振り返ってみると、10月から11月にかけて遠出が重なりました。それは楽しくていいのですが、出費もそれなり。ある程度は我慢したいところです。
しかし懲りずに出かけてしまうのは、昨年すれ違いだった紅葉につられてか。本日は秋真っ盛り西丹沢、その奥地にある聞きなれない地名のお話。
どうも、スラ男です。
さて、この日やってきたのは、神奈川県丹沢西部にある、秘境・ユーシン渓谷。ユーシン…?聞きなれない地名ではありますが、そこで見たものは素晴らしい景色の連続でした。
※ユーシン渓谷への道は崩落しやすい場所なので、道路状況等確認が必須です。
■玄倉林道の状況について
ユーシン渓谷~同角山稜(2016年11月12日) 目次
青々と水を湛える、ユーシンブルーとは?
山登りに行く時は、日帰り圏内ならいつだって始発を選びます。この日も小田急線新松田駅に朝イチで到着し、始発のバスに流れるように乗り込む。予定では駅に到着後に時間が空くはずでしたが、シーズンだからか臨時便が出ていたためすぐに出発となりました。
臨時便に乗れて喜んでいましたが、目的地の玄倉までが長い長い!1時間近くバスに揺られてやっと到着。途中、きれいに富士山が見えたのがせめてもの救いか。もうすっかり冠雪してましたよ。
バスの終点は西丹沢自然教室ですが、ユーシン渓谷に向かう場合はこの玄倉が降り口。乗客の4分の1ほどが一緒に降りました。目の前にある玄倉商店では、物資調達も可能のようです。
目の前の丹沢湖は、早朝ということもあってかきれいな青色が眩しい。
そういえば肝心の紅葉具合をあまり調べてきませんでしたが、いい感じに紅葉のパッチワーク。真っ赤!よりも適度に緑や黄色が混じっていたほうが好み。
さて、玄倉からは丹沢湖沿いに歩いていきます。最初の橋を渡っていきなり分岐がありますが、湖沿いに直進します。
道中、ずっと水の音を聞きながら歩くことになるので、水辺が好きな方はオススメかもしれません。緑が眩しい新緑の時期なんかもいいかも。
しばらく砂利道を歩いていくと、正面のゲートは左脇の黄色い柵をくぐります。
あばら骨にも見える覆道が見えてきました。このユーシン渓谷を歩くには、この先に待ち構えるいくつものトンネルをくぐっていくことになります。中には真っ暗闇の長いトンネルもあるので、懐中電灯などの灯りが必須です。
でも今はトンネルより山の風景が素晴らしい。今回の山旅は長丁場なので、序盤でしっかりと英気を養っておく狙いもあります。
見事なVの字!逆さ富士みたい。見たことないけど。
見えてきました、こちらが渓谷最初のトンネル境隧道です。距離は短く、すぐに出口が見えていますが…ドキドキは隠せません。
スタジオジブリの映画『千と千尋の神隠し』の気分に浸りながら、秘境を求めて進んでいきます。決して振り返ってはだめだよ?
いい感じに苔生したガードレールを支えにしてしまい、うっかり肘が汚れたり。
後ろを歩いていたファミリーのお父さんが、遠くの山を指して「あれが檜洞丸(ひのきぼらまる)だよ」と言ってました。
このユーシン渓谷もそうですが、山は変わった名前が多くて面白い。ユーシンという地名にもいくつかの由来があるそうですよ。
この渓谷イチ長い、そして真っ暗闇のトンネル、新青崩隧道に到着です。ご覧の通り、中が真っ暗闇(しかも若干曲がっている)のため、ぼくもライトを用意して歩きました。
しかし、不意に足元に現れる謎の染み。 テメーは俺を怒らせた。
初代ポケモンでいうところのイワヤマトンネルを抜けた先は、先ほどよりも見ごたえのある紅葉が広がっていました。
そして、いよいよユーシン渓谷の大本命とのご対面です。それがこちら…
おお~!これがユーシンブルー!!
