山梨県上野原市にある坪山(つぼやま)。春に人気の花の山として注目されたのは近年になってからだそうで、その火付け役となったはヒカゲツツジという花。
最盛期には少し早かったため、まさか咲いてなかったらどうしよう…という不安を胸に、今回は、山梨県・坪山から秀麗富嶽十二景の奈良倉山(ならくらやま)へと縦走してきた時のお話です。
どうも、スラ男です。
今回の山旅では久しぶりのJR中央線を使い、山梨県上野原駅へ。目的地の坪山は春にはヒカゲツツジで賑わうといいますが、一方で痩せた岩稜地帯もあり、事故も起きていると聞きます。
花に気を取られて大事故なんてことにならないように、ゆるりと低山を繋げる山旅の始まりです。
■坪山~奈良倉山(2017年4月16日) 目次
ヒカゲツツジを求めて、人気の坪山へ
スタート地点の上野原駅から目的地である坪山へは、バスで一時間ほど。しかし季節によって運行時間など違いがあるので、入念に下調べしてきました。
駅前をお掃除していたバスの運転手さんが、駅周辺のことを色々と教えてくれました。 それによると、来年にはこの駅も新しくなるようで、写真奥側がロータリーとなり、バスやタクシーの利用者にとってもうれしい報せなのだそう。
確かに現在のロータリーはちょっと狭く、バスを利用する登山者が多くなればなるほどバス側からすると大変そうですもんね。
早く登山開始といきたいところですが、実はまだ始発バス出発の一時間も前。というのも、花の開花期で混雑が予想され、なおかつ中央線の遅延も視野に入れたためです。実際に、中央線が遅れ始発バスに間に合わずにクレームになったなんて例も過去にあったみたいです。
予想は的中し、続々と登山者たちが並んできました。40人ほどの列の内訳はシニアハイカーがほとんどです。そして一時間前作戦が功を奏し、バスの臨時便にありつけました。
バスに揺られて一時間ほど。八ツ田バス停が坪山の最寄り登山口です。橋の目の前で降ろしてくれるので、皆さん一斉に登山口へ早足で歩き出しました。
ここには毎年来ている方が多いようです。ぼくは今回が初めてなので、のんびりと桜を眺めながら歩きたい…ところだけど、前情報によると坪山の登山道は狭く、渋滞に捕まりたくなかったのでちょっとだけ急ごうかな。
坪山には東と西のルートがありますが、西ルートが目的のヒカゲツツジやイワウチワなどが群生する花の道です。
さっそく、スプリング・エフェメラル(春の儚いもの)と呼ばれる花の一つであるカタクリを間近で見ることができました。
それにしてもいい天気。花見の天気としてはこれ以上ないくらい。後は開花状況ですが、ヒカゲツツジの見頃は4月中旬からなので、ちょっと早いんですよねえ。
これより花の多いコースへ。楽しみです。登山道に入ると、さっそく道が狭い。幸い混雑はなく、すんなりと通過できました。
上野原駅で調達した坪山の手書きのハイキングマップによれば、花の群生地まではまだまだありそう。それにしてもこの手書き地図、書き込みがすごい。花の情報量が特に。
尾根の急登をクリアすれば、いよいよイワウチワ、ヒカゲツツジたちの群生地は目前です!咲いていてくれ…頼む!
黄色い春の訪れ、ヒカゲツツジの大群生
尾根登りの途中から案内の立て札が出てくるも、なかなか花は見当たらず…まず最初に出てくるイワウチワも…おや、立て札下をよく見ると?
お!まずはイワウチワを一輪見つけました。
ここではヒカゲツツジ、イワウチワ、そしてイワカガミという花が見られますが、イワカガミだけはちょっと時季がずれています。だからこそ、ヒカゲツツジには期待が高まります。
ヒカゲツツジの群生地!!…のはず! ミツバツツジっぽいのならポツポツあったんですけどね…ぐぬぬ!
これはイワウチワ!恥ずかしがって背を向けちゃってます。
花の芽はたくさんあるので、まだまだこれからだったか~~!!一輪のミツバツツジがとても鮮やかでした。
右の斜面一帯がツツジ群生地なのだろうけど…きええええ!!!
ハッ!?
