猛暑がまだまだ続く8月、少しでも涼しさを感じる山へ行きたい!低山歩きが主なぼくにとって、涼しさ=水辺なので、水量の豊富な山はどこかな~と探していました。
そこで思いついたのが、山梨県大月市にある滝子山(たきごやま)。その名の通り大小様々な滝が点在しており、沢沿いを歩けば涼しい山歩き間違いなし!さらに、近くには竜門峡(りゅうもんきょう)という名所もあるといいます。
納涼!滝めぐりのスプラッシュ・マウンテン。
どうも、スラ男です。
登山の道中、見たい景色の一つに富士山が当てはまる方も多いのではないでしょうか?そこで山梨県大月市では「富士の眺めが日本一美しい街」と銘打ち、1992年に富士山の美しい姿が望める市内にある山々を秀麗富嶽十二景として定めています。今回ぼくが訪れた滝子山も、そのひとつに数えられています。
ということで、今回は真夏の滝子山から竜門峡へ、納涼の山旅へ行ってきた時のお話です。
■滝子山(2018年8月18日) 目次
- 駅から歩いていける山々、秀麗富嶽十二景
- 滝子山の核心部、モチガ滝とナメ滝
- 四番山頂、滝子山から望む富士山
- 大谷ヶ丸から延々続く天目林道へ
- 竜門峡と信玄の隠し湯、甲斐大和を訪ねて
- 滝子山の山旅、終わりに
駅から歩いていける山々、秀麗富嶽十二景
土曜日の朝、地元の始発電車からJR中央線に乗り換えて大月市を目指したのですが、夏山シーズン真っ盛りとあって車内は大混雑!途中の大月駅では富士山を目指すと思われる登山客もたくさん降りていきましたが、それでも混雑は緩和されないほどでした。
滝子山へは笹子駅からアプローチ。沢沿いを歩く道証地蔵登山口から登る場合はこの駅が起点となります。
駅舎内で登山届を提出して、まずは舗装路を小一時間ほど歩きます。この秀麗富嶽十二景というエリアのいいところの一つに、駅から歩いてアクセスできるという点が挙げられます。
しかし距離があったりもするので、人によっては「それは嫌」かもしれませんが、バス代を気にしなくていいのは個人的にはグッド。
大月市の道標といったらこのタイプ。
歩いていると、ハッピードリンクショップが現れました。山梨・長野県に点在する、通常の自動販売機よりも安く飲料が購入できるドライブインで、秀麗富嶽十二景に登っている方のレポートに頻出する風景でもあります。
前を歩くおばちゃんハイカーの目的地も同じく滝子山だったので、おしゃべりしながらの道中となりました。
「前に滝子山の南陵を歩いたんだけど、道が数年前とすっかり変わっちゃった」とおばちゃんの体験談から、ここ近年での秀麗富嶽十二景の整備が伺えました。この秀麗富嶽十二景エリアについて、細かくレポートしている登山ブロガーさんもいらっしゃいますし、そういった方々の普及活動が利いているのでは?と思います。
ところで滝子山南陵といえば、寂ショウ尾根と呼ばれる滑落事故も多いワイルドなコースと聞きます。しかし、もっぱら単独、そして楽しいコースが好きだというおばちゃんは、日本百名山から三百名山、そしてご当地百名山などもほぼ歩き尽くしたという、寂ショウ尾根よりもワイルドなハイカーだったのです!
そんな大先輩の冒険譚に胸をときめかせながら、道証地蔵の前まであっという間の道中でした。
おばちゃんはこの先を行くとのことなので、ここでお別れです。楽しいお話をありがとうございました。さあ、この道証地蔵が登山口となる、ズミ沢沿いのコースを進んでいきますよ~。
このコースはしばらく沢沿いを歩けるので、盛夏でも驚きの涼しさです。そもそもこの日は暑さが少し落ち着いた時だったので、むしろ肌寒く感じるくらいでした。
水のきれいなところは緑もきれいということで、登山口付近の風景だけで滝子山を好きになりました。
沢音をBGMに、緩やかな登りをのんびりと歩いていきます。道は緩やかですが、横幅がちょっと狭い。
ところで、以前にニュースで見たのですが、今年は暑い期間の長さから山中のキノコが大量発生しており、それによる毒キノコの食中毒の増加が懸念されているとか。
山のキノコは、それこそお花感覚で捉えています。かわいいものから不気味なものまで、キノコの世界は奥深いですよね…
手書きの看板が取り付けられ、「もちがたきまであと30分」と読み取れます。しかしぼくは「10分」と読み間違えてしまい、地図を見てもこの先にあるモチガ滝までそんな早いわけないんだけどなぁ?とモヤモヤしてしまいます。
気分爽快な滝の流れはいつまでも見ていられそう。ここは地図上に記載のある三丈の滝です。
名前のない大小様々な滝が、次から次へと出てくるので本当に爽快です。 この日の水量だと間近に迫ることができ、ほぼ水の中からも滝を見ることができたりしました。
登山道の一部では荒れた箇所も。木がまとまって倒れており、ここの植物だけ周りよりも大きく育っていました。日当たりが良くなったせいかな?