トンネルを出てすぐ先にある玄倉ダム。そのダムの周辺のみどういうわけか水がエメラルドグリーンのような色になることから、「ユーシンブルー」と呼ばれているそうです。
前日の雨もあってちょっと心配でしたが…うん、これは確かにきれいな色だ!ただ、近くにいたおばちゃんは「なんだ、上高地の梓川のほうがきれいね!」と期待はずれだったご様子。
写真でしか見たことはありませんが、確かに梓川はとてもきれいですよね。でも比べるものじゃありませんし、これはこれでいいじゃないですか。
また、時期や天気、雨量によっても見える色が異なってくるというので、まだまだユーシンブルーの本気はこんなものじゃないのかもしれません。
しばしユーシンブルーを堪能。本当にきれいな色だなぁ。
ユーシンロッジから、大石山を目指して
ユーシンブルーに後ろ髪を引かれつつも、渓谷の紅葉は続きます。玄倉ダムを過ぎれば、ゴール地点のユーシンロッジまではあと半分。本当?
この時期だと鮮やかな紅葉に目が行きがちだけど、よぉく見てみると足元にもひっそりと花が咲いていたり。うなだれている君の名前がわからない。
ユーシンロッジまであと1.5km!平坦な道だからあっという間です。
この看板が見えてきたら、ゴールはもうすぐ。ちなみにこの分岐では下り坂の反対方向に向かえば檜洞丸方面とのこと。
きれいな紅葉が眩しい、ユーシンロッジに到着です。ここで休憩してから引き返す人が大半なようで、ぼくもここで昼食を。日当たりがいいので眠くなってしまいます。
きれいな建物があり、かつては宿泊施設だったようだけど、現在は閉鎖中です。
しかし、トイレがあるのが嬉しいところ。この日は長丁場の予定なので、ここでトイレ休憩を逃すと大変です。補給もほどほどに次の目的地へ。
またいつか来た時には、このロッジが再開されていたり…するのかなぁ?
さあ、ここでのんびりウォーキングは終わり。本格的な山登りの始まりです。目指すは大石山(おおいしやま)!巨石を期待してもいいんですか…!
まずは看板の先にある大きな橋を渡ります。
ところで、秩父にはダムカードならぬ橋カードというものがあり、気になります。秩父限定じゃなく、各地でやったらいいのに(´・ω・`)ボソッ
橋の先で大石山への取り付きを見つけ、いざ。序盤はいきなり急登から始まりますので、ここまでで疲労を感じた人はロッジでしっかりと休憩をとるとよいでしょう。
だらりと垂れ下がった鎖場のいきなりの登場に身構えますが、難易度は低め。登りきると東屋が見えてきました。ここでいったん休憩。
この日のオトモであるたろうたちも勢ぞろい!ピンク、ネイビー、ブラウンとゲストでふらみ(真ん中右)。
何気なくたろうを出しているけど、クモの巣とかにも気を遣ってます。ブラウンの頭上には蜘蛛の糸がピーンと張ってありました。危ない!
休憩していると、ロッジ方面からおばちゃんグループがやってきました。正直、このコースはを利用する方はほとんどいないのでは?と思っていただけに意外です。休憩もそこそこに、痩せ尾根を歩いていきます。
するとハシゴの登場です。この先、このハシゴとはずっと付き合っていくことになります。
本コースは、ずっと崖をトラバースするような道なので、一歩足を踏み外せば最悪の事態になります。道中のご機嫌な眺望に気を取られて転落…なんてことにならないよう、気を引き締めて歩きます。
おや、あれが大石山の巨石かな?…いや、違いますね。事前調べではもっと空が見えていました。でも大きな石が見えてきたってことはもう近いのかな? 期待を胸に、落ち葉で不明瞭な坂を登っていくと…
見えた~!巨石だぁぁ!
しかしなんてデカさでしょうか。いや、それよりどうしてこんなところに巨石が?天狗か?天狗の仕業なのか?こんな大きな岩が登山道にデン!とあるなんて…不思議でなりません。しかも、この巨石の上には乗ることができるそうで、せっかくなのでぼくも脇からよじよじと登っていきます。
すっげ……!!!
右も左もなんてスケールでしょう…!これが大石山、これが…
大石の領域(テリトリー)!?