どうやら標高の高いところで開花していたようです。緑の葉の上にレモン色のヒカゲツツジがたくさん咲いているのが見られました。
ヒカゲツツジという名前だけれども「日向」がよくお似合いの花。太陽をサンサンと浴びて黄色がより美しい。
ところで、ヒカゲツツジという名前の割には、葉の形などがシャクナゲに似ている気がします。気になって調べたら、シャクナゲに近い分類だそうです。
ヒカゲツツジを観賞していると、ンブブブブブブ…!と、いやな音が響きました。春になってハチをはじめとする虫たちが続々と出てきます。これだけきれいに花が広がっていれば登山者だけじゃなく虫も賑わいますよね。ンブブブ!
ンブブブブブブ!!!!
イワウチワの案内板もあちこちにあるので、足元を入念に注意しながら歩きます。
独特の花びらを持つこのイワウチワ。葉っぱが団扇のようだからこの名前だそう。花言葉は「春の使者」だって。いいですねぇ。
山頂までもうちょっとありますけど、この時点でかなり満足です。ちょっと早い時季でこれだけの満足感なんだから、最盛期は最高間違いなし!…だと思います。
坪山山頂に広がる奥多摩の大展望
序盤でなかなか見られなかったイワウチワも、標高が上がるにつれ群生しているところが出てきました。
似たような景色が続くけども、ヒカゲツツジのおかげで道中全てが楽しい。盛り上がりも最高潮!
途中、晴天とヒカゲツツジが見られました。うーん、一時はどうなるかと思ったけど、この日来てよかったー!
ヒカゲツツジの群生地が終わると、突然道が荒々しくなってきました。
ロープや大きな岩なども出現しはじめます。ここから山頂まで急な登りが続き、今までの花見気分から一気に気が引き締まります。
「坪山っていう花見にいい山があるよ~」なんて軽い気持ちで来ると、意外に苦戦を強いられます。さあ、もう一息!
着いた~~!山頂だ~~~!!
山頂はグルリと開けており、目の間に堂々とした三頭山(みとうさん)の姿をはじめとした奥多摩の山々が望めます。
坪山山頂は狭くはないですけど、道中に休憩箇所がないため山頂混雑は必至。ぼくは簡単に食事と休憩を済ませ、お次の奈良倉山へ向かいます。
秀麗富嶽十二景の一つ、奈良倉山へ
奈良倉山は、山梨県大月市が選定した秀麗富嶽十二景という山々の一つに数えられますが、大月市からかなり離れた位置にあります。今回は坪山から縦走するため、佐野峠を経て向かいます。
坪山からは急下降と急登を繰り返します。ここのルートを選ぶ人は少ないだろうなと思っていたら、なんと単独女性ハイカーが!シブいなぁ。
しばらく歩いていくと、多数の道標が立つ分岐点へたどり着きます。ここから様々なルートへ行けるようだけど、ぼくが目指すのは奈良倉山。
金網が張られた分岐に着いたら、また奈良倉山方面へ。
ここで先ほどの女性ハイカーが足元を見ていたので、何かと思って声をかけるとカタクリが!坪山登山口では金網越しだったけど、ここでは間近で見られたのでラッキー!
後で思ったのが、カタクリとたろうを一緒に撮ればよかったなぁ。
ふと金網の向こう、左手側を見てみると…そこには雄大な富士山が!おお~~!!奈良倉山に着く前に富士山が見られるとは。 この金網も秀麗富嶽に入れるべき?
