埼玉県秩父市のシンボルともいえる山、武甲山。その雄大な姿は市街地から見上げても大迫力ですが、奥武蔵には武甲山を含めた秩父盆地と、その先の山々を一望できるという贅沢な展望台があるといいます。
今回は降雪後の奥武蔵・丸山を舞台に、大展望の山頂、古の峠道を経て、歴史ある鉱泉宿でじわりと秩父路を楽しんで来た時のお話です。
どうも、スラ男です。
厳冬期である1月から2月。この間、奥武蔵エリアにある芦ヶ久保では、冬ならではの「氷柱」の美景が見られるので賑わいを見せています。
氷柱も捨てがたいですが、芦ヶ久保駅の目の前には「奥武蔵随一の眺望」と称される丸山がありますから、今回はそちらをメインにしたいと思います。
ということで、展望台からの景色を堪能し、下山後の歴史ある温泉と秩父グルメを待ち焦がれながら、雪の積もる登山道をじっくりと歩く山旅が始まるわけです。
■丸山(2019年2月10日) 目次
奥武蔵・丸山、雪積もる静かな杉林
奥武蔵や秩父へ足を運ぶ際は、始発の場合飯能駅での乗り換えが多いです。いつだったか、ここで観光電車「52席の至福」を見かけましたが、今日は西武ライオンズカラーの「L-train」が停まっていました。
電車の乗り換えは億劫かもしれませんが、個人的にはたくさん電車を見ることができますし、旅の楽しみの一つです。
飯能といえば、ムーミンバレーパークのオープンに合わせて駅構内の改装工事が進められていました。ぼくも去年からその様子を見ていましたが、すっかりきれいになりましたね。※2019年2月10日時点
本日のハイキングは、ここ芦ヶ久保駅が始点となります。芦ヶ久保といえば、この時季だとあしがくぼの氷柱が注目を集めています。今回のプランでは時間の都合(午前9時開場)立ち寄ることはできませんが、ぜひたくさんの方に見てほしい美景です。
■あしがくぼの氷柱について
また、こちら芦ヶ久保駅のすぐ下には道の駅がありますので、時間をずらせば旅の支度をするのに便利です。ここの焼き立てパンが絶品なんですよね。
さて、道の駅から丸山を目指す場合には、日向山方面へ向かうルートと、赤谷集落・大野峠方面へと向かうルートがあります。登る時期が3月であるなら、早春の花を愛でながらの日向山が人気のようですが、今回は赤谷集落を目指して国道を30分ほど歩きます。
集落を縫うように歩き、登山口手前で振り返ると、山の向こうに両神山が覗きました。この天気なら、山頂の展望台からの景色も期待十分ですね。
奥武蔵エリアの山々の多くは杉の植林に覆われていますが、ここ丸山も例に漏れず杉林の中を歩いていくことになります。花粉症に悩まされるこの時季だと地獄以外の何ものでもないですが、降雪の後だったせいか花粉は静まり返っていたように思えます。全く発症しませんでした。
杉林の間から時折覗く風景も、雪のおかげかいつもより幻想的です。
朝日を浴びるたろうも、いつもより幻想的ですね。
杉林の中、一本だけ異彩を放つ木がありました。この辺りのヌシでしょうか?きつい登りはなく、ゆるゆると冬の空気を楽しみながら歩いてきます。
沢を渡る箇所も、こう一面が真っ白だと道を見失いそうです。この後は大野峠を目指して登りが続いていきます。
天使の羽が落ちているのかと思いましたが、これはこのコースの道標ですね。なんて書いてあるのか気になりますが、せっかくの天使の羽です。このままにしておきました。
杉林を抜けると、奥武蔵グリーンラインと呼ばれる林道に出ます。この右手側に大野峠の大きな道標が設置されていました。グリーンラインはドライブやサイクリングで人気の道だそうですが、今、さすがにそんな人は見当たりません(笑)
大野峠の東屋には、丸山の由来がわかる案内板が。高篠山というのは初めて聞きました。この後下山する、高篠地区の名前が山に充てがわれたのでしょうか。