可愛い手書き看板を発見しました。頑張りますよ!
いったん沢から離れるように登り、その先で分岐に差し掛かりました。どちらを進んでもその先で合流しますが、右側のルートでは例のモチガ滝を見ることができます。
しかし、そのルートは難路とあり、先達のメモによれば「崩れているが滝はよし」とのこと。あくまで個人的な感想ですが、滝子山の真髄はこの難路の先にこそあると思います。
滝子山の核心部、モチガ滝とナメ滝
さて、こちらのルートは難路というだけあって、道は岩めいてきてロープも登場します。滝を見ながら歩いていて、うっかり落っこちないように気を引き締めましょう。
眼下には大きな滝が流れており、これ全体がモチガ滝なのでしょうか。地図と照らし合わせるとこの辺りなのですが…看板がほしいぞ。
あ、このオレンジじみた赤い丸いものはタマゴタケ!
見るからに毒キノコに思えますが、このタマゴタケは食用の美味しいキノコなんですって。
毒キノコとして有名なベニテングタケも赤いため、このタマゴタケと間違って食べないように注意ですね。ベニテングタケはカサに白いイボがついているため、言うほど似てる?と思ってしまいますが、もしイボナシベニテングタケなんてキノコがあったとしたら…???
先へ進むと、大きな滝が見えました。これがモチガ滝でしょう。きっとそう。ここで小休憩がてら、滝に迫ってみます。
かなり水に近いところまで下りることができ、すごく涼しい!山旅はまだ始まったばかりなのですが、このルートだけでもかなり満足!
難路の看板に書いてあった「崩れてるよ」というのはこの辺りのことでしょう。地面が柔らかく砂地のようになっていました。油断すると滑落します。
地面から視線を上げると、目の前には大きな一枚岩の上を流れるナメ滝が!この滝もすごく見応えがあるのに名前はありません。
水量によっては真下まで迫ることもできます。なんかナメ滝って趣があっていいですね。
滝の上流は岩が敷き詰められたようになっており、むしろ歩けるんじゃないか?というくらい。
迫力の滝見を終えたら、そこから先はのんびりと沢沿いへ。この「のんびりと歩く」というのが滝子山にはピッタリの表現で、思い返せばしんどい登りはほとんどなく、緩やかな道を沢沿いにず~っと歩いているという感覚でした。
右手側に沢、見上げれば青モミジ、自然の美しさがたっぷりの道を、なにせ平坦なもんですから、のんびり歩くことができます。これってつまり、紅葉の季節でも最高なんじゃないでしょうか?
普段は見ない、葉っぱの葉脈を観察したり。
見上げれば青空。そして木々の緑色。なんとも気持ちがいいコースです。
草原のような風景も出てきます。時折太陽の下に出ますが、コースのほとんどは爽やかな水と緑の道なので、暑さを忘れてしまいます。
ん!?と立ち止まってしまったのは、こちら。砂浜…ではなく、驚くほど透明な沢です。一切の濁りなし!草木の影が絵画のように映っていました。
この透明な沢付近で、今回初めて花を見つけました。マルバダケブキですかね?ハリー・ポッターシリーズに出てくる呪文のような名前ですね。(笑)
このきれいな沢が、今回の滝子山で一番気に入った場所です。水がきれいだとテンションが上がっちゃいます。
たろうもあまりのきれいさに言葉を失っているようです。ちなみに、ここは渡渉箇所なので、水量によってはまた別の景色となるのかもしれません。
ちょっと雰囲気を出してみたり。
やがて登山道は沢沿いから外れ、大谷ヶ丸(おおやがまる)との分岐に差し掛かります。後ほど大谷ヶ丸へ向かいますが、ここでの分岐は地図では破線ルート扱いなので見送ります。
少し登ると開けた防火帯へと出ました。うわぁ、これは気持ちがいい。
先ほど見たマルバダケブキもまとまって咲いていました。若干見頃過ぎだったかな。
振り返れば八ヶ岳(やつがたけ)方面が望めます。この景色を眺めながら下りでも歩きたいところですが、大谷ヶ丸へはこの先のアモウ沢乗越を経て向かうため、ここで見納めとなります。
四番山頂、滝子山から望む富士山
いよいよ滝子山の山頂が近づいてきました。これまでの自然美に加え、山頂には富士山の眺めが待っているというのですから、万一見えなかったとしても山行としての満足度は高いと思います。滝子山、大したやつだ…。
途中で祠のある鎮西ヶ池(ちんぜいがいけ)が見えてきました。この池には弓の名手として知られる「鎮西八郎」こと源為朝(みなもとのためとも)と、その妻の伝説が残っているそうです。
山頂付近になってくると、これまで歩いたところよりも道の荒れ具合と急な登りが目立ってきます。
山頂はもう目の前、あの青空を目指してラストスパート!