その後もしばらく富士山を眺めながら歩いていき、やがて林道に合流します。この林道佐野峠線をしばらく歩くことになるのですが、これがまた長かった。
林道をたっぷり一時間歩いて、右手側に奈良倉山への道標と、大月市で見たタイプの道標が見えてきました。ここまで頑張れば、山頂までは5分程度。
山頂より手前に「天望所」がありました。実は、奈良倉山は山頂ではなく、この天望所で富士山が望めるのです。やはり秀麗富嶽十二景の中では変則的な山といえます。
しかし、富士山の眺望は他の秀麗富嶽にも引けを取りませんよ。選定地の中で富士山から一番遠いにも関わらずこの眺めとは…恐れ入ります。
展望所ではなく天望所なのがシャレたポイントですよね。
山頂からは特に展望もなく、休憩するなら先ほどの天望所がオススメです。もっと緑が出てくれば、山頂でも気持ちいいかも。
下山路はこちらの松姫峠(まつひめとうげ)を目指します。
上野原駅で仕入れた手書き地図によると、途中分岐の歩道側にカタクリが咲いていたとのこと。でも、(4/10時点)とも書いてある…あればラッキーくらいで、歩道へ。
残念ながらカタクリは見つけられず、林道に合流です。ここから松姫峠までは目と鼻の先!もうひと踏ん張り。
車道にぶつかれば、松姫峠へ到着です。バスがあるので、ここから小菅村へ行くことも可能ですが、このバスは期間運行なのに加えて本数が異常に少ないのです。
というか、一本しかありません。
つまり、この13時15分のバスを逃すと、下山するにはまた山を超えて行かなければなりません。この時間に間に合うかどうかが今回の肝でしたが、無事に辿り着いたので、バスで下山しましょう。
温泉とヤマメ、小菅村で味わう極上のひと時
下山後は、いよいよ本日の締めくくり、小菅村の「多摩源流温泉 小菅の湯」。ここは道の駅も併設されており、奥多摩特産であるワサビやヤマメも扱っているというので、もうたまりませんね。
バスが来るまでは一時間あるので、しばらくここで時間を潰します。この松姫峠は大月市と小菅村のちょうど境目で、看板が二つありました。大月市は猿橋、小菅村は多摩源流とヤマメがデザインされています。
松姫峠からは、奥秩父方面と富士山方面の山々が望めます。小金沢連嶺の向こう側には、ちょこっとだけ富士山が頭を出していました。去年はあちら側から富士山を見ていたんだなぁ。
たろうたちも自分らが行った山を見ています。見てるよな?
また、バスを待っている間、何人かのライダーさんがここで休憩していました。登山とツーリング、手段や行程は違っても目指すものは同じなのがまた面白い。
ご丁寧に案内板がありました。石丸峠から続くあの稜線はもう一度…いや、何度でも歩きたいですね。
時間通りに来たバスに乗って、ようやっと小菅の湯に到着しました。
驚いたのは、一日一本のバスに乗車したのはなんとぼく一人!ということは、途中で会った人たちは奈良倉山から鶴峠へ向かったのでしょうか?
春真っ盛りの気持ちのいい道の駅。今度は家族と一緒に来てもいいかも。 お楽しみの温泉は最後にとっておいて…まずはもう一つのお楽しみをば。
そのお楽しみは、こちら奥多摩の特産品であるヤマメ。川魚大好きなぼくがこれを放っておくワケがありません。お店のおばあちゃんにヤマメの写真を撮っていいか聞いてみると、「こっちから撮ったほうがいいよ!一番いいところ!」と、お店の内側に入れてくれました。いいんだ(笑)
ここに並んでいる分で売り切れらしく、追加分を電話で注文してました。もしかしたらぼくも食べられなかったかもしれないと思うと…ゾッとします。
お店のお姉さんは「食べるの早いね!?(笑)」と驚いていましたが、骨までペロリと食べられ、肉厚の身が何とも美味しいヤマメを前に落ち着いてなどいられませんからね。
ヤマメと一緒にオススメのドリンクはこちら、多摩源流水。ああ~~水が美味いんじゃ~~(*´Д`*)
帰りで乗る予定のバスまでは一時間。締めくくりの温泉へと行ってきます。小菅の湯、充実したお風呂と開放感が素晴らしい、い~いお湯でした。
さて、小菅の湯から帰りのアクセスは二つ、奥多摩駅へ行くか大月駅へ行くか。
土日であれば奥多摩からはホリデー快速が出ているので、料金的にもどちらも大差はありません。しかし、ちょっとだけ大月駅のほうが早く帰れるので、こちらを選択。
大月駅からは大月市のシンボル的存在である岩殿山が望めます。低山ながらもスリル溢れるそう。ここもいくつかのルートを組み合わせて登りたい山の一つです。
今回の山旅は道迷いの不安要素もありましたが、無事に終わって大満足の山旅でした。ヒカゲツツジをはじめとする春の花々、富士山の展望、そして奥多摩の名産品…数々のよい思い出を持ち帰ることとなりました。