なんて余裕ぶってますが、巨石の上は怖いです。それにここまでの登りが結構きつく、紅葉がなかったらもっと疲れていたかも…
巨石からもうひと踏ん張りで標高1220mの大石山山頂に到着です。
ここからの眺めは素晴らしいものです。丹沢山地が一望でき、おまけに西側には富士山も見ることができるそうです。ぼくは見忘れました(・.・;)
岩の上には先客が一組、そして例のおばちゃんグループが後から合流しました。山頂は4~5人もいれば窮屈になってしまう程度の広さですが、もし独り占めできたなら最高かもしれません。
山頂からすぐ先、いきなり展望のよい場所にでます。ここからの眺めは圧巻!ついつい「すげえ…」以外の言葉を忘れてしまいます。
足元は白い石粒が多いザレ場となっているので、うっかり滑らないように。しかし…この眺めは秋だけの特権ですよねぇ。最高だぜ!
近くの紅葉もいいけど、遠くの山々もしっかり見ることができます。いつかまた経験と知識を積んだら、あの山々はあれだ!とわかるようになるかなぁ。
巨石に鎖にハシゴにキレット、同角山稜アドベンチャー
さて、景色を堪能した後は、後半のハイライトである鎖場です。眼下にだらりと垂れる鎖を伝って下りますが…
ちょっと急すぎない?
いざ下り終えて見たら、こんな鎖場。慎重に慎重を重ねてなんとか下りることができました。ちなみに今回のこのコース、グローブや軍手が必須です。これはガチです。
鎖場を過ぎるとちょっと標識が不明確な分岐がありました。さらに落ち葉で道の全容が見えない痩せ尾根を通ることに…!ドキドキするなぁ。
ハシゴも頻繁に出てきます。下りた先、両側に落ちたら無事では済むまい。
まるでアドベンチャーのような登山道を進んでいくと、次の目的地の同角ノ頭(どうかくのかしら)の名前が見えました。あと1km! ん…!?
何か書いてありますね。マジックが薄れてハッキリとはわかりませんが、事前調べではこれは「右の尾根を登る」と書いてあるそうです。
なるほど、確かにこの先が二股になっており、標識の向く方向に真っ直ぐだと左側の別ルートになってしまうんだ。右の尾根を登りましょう。
標識通り、右の尾根を進んでいくと、おお…!!
待て。
いつもそう。これは偽りのピークだ。まず最初に「おお…!」って思ったところは大抵山頂じゃないんだ。これもそうなんだぁぁぁぁ!!(でも明らかに空も見えてるし、これは間違いなく山頂だよね!?よっしゃー!!)
違った…(´;ω;`)
しかし、ここも展望はなかなか…山の上に乗る雲が、フワフワのかき氷みたい。
途中ですれ違ったおじいさんに、同角ノ頭について訪ねてみました。「同角はこの先だよ。結構キツいよ(⌒▽⌒)」と笑顔のおじいさん。 ここまでキツかったのになおもキツいと?まさかご冗談を…
嘘だと言ってよバーニィ!?
またハシゴです。しかし慣れてきたからといって、トントンと行けるものではありません。いつだって慎重に。
下りてから見たら、なんと驚きの長さ!このハシゴが本コース最長のものです。
まだまだアドベンチャーは続きます。いよいよ山頂かな?というところで目の前に現れたこの橋は、 ザンザ洞キレットという場所みたいです。周りに木がワシャワシャ生えていてわかりづらいですけど、もちろん下は崖なんですよね。落ちたら死にます。
慎重に渡ろうとすると、なんと中間あたりでボヨ~ン!と橋が跳ねた!?
ワァァァ!!!ワァァ…
思わず間抜けな叫び声がこだましました。本当に。
ここまで来ればあと少し…今度は嘘じゃないっす。山頂からの展望はあまりよくないという情報なので、手前の大展望を堪能して一息。よっしゃいくぞ!
つ、着いたーーーああああ!!
ここまで長かったー!!同角ノ頭の山頂です。
ここまでの達成感と道中のスリルやワクワクのおかげか、疲れていても気分は最高です。ここでしっかり休憩しておかないと下山に響きます。
この日は長丁場だったから食料や水分もいつもより多め。そしてたろうも多め。ぼく、決めていることがあるんです…次の登山では絶対カップヌードルを持っていくって。などと考えながら、菓子パンをもぐもぐ。
登山リュックには、新たなオトモのてる坊も。さっそく力になってくれてます。この調子で次の登山も頼むぞ!
