をかき分ける息子の背中はいつもより少しだけたくましく見えました。なおこの後抱っこマン。
林道を抜けると車道に出ますので、後は住宅地を縫って梅の公園を目指します。ここから公園までは800mほどの距離です。スラ坊、もう少し頑張って!
未来へつなぐ梅の名所、吉野梅郷のこれから
青梅の吉野梅郷といえば、関東でも有数の梅の名所として知られています。毎年2月下旬から3月下旬まで梅まつりが開催され、中でも120種類、約1500本もの梅が咲き乱れる梅の公園は、毎年多くの人を集めていたようです。
しかし、今から10年前の2009年に、吉野梅郷は日本で初めてウメ輪紋ウイルスに感染されたことが確認され、これにより上の写真の素晴らしい梅の木は全て伐採を余儀なくされました。
伐採後、再植栽をするためには、ウイルスの感染拡大を防いでいることが認められた場合のみ、再植栽の可否判断されるそう。その厳しい基準をクリアするべく地域と連携してウイルス対策に取り組んだ結果、2016年に一部の地域で再植栽が可能となったということです。
写真を見てもわかるとおり、再植栽された梅の木たちはまだまだ小さく、以前のような姿に戻るにはもう少し先のことだそうです。
けれども、こうして苦難を乗り越えた名所が復活し、未来へ向けて新たなスタートを切ったということは、喜ばしいことこの上ありません。
ちなみに、スラ坊は3歳なので梅の木と同い年。スラ坊が大人になる頃、もう一度見に来たいですねえ。
3月上旬ではロウバイが見頃を迎えておりました。広い園内を駆け回るだけでも面白く、ほかにもスイセンなど春の花めぐりを楽しみました。
梅の公園の散策後は、公園の近くにあるお茶屋さんでアイス休憩をば。ポカポカ陽気なので、ソフトクリームも美味しいです。
さあ後は帰るだけです…が、ハイキングの後はできるなら温泉に浸かりたいものです。スラ坊も温泉を楽しみにしてくれているので、青梅線河辺駅で途中下車。
駅前にある「河辺温泉 梅の湯」は、ハイキング後の温泉としてオススメですが、名前に梅が入りますから観梅後にもぴったり。
温泉はきれいで設備も充実しており、特に露天にある源泉かけ流しのひのき湯は熱めのトロリとしたお湯で、疲れた体に染み入ります。スラ坊は岩風呂がお気に入りで、やはり岩にお湯をかけてあげてました(笑)
ハイキング、観梅、そして温泉と山旅を締めくくり、帰りもまた中央線で。
今回もスラ坊は電車でぐっすり。新宿まで一時間ほど湯たんぽを抱えているようでした…(; ・`ω・´)
赤ぼっこの親子ハイキング、終わりに
展望とまっくろくろすけなどの小物が素晴らしい、青梅の里山・赤ぼっこ。
序盤のひと気なさにどうなるかと思いましたが、期待以上のハイキングを楽しむことができました。ここを訪れるのであれば、ぜひ快晴の日をオススメします。
季節を合わせれば、麓にある吉野梅郷もセットで楽しむことができます。ただ、吉野梅郷はまだ再生の途中ですので、これから未来に向けて大きく美しく育ってほしいですね。
さあ、次はどこに行こうかなぁ。