さあ、お次はいよいよ大展望の待つ丸山です。
360度のパノラマ、展望台から望む秩父の名峰
大野峠からは階段をひと登りで、一気に標高を稼いでいきます。ただ、こちらの階段は段差が高く、小柄なぼくには堪える区間でした…
階段の限界点、青空が迎えるこの瞬間は何とも言えないものがあります。
これはすごい。
丸山の大展望を前に、このパラグライダー発射場からの大展望が山旅を盛り上げてくれました。この景色を前にすれば、確かに(飛べるなら)飛んでみたい…と思ってしまうかもしれません。
ところで、中央に見えるのは山頂に天文台のある堂平山です。
当初、2月は堂平山を含む比企三山を縦走しようと思っていましたが、偶然にも今年1月下旬に山火事が発生したため、その予定は流れてしまいました。※訪れた2月10日時点では既に鎮火しています。
■堂平山の山火事
大展望の後は、杉林に代わり広葉樹の森が続く関東ふれあいの道を歩きます。ここから県民の森までは、緑の芽吹く時季に歩いてみたくなるいいコースです。
左右で植生の異なる道は歩いていても面白いのですが、やはり新緑の時季などに歩きたくなります。しかし葉が落ちて展望の利く冬場では、既に武甲山がチラチラと見えているので、お得に感じたりも…
この辺り一帯は、埼玉県民の森として森林学習の場としても使われるようです。迷彩柄が特徴的なこちらはナツツバキ。樹々の成長を考慮してでしょうか、名札の留め具には伸縮自在のバネが使われています。
雪道なので普通に歩くよりもゆっくりペース、しかし体力の消費が激しい…木の名札を見ながら樹林帯を抜けた先に、真っ白な建造物が見えました。
ここが丸山山頂、そしてお目当ての展望台に到達です。
この展望台は2017年に修繕工事されたばかりで、雪も相まってかピカピカです。さらに、なんと展望台からの「眺め」が県指定の名勝となっているのです。
展望台に上ってみると、まず最初に目に飛び込んできたのは武甲山!薄っすらと雪が降りかかり、気品さが増したようにようにも見えます。この眺めをぼくは楽しみにしてきたのですから、感慨もひとしおです。
武甲山から山伝いに視線を右に移していくと、ギザギザの山容が特徴的な両神山が小鹿野の山々を抱いていました。秩父が誇る日本百名山の一つ、ぼくもこうして眺めているだけでなく、いつか登ってみたいなぁ。
武甲山と両神山、この秩父のシンボリックな二つの名峰をこうして見渡すことができるのは、秩父ファンとしては本当に嬉しい限りです。おまけに、両神山の左には八ヶ岳もちょこっと頭を出しているようです。
この最高の景色を眺めながら、本日の山ご飯は毎度おなじみのトムさん。寒空の下、そして適度な疲労の後で食べるトムさんは、格別の味です。
素敵なロケーションでエネルギーを補給したら、この後はお楽しみの鉱泉宿へ。長い長い下山路の始まりというわけです。
歴史ある「秩父七湯」の一つ、新木鉱泉を目指して
丸山の展望台を後に、森林学習がてら埼玉県民の森の中を下っていきます。県民の森は分岐も多く入り組んでいますが、道標もしっかり設置されておりますので安心です。
奥の展示館の左側へ進むと目的地の金昌寺方面へと繋がることができます。
青々とした常緑樹に覆われたイメージのある奥武蔵エリアにおいて、これほど丸裸の木々が並んでいる場所も新鮮さを感じます。
正味30分の気持ち良い落葉樹林帯を歩いた後、待ってましたの針葉樹林帯へと突入していきます(笑)
雪のせいで忘れていましたが、2月真っ只中の杉林を歩くのは、花粉症患者にとってはマルマインもびっくりの自爆行為です。絶対にやめましょう。
いつしか登山道は、落ち葉が積もりすぎて足が埋まるほどの人跡まれな道となってきました。かつては札所巡礼の際の道だったようですが、交通の便が発達した現在ではまさに落ち葉のように埋もれてしまった道…なのでしょうか?