さてと…ここから下山です!道標の檜洞丸(ひのきぼらまる)を目指して進みます。ユーシンまで3.4kmって書いてあるけど、それ以上に感じるなぁ。
そういえば、丹沢といえばのシカが有名のようですが、出会えますかねぇ?いやー…会わないっすねぇ。西丹沢にはいないのかな?
この木板の道は、丹沢の山ではよく見かけるものみたい。落ち葉を踏まなくていいので軽快に進めると思いましたが、微妙に歩幅が合わない丸太の階段や、あらぬ方向に飛び出た釘などもあり、苦戦が続きます。
いい感じに秋めいた広場が出てきましたよ。ここがこれまで通ってきた同角山稜と未踏の石棚山稜との合流地点です。ここでちょっと休憩。今日は休憩が多いなぁ。
この先の看板が分岐路となり、ぼくの目的地は西丹沢自然教室のバス停なので、檜洞丸に向かいます。箒沢方面へ向かえば石棚山稜コースになるそう。
この分岐の途中からの展望は最高でしたね。この日の展望ランキングはなんとも決めがたいです。
もうひと踏ん張りの後、ようやっと檜洞丸への分岐路に到着です。檜洞丸まであとちょっと……なんだけど、うーん、自分の疲労と相談。
よし、また今度にしよう!
ということで、西丹沢自然教室に向かうためのつつじ新道へ。英断でした。
帰りも紅葉を堪能し、締めは湯ったり温泉で
つつじ新道の途中にある展望台からは、ひときわ鮮やかな紅葉が見られました。ここから富士山も望めるとのことですが、雲に遮られてしまいます。
いつからか聞こえてきた沢の音が間近になったら、ゴロゴロとした白い岩が転がる河原が見えてきました。
ここはゴーラ沢出合というところです。ゴーラ沢ってだけで好きな響きだ。
水も間近で感じられるので、疲れた体もリフレッシュできます。アユとかイワナの塩焼きが食べたい。
紅葉を眺めながら、静かな空間にドバドバと水の音が響きます。
ちなみにこの沢、橋などがあるわけではないので、渡渉の必要があります。岩の連なっているところを見つけて、ぴょんぴょんと飛ぶでござる。
ゴーラ沢出合いからは、また自然教室を目指して林道を数十分ほど。静かで気持ちのよい林道でしたが、片側が崖なので最後まで気は抜けません。林道を出ると舗装路に繋がります。
舗装路をしばらく歩いて、西丹沢自然教室に到着しました。ここで15時30分だったので、バスにはドンピシャな時間です。おまけに、この後の温泉をゆっくり入っても次のバスに間に合います。ここが今回の山旅で一番心配だったところでした。
新松田駅行きのバスに乗り込み、しばらく。中川バス停で途中下車し、中川温泉ぶなの湯でこの日の疲れをさっぱりと流します。
ちなみに、新松田駅~西丹沢自然教室までの区間で、このぶなの湯を利用するのであれば、お得なセット券が販売されているようです。実はぼくもそれを利用したかったのですが、間に合うか不安だったため断念。結果、十分間に合ったので、次回以降は迷わずセット券にします。
館内へ入ると何やらざわついており、団体客やらでかなり混雑しているとのこと。えー!?ここで入れないのは嫌だなぁ…混んでてもいいか!ということで突入。と、入れた気合は空回り、浴場は全然混んでませんでした!代わりに脱衣所が混んでいたので、ちょうど入れ替わりになったのかも。何にせよ、ラッキー!紅葉の山を眺めながら湯ったり…至福のひとときです。
温泉を堪能して、再びバスへ。始発ではないので、当然座れないことを覚悟して乗り込みます。ここが一番しんどい。道路混雑もあり、新松田駅に着いた頃にはもう真っ暗でした。
こうして初の西丹沢登山は無事に終わりましたが、まだまだ行きたいところは山のよう!山だけに!たぶん次回の登山で年内最後になるだろうから、行きたいところはもう決まったいます。富士山、見られるといいなぁ。