岩場を登りきり、滝子山の山頂に到達~!そしてお楽しみの…?
富士山!!
正面にヒゲのような雲がありますが、無事に夏の富士山を捉えることができました。手前には三ツ峠山(みつとうげやま)の電波塔が目立ちます。
ちょうどいい岩に腰掛けてお昼ご飯の準備。そうそう、今日はこのお昼すら楽しみにしてきました。なんてったって、富士山を真正面にしたランチですから。
富士山を正面に、この「スキヤキ牛めし」を食べる。これは美味しいに決まってます。まずはお湯を入れて5分か。よぅし、待つぞ待つぞ~~。
待っている間に山座同定をば。まずは富士山の左側、道志山塊最高峰の御正体山(みしょうたいさん)から左に流れて丹沢山地へ。
北側には、以前歩いた小金沢連嶺が壮観です。果ては大菩薩まで続く人気の縦走路。また歩きたいですねえ。
さあ!そろそろお楽しみのスキヤキです。フタを開けて~…
早かったか…
どうしていつも待てないのでしょう?でも味は美味しかったです。
心ゆくまで滝子山の山頂風景を楽しみ、いよいよ次なる目的地へ。今回は富士山手前の雲が取れませんでしたが、滝子山にはまた訪れたいので、その時を楽しみにしましょう。
大谷ヶ丸から延々続く天目林道へ
滝子山から大谷ヶ丸へは、防火帯付近の分岐まで来た道を戻ります。ここで注意したいのが、滝子山山頂から南陵(寂ショウ尾根)へ下りるのは危険です。ちょうどいい感じに山頂から道が続いているから、うっかり南陵へ向かってしまいそうです。
地図によればこのアモウ沢乗越を通るルートは踏み跡薄いとのこと。確かに…時折道を見失い、何度かヒヤッとしてしまいました。
道標も全くないので、赤テープを頼りに単調な樹林帯が続きます。
倒木が道を塞いでいる場面もありました。こういう倒木のケースって、回り道をした後、元いた道としっかり繋げないと道迷いを起こしてしまいそうです。
この滝子山~大谷ヶ丸間を歩いていて出会ったのは一組だけで、やっぱり滝子山は駅から駅の登山ルートが人気のようです。
分岐から歩き始めて50分。やっと大谷ヶ丸に到達です。ひたすら地味な樹林帯を歩いてきたので、山頂標を見るだけで感慨もひとしおです。
山頂は樹林に囲まれており、特に展望も期待はしていませんでしたが、西側から少しだけと甲府盆地を望むことができます。
小休止の後、山頂手前の分岐まで戻り、湯ノ沢峠方面へ進みます。
正味十分の道中なのですが、急な下りが多く、足にも少し痛みがあったせいか長く感じました。この先の米背負峠(こめしょいとうげ)まで出てしまえば、以前にも歩いたことのある道となるので気持ちに余裕が出てくるはずです。
ぐんぐん下って、米背負峠に到着しました。後は天目林道を目指して下っていくわけですが、これが長いんですよねぇ…
林道に出るまでの間は、沢に沿った気持ちの良い登山道が続きます。沢に始まり沢に終わる、この夏にピッタリのコースでした。
駐車スペースのある広場が天目林道のスタート地点となりますが、この林道は大蔵沢大鹿線とも表記されています。ここからやまと天目山温泉までは約一時間ほど!
長い…ッ!あまりにも…ッ!
林道の終盤で、真っ暗闇のトンネルが待ち構えています。ヘッドライトで照らしながら歩きますが、トンネル独特の空気感が恐怖心を煽ります。一人きりってのがなお怖い。
トンネルを抜けてしばらく歩いた先、右手側に現れるもう一つのトンネルをくぐれば温泉は間もなくです。
13時50分、やまと天目山温泉に到着です。ここの温泉はpH10.3と非常に高く、ぬる湯にじっくりと浸かることができるので、お気に入りの温泉です。
しかし、今回の山旅はここがゴールではありません。この先にある竜門峡から温泉&グルメにつなげますよー!