動物避けと思われる柵を通り抜け(通過後は元に戻しましょう)、5分ほど歩くと金昌寺の裏にたどり着きます。
秩父札所四番の金昌寺は、その石仏群が県の文化財に指定されています。境内を歩いてみると、そこかしこに石仏が立ち並び、ユニークな姿の石仏から、厳かなものや端正な美人石仏と様々です。
中でもこの慈母観音は秩父のガイドブックに載っているほど有名なものです。ぼくはこの後訪れる新木鉱泉の名前の由来ともなった、荒木丹下の石像が見たかったのですが、どこにあるか見つけられませんでした。
新木鉱泉のホームページには、次のように書かれています。
秩父札所4番金昌寺別名「新木寺」が由来
新木の名称は、荒木丹下という酒癖の悪い荒くれ者が、四番・金昌寺のご本尊により改心させられ、仏道に帰依したところから金昌寺は別名新木寺とも呼ばれ、それが当館の名ともなったとのいわれがあります。
金昌寺まで徒歩7分。「もうお酒は飲みません」と、頭の上で杯をひっくり返している荒木丹下の像がなんとなくほのぼのします。
引用元:歴史と由来 | 新木鉱泉
さて、金昌寺からお目当ての新木鉱泉にやってきました。創業は江戸時代、かつて巡礼者たちで賑わった趣ある温泉です。
ところで、この新木鉱泉も冒頭でちらつかせた秩父七湯の一つに数えられています。秩父七湯とは江戸時代に選定されたといわれる秩父の鉱泉のことで、多くの巡礼者たちの旅の疲れを癒やしたといいます。
ぼくもそんな旅人気分で、念願だった新木鉱泉にじっくりと浸かり、山旅の疲れをじわりと溶かしていくのです…(*´∀`*)
温泉を堪能した後は、やっぱり食べたいですよね秩父グルメ!ということで、当初は蕎麦にしようかと思っていましたが、ガッツリと食べたい気分になってきたので、豚みそ丼に狙いを定めました。
ネットで何度か目にしたことのあるお店「ちんばた」がこの近くにあるようなので、これはチャンス!とばかりにグーグルマップでルートナビを設定しました。
え…?ここ通るの?
予想外のナビゲートに、温泉で流したはずの汗が冷たくなって戻ってきました。
山登りの後にまた山のような場所を歩くとは思いもよらず。しかし豚みそ丼のためなら何でもできそうな気がします。待っててね、豚みそ丼!
やっとの思いでたどり着いたのがこちら、「和食と豚みそ丼 ちんばた」さん。炭火焼きとあるように、駐車場にもお腹を空かせるいい匂いが…
するのですが、いかんせん混んでます。若い方がほとんどで、ハイカー風の人はぼく以外誰もおらず場違い感が半端じゃないです。とりあえず店の前の紙に名前を書いて待機しますが…
結果、一時間待ちました。
でもいいんです。駐車場の目の前には、こんな素晴らしい景色がありますから。「あれ何て山だろうね?」と和気あいあいとするグループに、「あれは両神山」と親切に心の中でつぶやきました。
「いやマジで美味い…ほんっと美味いわ」と豚みそ丼に感動するお兄さんに、ぼくの期待も極限状態を超えます。独りなのでカウンター席へ案内されると、目の前には有名なウイスキー、イチローズモルトが!の、飲みたい…!
秩父の名物丼といえばわらじカツ丼と豚みそ丼ですが、そのどちらも一度に楽しめるメニューがちんばたにはあるのです。
しばらく待った後、丸山の展望台、新木鉱泉に続き、この日三度目の感動がぼくを襲います。それがこちら「秩父名物W丼」。嗚呼、美味し…!
ご馳走に大満足した後は、仕上げに道の駅ちちぶにてお土産を物色しましょう。やっぱり秩父に来たら食べたいですからね、みそポテト!
大好きなポテくまくんのコーナーがあったので大興奮です。しかし、のんきにみそポテトを食べていたら、ぼくの目の前で残り2個だったみそポテトチップが買われてしまうという事案が発生してしまいます。
しまった!先に買っておくべきでした。そしてスラ坊へのお土産がなくなった決定的瞬間でした。
秩父路を締めくくる、西武秩父駅にて見上げる武甲山。これを見ると、今日一日の山旅も無事に終わりを迎えたんだなぁと実感しますね。後は…そうですね、息子スラ坊への言い訳をどうするか…ですね(笑)
丸山の山旅、終わりに
丸山は花の時季か、遠望の利く冬かでタイミングを見計らっていましたが、まさか積雪の時に行くとは思いませんでした。しかし、おかげで最高の景色を見ることができたのは嬉しかったです。
ガイドブックなどでは比較的登りやすい山として紹介されていますが、今回歩いた後半の金昌寺へのルートは道が若干荒れておりましたので、県民の森から日向山方面へと周るルートがやはりオススメなのかなとは思います。
ただ、金昌寺まで歩けば新木鉱泉さんが目の前にありますので、これが今回一番良かったと思うことです。
関東地方にも数多くの名湯、温泉街がありますが、ぼくは秩父の温泉がお気に入りの一つです。中でも、「秩父七湯」は以前から気になっていた温泉ですので、今後の山旅にも絡めて行きたいところです。
さあ、次はどこへ行こうかなぁ。