竜門峡と信玄の隠し湯、甲斐大和を訪ねて
やまと天目山温泉から車道を北へ進んでいきます。側道への分岐が見えてくれば、竜門峡入口の看板が見えてきます。
狭い通路をぐんぐんと下っていき、やがて轟々と水の音が近くなれば竜門峡はすぐです。
天目から田野地区まで、およそ2.4kmの遊歩道が整備されていますが、遊歩道というよりはほとんど登山道ですね。割と水の近くまで下りられるので、凄い迫力です。
思っていたよりもずっとワイルド、奥多摩の大多摩ウォーキングトレイルに近い感じです。
水を見て、緑を見て、滝子山登山の延長と言わんばかりの自然風景が続きます。だから絡めたかったというのもあるんですけどね。
そして、この竜門峡一番の見どころは、この橋の先にある落合三つの滝です。少し前まで橋が流され見られなかったそうですが、復旧したようで。
この滝を見るためには、滝の脇に取り付けられた階段を登るのですが…これがめちゃくちゃ怖い。急階段なうえ一部グラグラ動いたので、しっかりと手すりに掴まってください。
最高点の観瀑台からは、滝の全景が望めます。自然の奥まった場所にある風景というのは…やはりイイですねぇ。
足も痛いし、やまと天目山温泉からバスに乗っちゃおうかな!とも思いましたが、竜門峡まで来て良かったです。じっくり40分ほどの渓谷歩きを堪能できました。
さあ、後はお楽しみの温泉です。下山先の田野地区、道路の先にのぼり旗が見えるので、行ってみましょう。
こちら「信玄の隠し湯」の一つと伝わる田野温泉です。以前は旅館だったそうですが、現在は福祉センターとして跡地に建てられ、かつて信玄公が湯治したと伝えられる温泉を楽しむことができます。
甲斐国、山梨県には他にも武田信玄の隠し湯が点在しています。傷ついた兵の療養のために早くから温泉に着目し、温泉開発を進めたという信玄公には感謝しかありません。そういえば、西丹沢の中川温泉も信玄の隠し湯だったような。温泉マニアか?
こちら田野の湯も高アルカリ温泉で、トロリとしたぬる湯にいつまでも浸かっていられそうです。時間が時間だったからか、またまた温泉を独占してしまい、若干寝そうにもなりました。
いやぁー…温泉を堪能して外に出た時の空気感って、最高ですねぇ。その最高な気分のまま向かう、田野温泉の少し南にあるお蕎麦屋さんが本日最後の目的地となります。
それがこちら、「蕎麦街道 砥草庵(とくさあん)」さんです。なんでもここ甲斐大和は蕎麦切り発祥の地らしく、栖雲寺に石碑があるそうです。そんな発祥の地でいただくお蕎麦、楽しみでヨダレが止まりません。
お蕎麦ももちろん楽しみなのですが、もう一つ楽しみだったのが、山梨ご当地グルメである鳥もつ煮。元祖である甲府鳥もつ煮には甘辛い味付けですが、こちらでは味噌煮風でいただくことができます。
これが美味しい!ピーマンの苦味もアクセントになって、ぺろりと食べてしまいました。やみつきになりそうです。
そして…お楽しみはコレ!原料や製粉にもこだわって作られる、特せいろそば!一日20食限定となっており、時間的に不安でしたがセーフだったようです。
こちらのお蕎麦は十割蕎麦のため、蕎麦本来の味を楽しむことができます。いろいろな食べ方で楽しみましたが、そのまま食べるのが一番美味しく感じられました。
田野で温泉とお蕎麦を楽しんだら、後は駅を目指していくだけ。最寄りのバス停は武田家終焉の地である景徳院です。うーん、次のバスを待つのと、ここから甲斐大和まで歩くのと時間が大して変わりませんね。
ここまで来たら最後まで歩くか。
道中、ハッピードリンクショップを見つけ、テンションが上がります!秀麗富嶽十二景の最後はこのハッピードリンクショップで締めたいですよね。え、そんなことない?
キリッと炭酸で締めちゃいます!…と、ビックリ!野生のサルを見かけました!
バス停から歩くこと30分ほどで、甲斐大和駅に到着しました。いやぁ~、今日は長かったけど、充実した山旅となりました。後は中央線、京王線と乗り継いで帰るだけです。大事ですからね、京王線使うの。
滝子山の山旅、終わりに
今回の滝子山は、納涼の山旅というテーマで夏を選びましたが、個人的には大満足でした。何よりズミ沢の透明度が印象強く、たろうたちもご覧の表情です。
せっかく秀麗富士を望むなら、空気が透き通って、冠雪している冬場がいいんじゃない?と、そう思っていました。ですが、何も山頂からの景色だけが山ではなく、道中の自然風景、そして季節との相性、そこに温泉や食べ物なんかも加味すると、どの季節どのタイミングで行っても違った楽しみがあります。
滝子山には今回登った沢沿いコースの他、岩場がある南陵、そして初狩駅へ下るコースなどもあり、また、春にはイワカガミ、秋には紅葉、冬には富士山の眺望が楽しめるので、また季節を変えて訪れてみたいところです。
さあ、次はどこに行こうかなぁ。